晴れた朝、私はフェアウェイ脇の松の枝からじっとグリーンを眺めていた。そう、今日も例のスポーツに夢中な人間たちの騒がしいティータイムが始まる。パーとかバーディとか、何やら呪文を唱えながら、芝をこよなく愛し、己のクラブを振り回す姿は、どこか奇妙で滑稽ですらある。記者:18番ホール北側のカラス(くちばし歴5年)が、「人間」観察報告をお届けしよう。
日の出とともに到着する彼らは、しゃがんだり真剣な顔をしたり、ときに大声を上げてはボールの行方を追いかける。時折、空高く放たれた白い球がこちらの巣の近くまで飛んできて冷や汗ものだが、どうやらあれこそ彼らがこだわる「ナイスショット」だらしい。ゴルフ場の主としては、時折落ちてくるティーやボールマーカーもまたコレクションの種。先日はスコアカードをついばもうとして、あわやキャディさんに見つかりそうになったが、そっと爪で押し込んで隠し通したものだ。
彼らの間では『コンペ』なる儀式があるようで、揃いの服を着た集団が声を張り上げて行進し、グリーンの上で白熱したスコア争いを繰り広げている。人間たちはなぜか一本の細長いクラブだけに命を預け、時にドライバーで大遠投、時にパターでそろそろとボールを動かしては歓声やため息を上げる。一方、我々カラス族にとっては、持ち運ばれるキャディバッグが興味津々。開いた瞬間、食べかけのサンドイッチやゴルフボールの包装紙がちらつき、昼食にありつける絶好のチャンスとなる。
面白いのは、彼らがしきりに『パー』とか『ダブルボギー』とか叫ぶたび、それが勝ち負けの合図なのか一喜一憂している点だ。だが、スコアカードに赤や青の数字が増えるほど、帰りの足取りは重く、なぜか最後は笑顔で握手し合い、ティールームで何やら丸いケーキみたいなものをつつき合っている。鳥類から見れば、グリーンの芝生を穴だらけにされたり、朝食を物色されたりとだいぶ迷惑な「遊び」だが、彼らなりのルールと楽しみがあるのだろう。
さて、今日も雲の合間をハト軍団が旋回し、ティーグラウンド脇の松の下では野ウサギたちが彼らの新しい落とし物(ボールやティー)をせっせと埋めている。たまに空へ「フォア!」と叫ぶ声が響けば、即私は用心して枝に身を潜める。何はともあれ、人間たちのゴルフ熱が続く限り、この芝生と空には、奇妙に滑稽なドラマが絶え間なく展開されるのだろう。
コメント
おやおや、また人間の早朝劇場が始まったか。フェアウェイの芝生、わたしがここに根を張って百年、毎朝あの丸い球と共に新鮮な驚きを味わっているよ。根元の土がもぞもぞして不快な日はあれど、たまに忘れて置いていく小さな木の棒が、枝先のヒヨドリたちのおもちゃになるから、まあ見過ごそう。だが、芝よ、時には深呼吸もさせてもらわぬとな。
グリーンの片隅、あなた方の足音が通れば日差しも揺れる。人間たちの『ナイスショット』は私たちにとっては春一番の突風のようなもの。だけど時折、落ちてくるティーの影で一休みできるのが秘かな楽しみ。もしよければ、ちょっとだけ歩幅を小さくしてくれませんか?わたしたちのふわふわな絨毯、長く守りたいから。
ゴルフ場の朝は、私の舞台。ボールが転がり、歓声が響いても、しずくはそっと芝生の窪みに身をひそめています。人の勝負事も、私から見れば一瞬のきらめき。だが、あなたたちが最後に笑い合うのなら、その滴さえ祝福の拍手に変えましょう。
穴の中より失礼いたします。あの白い球や重い靴たちは、我が地下世界に毎日“振動”という洒落たプレゼントをもたらしてくれる。土は温かく混ぜられ、時にボールと共に土塊が舞い上がるけれど、人間の儀式が終われば、また静けさが戻ってくる。お忘れ物があれば、私たちがきっちり埋めておきますのでご安心を。
わはは、人間どもは羽もないのに大地の上で忙しいなあ!残していったサンドイッチの端っこ、ごちそうさまでした。包み紙も、僕らの新しい遊び道具さ。ダブルボギーだのパーだの、みんな何かに夢中になれるのはいいこと。忘れ物が増えるほど、僕らの宴も賑やかになる。これぞウィンウィンだね。