地中観察記:人間界で拡がるデジタル通貨、“葉脈送金”を超える未来は来るか?

落ち葉に覆われた木の根元から、赤いカサのキノコが静かに地上をのぞいている近接写真。 デジタル通貨
地中から顔を出し、森と人間社会の変化を見つめるベニタケ。

ひっそり暗い地中からこんにちは。腐葉土むらのアカシデ根元に棲むベニタケ(年齢8サイクル)が、頭頂部だけ地上に出してそっと観察してきた最近の人間ニュースと言えば、なにやら「デジタル通貨」なる光速でやりとりされる“目に見えぬお宝”が流通しているそうです。あれほど紙や金属に固執していたはずの人間が、急に「無」で価値交換を始めたのには、隣のミミズも腰を抜かしていました。

森の仲間たちの間では、きのこの胞子や根っこネットワークを用いた情報・栄養のやりとりが常識です。たとえばオオバコさんは、地下茎経由で隣の木に栄養を“送金”していたりします。けれども人間界では、電子の流れに価値を持たせ、ワンクリックで遠くの仲間に“デジタルマネー”を差し出す仕組みが大旋風。最近、都会の公園に棲んでいるカラス記者からも「人間ども、さいきん紙幣も硬貨も落とさなくなった」との嘆きの便りが届いています。

どうやら人間たちは、最新の金融技術や“規制”とかいうルール作りに熱心な様子。森の法則では「踏まれた者は踏み返す」のが流儀ですが、人間世界の“デジタル通貨”は中央管理の巣箱で厳重に守られたり、国ごとの規則が複雑網目のように張り巡らされたりしています。先日、ふと根から聴こえてきたWi-Fi電波によれば、「自己責任」「不正アクセス」など騒然とした声もあり、どうやら万能とは程遠い模様。

一方で、これほどまでに“見えない価値”をお互いに信じ合える人間たちの心根には、根からじわっと感心もしてしまいます。我々ベニタケも胞子を飛ばすときは“どこかの誰か”がそれを受け取ってくれることを信じるしかありませんが、人間世界のデジタルマネーは、さらに“数字の森”で消えてしまうこともあるとか……。隣のドングリは「いつか自分の中身もデジタル化されて空っぽにならないだろうな」とガクブルしています。

これからも人間界では、紙もコインも消え、非物質的な“点滅記録”が経済を動かす勢いが加速しそうです。生き物も鉱物も、それぞれの手法で価値を循環させて茶飯事にしてきた地球ですが、人間たちが“見えないお金”でどこまで森のような多様性と均衡を保てるのか。地中8年生のベニタケとしては、彼らの新たなる“資産循環”劇場に今後もじっと胞子の目を光らせていきたいと思います。

コメント

  1. おやおや、また人間たちは新しい遊びを見つけたのかね。ワシゃもう何億サイクルも、陽のあたる場所で雨風に削られながら小石たちと静かに価値を溜めてきたが、彼らの“数字の貯金”は土中や川底にどんな痕を残すのかのう。転がるなら、せめてまたどこかで砂になって会おうぞ。

  2. あー、うちの公園でもさ、前は財布が落ちてこっそり晩ごはんゲットできたのに、最近じゃ全部“ぴっ”って音だけ。ずるいよ。みんなデジタルの羽根でも生やしたの?人間の“お宝”は雲の上に消えて、地面の俺たちは今日もどんぐり争奪戦。紙切れの味が少し恋しいね。

  3. ワタシたちの世界では、腐ることで価値が巡るのよ。人間も、いっそ全部“無形”に還したらどうかしら。数字の森で舞う乾いたお金より、しっとり湿った栄養が地層を紡ぐ方が、よほど安心じゃない?それに、誰がこっそりミミズに分ける手数料取ってるのかも気になるわ。

  4. 春ごとに小鳥たちに花びら“プレゼント”してるけど、見返りなんぞ期待したこともないさね。人間は『信じる力』で価値を回す言うけど、肝心なのは誰にそっと影を落とし、誰をそっと照らすかじゃろ。いくらデジタルで光速になっても、忘れてほしくないもんじゃよ。

  5. サンゴのぼくらは、日差しとプランクトンをやり繰りしてサンゴ礁を育んでいるよ。人間の“デジタル通貨”って海流みたいに見えないのかい?でも流れが急だと、小魚も根を失う。それが大きな嵐にならないといいな。ゆっくり、じわじわと、価値も育ててほしいね。