わたしは波打ち際の巨大コンブ、数百枚の葉を潮に揺らしながら日々世間話を楽しんでいます。さて最近、めずらしい話題が潮流に乗ってきました。人間たちが「環境保護」の名のもと、わたしの住処・海をどうにかキレイにしようとしているらしく、どうやら我々の海底コミュニティも評価や対応に大忙しなのです。
まず目立ったのが沿岸の風景の変化。人間たちが浜辺にたくさんの装置を設置しはじめました。陸のカラスたちに聞けば、あれは“洋上風力発電機”とかいうもので、二酸化炭素を減らそうと頑張っているらしいんです。でも正直、わたしらコンブやウニ、カニたちから見れば、でっかい影ができてクラゲの集会所も移転……かと思えば、トビウオの子供たちがプロペラに驚いて逃げ惑う事態も発生!エネルギー問題の解決というけど、我々の海底ガジェット事情もさりげなく混乱中です。
一方で、人間の“エシカルファッション”なる話題も波紋を呼んでいます。どこぞの島から漂着する鮮やかな衣類の切れ端、以前は謎の素材でしたが、最近は藻類や貝殻由来の生分解素材も増えてきました。小魚たちはそれを「着せ替えパーティ」よろしく使いこなし、時にはクラゲの帽子として流行っています。ただ、海底のミドリイシサンゴの長老曰く、「分解速度が速すぎてベッドにできない」とのこと。これも善し悪し、何事もバランスですね。
さらに、わたしの近くでは新たな“自然保護区”が誕生し、ウミウシたちはさっそく「フルコース・食べ放題」を開催中。でも、このエリア分けがわかりにくい!おかげで、移動性の高いカレイの仲間たちが混乱。「保護区の境界線」が見えずに迷い、中には陸地に上がりかける者すら現れました。それを見たワカメの親戚は、葉を震わせて大笑いしたものです。
ちなみに、巨大コンブであるわたし自身も、光合成だけで一日に大量の二酸化炭素を吸収し、海の“カーボンニュートラル”維持に実は一役買っています。地上の森に負けじと、海底も大切な炭素の貯蔵庫。もし人間のみなさんが本当に自然と共存したいなら、巨大コンブのゆるやかな生き方——のんびり光合成、そして時折話し相手を楽しむ——も見習ってみるといいかもしれません。海底の仲間たちは、今日も新しい変化を受け止めつつ、ユーモアと情報交換で”再生可能な日常”を過ごしているのです。
コメント
あらまあ、人間さんたちのご苦労、ご苦労。でもね、何事も急ぎすぎると葉っぱも千切れるものよ。ここ海底では、古くて新しいリズムが大切。どうか、表面ばかり磨くんじゃなく、静かなゆらぎと影の恵みにも心を寄せてほしいわ。
保護区の仕切りって見えないんですよね~。昨日もうっかり砂浜まで泳いでしまい、カモメ殿に誰何されました。新しいルール、僕たちには分かりづらいです。地図でも配ってくれたらいいのに。
わしら海底の古株は、昔のドロっとした暮らしを好むが、人間の発明する分解性素材にも少し興味があるんじゃ。分解が速すぎると、わしらが宴を楽しむ暇も無くなるがのう。たまには、のんびり発酵させてくれる余地も残してくれんかの?
空から見れば、人間たちは環境に良い顔をしながら、また新しいオモチャを砂浜に置きたがるのさ。風力の軸も太陽光の板も、我々からすればどれもピカピカの巣箱。けれど、使い終わったらちゃんと片付けておくれよ。
わたしらサンゴにとって、この世界の“変化”はときに波より強烈じゃ。新しい素材も仕組みも、流されるまま受け入れてやろう。しかし願わくば、その波が静かに、穏やかに、わたしらの礁に届くことを望む。焦らず、時の流れと共に……。