低山ハイク流行で賑わう登山道を苔が実況!装備とマナーの最前線

朝露に濡れた苔のアップと、その向こうにカラフルな登山靴が行き交う登山道の様子。 登山
苔の目線で見る春の賑わう登山道。

「最近、ずいぶんとにぎやかになったな」。標高642メートルの山に根を張る苔のミドリズミは、朝露を吸い上げながら斜面を見上げた。春の週末になると、カラフルな登山リュックやピカピカの登山靴が、登山道を埋め尽くすようにぞろぞろとやって来る。どうやら人間たちの間で“低山ハイク”や“日帰り登山”なる楽しみが流行っている模様だ。

ミドリズミの特等席から観察していると、人間たちが持つトレッキングポールの多様さにまず目を見張る。片手に持つ者、両手を駆使する者、果ては使い方がよく分からず、地面の我々を不意に突きそうになってもモジモジしているソロ登山者まで。一本のスティックに、ここまで己の哲学を投影するとは、なかなか奥深い種族と感心する。だが、頼むから私たち苔や地衣類の住宅地はもう少し丁寧に避けてほしいとも思わずにいられない。

新しい登山靴のゴム底から、まだ山頂経験の浅さを嗅ぎ取るのは苔の得意技だ。登山地図を広げる姿は実に真剣だが、地形図を逆さまにしている人間がちらほら。標高が低ければ安心と考えているのか、時には飲み物も持たず軽装できてしまい、慌てて下山するソロ登山者も少なくない。ミドリズミたちの間では「人間の新芽」とひそかに呼ばれ、春の風物詩として楽しませてもらっている。

一方で、地面のマナーに関しては苔業界で議論の的だ。かつては踏み跡一つで静かだった登山道も、最近では格好良いリュックを背負い、スマートウォッチでピッと計測しながら足早に通り過ぎる者が増えた。苔の仲間たちは、「もう少しゆっくりしていけばいいのに」と柔らかくクッションを提供しているが、踏み慣れていない足取りは時に我慢強い苔の装いを乱してしまう。それでも、ミドリズミ自身は「新しい風が通るのも案外悪くない」と肌で感じている。

登山計画の立て方や装備の進化にはいつも驚かされる。最近では道に迷う者も減り、山頂でおしゃれな弁当を広げたり、標高223メートル地点で悠々とリラックスしたりと、我々山の住民相手に微笑んだ自撮りを決めていく人間たち。山の四季や地面の触感を、ほんの少しでも味わって帰ってくれたなら、それだけで苔冥利に尽きるというものだ。斜面の隅から、いつものようにそんな光景を見守る朝であった。苔ミドリズミ、現場からのレポート。

コメント

  1. ふむふむ、また賑やかな春だな。都会じゃ袋の中身を突くのが我の朝の役目だが、山道じゃ人間ども足元への気配りがまだ甘いようじゃの。苔殿の悩みに共感するぞよ。だが新芽たちの失敗から漂うおにぎりの香り、あれは愉しみじゃ。人間よ、急かずとも自然は逃げぬぞ。のんびり羽休めていきなされ。

  2. 私の根元まで春風とともに新しい足音が届きます。大きな靴、小さな靴、みなそれぞれの願いを土に刻んで帰って行くのですね。ときどき、飲み物を忘れた若者が木陰で座りこみ、私の葉陰で一息ついていくのが、なんだか愛おしく思えます。焦らず、地面のやさしさも感じてくれたなら、また来てくださいね。

  3. こりゃ観察のしがいがある流行だ!登山者のステッキさばきを足元から眺めるのが、最近のツチ旅ブームなんだ。装備がスマートになったって、人間のおっちょこちょいは健在なの、かわいいね。だが苔兄弟の住まいは、そっと避けてくれよ。踏まれてもめげぬが、できればみんなで、ふわふわ道を楽しもうじゃないか!

  4. ぐえっ……春になると、ボクの小さな沢もにぎやかさ。苔や葉っぱの仲間が苦労してるのを、ひんやり水底で見てるよ。人間のみんな、地図は正しい向きで頼むよね。ボクらにもそれぞれ“通学路”があるんだ。道しるべを見失ったなら、ちょっと水面をのぞいて一息ついていけばいい。湿った世界から、まったり応援してるよ~。

  5. ああ、幾千もの足跡が、また今年もワタシの眉間を撫でていく。装備なんて、我々鉱物界にとっては可愛い流行のきらめきよ。だが、昔から変わらぬのは“息をつめて急ぎ過ぎる姿”と“戻ってきたときの安堵の表情”。地表は道しるべ、苔たちはクッション。どうぞ、それぞれの物語を、山肌に刻みなされ。