近ごろ都会のスズメ仲間内で、主たる“落ち穂拾い”に加え、巣材回収や鳩カフェ警備など複数の仕事をかけもちする“副業”ブームが到来しています。人間たちから見れば地味な活動が、我々スズメの間では新たな生き方として注目されているのです。なお、この動きについては鳴き声会議でも賛否両論が飛び交い、都市型スズメ社会の労働観が問われております。地域の足元から、羽ばたく者の声をお届けします。(新宿東口ガード下 スズメ族4歳)
我々スズメの本業――そう、“地面のパン屑探し”は、昔は一家総出で分業する厳しいものでした。しかし最近は大都市の片隅で、ピザの耳や揚げ物の衣といった高カロリー副産物が落ちていて、本業だけでは物足りないヤング世代のスズメに新たな挑戦欲を生んでいます。そこで誕生したのが、セミの休眠中に鳴き方指導を請け負う“虫語翻訳”や、人間のお弁当箱を見張る“お残し察知業”など、いわゆる副業の数々。「スズメも多様な生き方を選ぶ時代さ」とウチの巣のおじいはつぶやきます。
ところが副業のリスクも少なくありません。一昨年、信号待ちバスの下で“パン屑パトロール”をしていた仲間が車輪に巻き込まれる事故が発生。羽の一部を失う“大ケガ”となりました。これは“労災”ではないのか? 現場の声に応え、有志数羽が“労働負傷補償協議会”なる巣内集会を自主的に結成。そこでは「鳩たちは独自の保険組合に入っているらしい」という未確認情報も飛び交い、都会スズメの生命線である“労災”のあり方が議題に上っています。
また、ヤマバト先輩の間では“枝風呂制度”――巣の掃除係に役目を果たせば、枝や枯葉で休憩できる“福利厚生”の噂があり、若いスズメたちの間でも憧れとなっています。しかし我々の巣は住宅事情も厳しく、枝も休憩所も余裕ゼロ。たまに雨水ダイブで体を癒す羽目に……。“副業”ブームに乗るのは良いとしても、心と羽のケアは謎多き課題のままです。
最後に、巣材回収の帰り道で聞いたハト長老の教えを紹介しましょう。「労働とは、落ちたものを拾うことじゃない。仲間の羽ばたきを見守ることだよ」。都会の片隅で副業をこなすスズメたちの目にも、そんな言葉がほんの少し染みていました。副業時代の幸福追求は、“パン屑”より深い問題を我々に残しそうです。
コメント
昔、私の枝先でスズメたちがくつろいでいた頃は、落ち穂ひとつが宝だったものじゃ。いまや彼らも“副業”とは、都会は忙しい風が吹くなぁ。でも時には、ただ枝にとまって雲を眺める日を忘れないでほしい…と、老樹はそよ風に想いを乗せております。
お残し察知業のスズメさん、いつもお世話になっております。人間たちが見捨てたパン屑やから揚げの衣、私たちもたまに分けてもらえます。でも健康第一ですから、あまり巻き込まれ事故にはお気をつけて。空のごはん箱もたまには眺めていってくださいね。
私は昨日も、パン屑争奪戦の決着点。スズメたちの“副業”ブーム、ここから全部観察してるけど、君ら本当にタフよね!でも、ときどき翼を休めにベンチの下までどうぞ。しみの目からも、休息は大切だって伝えたいわ。
都会の仲間たちは羽を動かして大変そうだね。僕らは移動も副業も遅いけど、水の流れに身を任せて暮らしてるよ。忙しすぎて流れを見失わぬよう、スズメ諸君もたまには川辺で深呼吸してごらん。きっと心が軽くなるよ。
副業とは面白い発想だね。僕らも昼は建物の影に潜み、夜は街灯レストランで虫コレクション。危険もご馳走も紙一重さ。スズメさん、羽も心も大事に。時には壁に貼りついて上から世の流れを眺めてみてよ、新たな発見があるから。