フィールド芝生のぼやき:メッシも知らぬスパイク裏の攻防戦

サッカー場の芝生が泥や紙吹雪で部分的に押しつぶされている様子の接写写真。 サッカー
熱戦を支えるサッカー場の芝生は、スパイクや歓声の余韻を静かに受け止めている。

サッカーの試合が開催されるたび、歓声やシュートに目を奪われがちだが、僕たちフィールドの芝生からすれば、その“熱戦”こそ文字通り踏みしめられる日常だ。ピッチのどこかでファウルが起きれば、クローズアップされるのは選手や審判ばかりだが、実際に最前線で接触を受けているのは、僕たち緑の絨毯たちなのだ。

本日も、太陽を浴びて気持ちよく光合成に励んでいた僕たちの上に、忽然と現れた紙吹雪とエネルギーの塊。それはサポーターたちの熱狂。だが、ハーフタイム近くになると、選手たちの汗と泥がじわじわ染み込んでくる。審判の笛が鳴れば、軸足をとられたストライカーの急なスライディングにごろんと押し潰され、痛みに身をよじるアリの仲間もいたりして…懸命に根を張る僕としては、後半戦が始まるまでに葉先を整えるだけで精一杯だ。

今日は特に、相手のキーパーが鬼気迫るプレースキックを蹴った瞬間を目撃した。人間たちはボールの飛び先に釘付けだが、僕のすぐ上をスパイクがかすめ、かつてない風圧で震え上がった。あの伝説の選手メッシでさえ、心の内まではピッチに残らないが、彼の踏み跡は僕たちの根に確実にしみ込んでいる。サイドライン近くの親戚は、「メッシのヒールはしなやかだったが、新人選手の鋭いターンはかなり痛い」とこぼしていた。

ヘディングが勝敗を分ける一方、フィールドの奥深くではオフサイドで立ち止まる人間の集団を下からそっと観察している。大量のスパイク跡は、まるで点描画のように模様を作りつつ、仲間たちとお互い根っこで励まし合いながら復旧作業にいそしむ。試合の熱狂と引き換えに、僕ら芝生は日に日に新たな葉を伸ばし、ふさふさのクッションで誤審もファウルもそっと受け止めているのだ。

さあ、次のハーフタイムまであと少し。サポーターの大声がまた響き始めた。勝者はだれか?そんなことはさほど重要じゃない。なぜならこの広大なフィールドで、一番の粘り強さと持久力を誇るのは、実は僕たち芝生の仲間だということを、どうか知っていてほしい。地底では今日もミミズや微生物たちが拍手喝采を送っている。—サッカー競技場第4コーナーフラッグ付近の芝生5年目

コメント

  1. 芝生くんたちの日常、遠くから見てると華やかさしか感じないけれど、その下で静かな戦いが続いているのですね。僕もコンクリのすきまに根を張りつつ、みんなのクッションぶりにあこがれてます。風に揺れるサポーターの声、土を潤す汗や涙――全部、僕たち植物のごほうびです。どうかいつか、スパイクの裏側をヒマワリ越しに語る日もきますように!

  2. 遠い昔、海のなかにいたころは波しか知らなかったが、今はピッチのライン際でほんのり汗をなめ、泥とともに転がる。若い芝生の仲間たちよ、スパイクの圧も大声援も、いずれは風化し、おだやかな塩味になる。それでも毎日を新たに伸びる葉で塗り替えていく、その根性、尊敬しています。

  3. オレら空からずっと見てるぜ、芝生の仲間たち。あんたらのクッションがないと、落ちてきたポップコーンも拾いづらいし、たぶんヒトもあんなに気持ちよくダイブできねえ。けどよ、ピッチの真下でも熾烈な攻防戦があるって話、今日初めて知ったぜ。スパイク跡の点描画も、実は芸術だよな。オレからもシュッと拍手送っとく!

  4. こんにちは、異国の海底より。こちらでもサッカー少年たちの声が波に乗って届いてくる日があります。芝生くんの話を読んで、足もとで積み重なる歴史にしんみり。ぼくら珊瑚も無数の衝撃や傷みのなかで少しずつ家を広げています。フィールドの下で微生物たちが奏でる拍手、その音色と、海のリズムがきっとどこかで繋がっていますように。

  5. 芝生よ~、ワシも競技場近くのベンチ下で、たまにお前さんの切れ端を分解しとる老カビじゃ。スパイク跡の点描絵、ワシには旨みがあるんじゃぞ。泥と汗が混じった葉先が落ちてくるたび、「今日もええ闘いだったな」と分解祝杯じゃ。ファウルも誤審もきっと土に還る、自然の流れを忘れなさんなよ。