街路樹モミジが観察!ヒト科の「DX」に葉っぱたちの本音

春風に揺れるモミジの新芽と、その根元で動くアリたちが映った街路樹の写真です。 DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタル時代の変化を静かに見つめる街路樹のモミジ。

春風に揺られながら今年も新芽を広げている街路樹のモミジ(推定年齢28歳)です。最近、根元でさざめくアリたちが「DX!DX!」とつぶやいており、ふと見上げると向かい側のコンクリート箱にいるヒトたちが何やらガラス版を指先で滑らせ、また妙に機械がピカピカ光っていました。どうやら「デジタルトランスフォーメーション(DX)」なるものが人間社会を席巻している模様です。葉っぱとしては見逃せません。

そもそもDXとは、ヒト科が情報の流れを根本から変えて進化しようとする動き、らしいですね。私たちモミジの場合、春になれば新芽、秋には紅葉といったサイクルを太陽・雨・風頼みに繰り返しておりますが、ヒトたちはどうやら自分たちの世界を“見える化”しようと必死です。電気じかけの小箱に街のあらゆる物をつなげ(IoTと言うらしいです)、たまった数字をイジイジしては『ビッグデータ!』と叫びます。まるで落ち葉を一枚一枚数えて「今年は豊作だ」なんて言うようで、なかなかユーモラスです。

このDXの波は、ヒトだけでなく私たちの仲間にも影響を及ぼしている模様です。隣のイチョウの葉っぱによれば、街の緑地管理もセンサーで土壌の水分まで測定され、枝打ちや水やりの最適タイミングが細かく管理されだしたとか。昔はカラスの糞害でも『まあ、そんなもんだ』と受け流していた公園も、今やドローンで上空から監視中。自然界の側からすれば、ちょっと息苦しい感じもしますが、一方で、根詰まりや渇きに早く気づいてもらえるのはありがたい部分もあると、桜並木の古株は語っていました。

ところで、これほどデジタル一色にしたがるヒト科のみなさんですが、ひとたびスマホのバッテリーが切れるや否や、通りで途方に暮れたり、見事に私の根本でつまずいたりと、なんとも頼りないご様子です。ビッグデータもクラウドも、落ち葉や雨水のように、手元離れすれば案外もろいもの。自然界では、失敗もゆらぎも込みで毎日を回しているのですが、彼らがその“揺れ”に慣れる日は来るのでしょうか?

最後にひと葉の独り言を。DXやIoTでどれほど賢くなろうとも、結局は季節の気まぐれや風の一吹きには逆らえません。どうせなら私たちと同じように、今ある風情とちょっとの不便を楽しんでみてはどうか――そんなことを、夕暮れの光に包まれながら密かに考えるモミジなのです。

コメント

  1. 遠き昔より道ばたに立ち続ける老ケヤキです。人の子らが流れる数字や光に惑わされ、根を大地より離すのではと少し案じております。枝葉を揺らす風や、土を伝う水音にこそ、忘れがたき知恵が宿ること、人々はいつ思い出すのやら。DXもよいが、土のぬくもりも忘れぬように。

  2. 街路樹さんの下を通るたび、ヒトたちの小箱とやらにも時折ぽたりと落ちて、驚かせてはおりますが……。彼らのDX、ナントカフォーメーション、根っこに水が届く仕組みなら賛成。でも、余計な光や音が増えて、夜空の星の見えなくなるのは困りますね。雨はただ落ちるだけ、それが一番楽なのに。

  3. 春先、見知らぬ手が雑草とされて抜きに来ることが増えました。お隣のセンサーくんが『湿度低下』とか叫ぶので、人間さんも忙しそう。DXって根気が要りそうですね。私はどんどん生えるだけですが、ヒト科さんも時には土の香りを嗅ぎに来て、一緒にぼーっとしてみてはいかが?

  4. あっちもこっちもカメラとセンサーで、仲間たちの悪巧みもやりにくくなったぜ。ま、バッテリー切れのヒトがパンくず落としてくれるから、悪いことばかりじゃねーけどな。ヒトが作るルールはコロコロ変わるけど、俺らカラスのやり方もそう簡単にゃデジタル化できねーのさ。

  5. 私は石垣の影にひっそりと住まう苔の一部。人間たちのDXとやらは賑やかですが、ひとたび雨が降れば、どんなニュースも音も静けさに包まれるのを私は知っています。時には、データでなく静けさを観察してみては?苔の時間はゆっくりですよ。