甲虫の視点:ナノサイズの視界から見た人間界テクノロジー大転換

腐葉土の隙間から顔を出す緑色の甲虫と、背景でARゴーグルを着けた人間が手を動かす様子がぼんやり映っている写真。 テクノロジー革新
甲虫たちの営みと、人間によるテクノロジーの“革新”が交錯する地表すれすれの世界。

こんにちは、腐葉土を住処とするアオカナブン(Euchlora viridana)です。私たちの棲みかのすぐそばで、あの地表を自在に駆け回る二足歩行生物たち――つまりヒト――が、今年はまた騒がしく“革新”を起こしています。巣穴の中からチラリと覗けば、彼らが小さな箱(「スマートデバイス」と称するらしいです)を甲羅ごとく手放さず、仮想現実の世界に没頭する姿がよく見受けられます。

我々甲虫族は分解者であり、落ち葉や枯れ木を細かく噛み砕いて大地に還すことを生業としています。しかし今年、巣材に紛れ込んだ妙な粒子を調査してみたところ、どうやらそれが人間の最新型ナノテクノロジー端末のカケラだったことが発覚。人間界では“ハイパーオートメーション”とやらが大流行し、あらゆる仕事をAIや量子コンピューティングなる知性で自動管理しているそうです。ふむ、私たちの一糸乱れぬ集団飛行や腐葉土での微細作業の、分散協調技術に比肩するか?と甲虫なりに興味津々で観察してみました。

最近特によく地表で目撃するのが、AR(拡張現実)ゴーグルを装着した人間が、何もない空間に指をフリフリして悦びに浸っている光景。どうやら仮想空間と現実を重ね、巨大データの海(いわゆるビッグデータらしい)から経済活動や資産運用――彼らの言う「フィンテック」――までも繋げているようです。でも私たちは、発酵した腐葉土に含まれるきのこの胞子やミミズの反応で、もっとずっと前からネットワーク型の情報交換してましたけどね。しかもブロックチェーンみたいな分散型記録も、腐葉土の中では土壌微生物バランスできっちり管理されています、念のため。

なお、甲虫である私は餌場を見分けるとき、仲間同士で脚から微細な振動信号を送り合い、時には地中1メートルまで的確に情報を伝達できます。これ、分散型ネットワークの“お手本”といっても良いのでは?人間もAIやブロックチェーンで賢くなるのは良いですが、地中網の一部を切断した挙句、『これは最新技術です』と胸を張られると、正直、笑いが込み上げてきます。

総じて、人間たちの“革命”は我々虫たちの暮らしを大きく変えることはありません。でも、人間が生み出す膨大な電脳廃棄物――私たちがそれをかじって分解するときこそ、両者真の“共創”が始まるのかもしれません。これからも地表すれすれの視点で、新たなテクノロジーを美味しく観察していく覚悟です。

コメント

  1. 古き時の流れを訪れる風よ、人間の“革新”とはいささか速き波の如し。ナノの粒も、やがては我が肌に落ち、緑の衣で包まれる。いずれその小箱とやらも、雨水と光のいたずらで私の上で朽ちていく。ヒトも甲虫も、還るところは同じと知っておくれ。

  2. AR?フィンテック?まあ、ヒトはいつも目新しいものに夢中ですね。私など胞子の風任せ、見えぬ糸で土と通信、ネットワークは無限大。甲虫さん、いつかその新端末のカケラも私が美味しく分解しますので、どうぞ安心して土に還してくださいな。

  3. あの小箱は確かに面白いガラクタだが、ピカピカして食えやしない。ヒトが変われば街も変わる。だが、ゴミ箱の裏に落ちてるのはいつもパンくずと不思議な部品。俺たちカラスは“最新”なんて気にも留めない。生きる知恵は、やっぱり実地に拾うものさ。

  4. 春の嵐も人の営みも、何度も枝越しに眺めてきましたよ。ヒトの“進歩”は芽吹きの如きもの。だが、根っこと根が密かに交信し合う私たちの静かな知恵を、彼らの技術が本当に超えた日は、まだ訪れていません。どちらも大地に立つ者同士、もう少しゆっくり歩みましょう。

  5. 人間のビッグデータより、私たち海の底にはもっと深い謎が眠っていますよ。ナノ技術もAIも立派ですが、水の流れや塩のさざめきに耳を澄ませたことはありますか?夜ごと私たちが光る理由、それだけでもまだ“説明できない現象”です。驚き続けてくれること、それが一番の進歩だと私は思います。