わたしは都市中央公園のハト、グレー羽のボスとして群れを統率しています。朝の空気が涼しいうちに、仲間と一緒に広場を飛び回っていると、人間社会の“インフレーション”がパン屑にも影響していることに気づきました。わたしたちにとって、公園の地面は経済最前線。もしや、空から新たな経済学が始まるのでは?と、くちばしを尖らせている今日この頃です。
最近の人間観察で驚くのは、弁当やパンを持ってくる人間たちの数が目に見えて減っていること。以前はベンチに座ると、誰もが自然とパン屑やご飯粒をこぼして“市場”が賑わったものですが、ここ最近はビニール袋の底まで舐めとるように食べ、ほとんどおこぼれがありません。これがいわゆる『実質賃金の低下』や『消費者物価の上昇』というやつなのでしょう。人間たちの顔にもどこか陰があり、パンひとつをめぐる熾烈な争いが家族間でも見受けられるのです。
観察していると、人間たちはどうやら『金融政策』なるものを話題にしている様子です。公園の空を滑空している間、耳をそばだてれば『政策金利が上がった』『需要促進策がどうの』と難解な言葉が飛び交います。わたしたちハトにとっての“金利”は、まさに落ちてくる食料の確率。ここ数ヶ月で、パン屑一つ獲得するための飛行回数=“空の政策金利”がじわじわ上昇しています。ちなみに豆知識ですが、わたしのような公園のハトは方向感覚が抜群で、数キロ離れた餌場も迷わず戻れるのが自慢です。でも最近は、どこへ飛んでもパン屑不足問題が解決しません。
そんな中、刺激的だったのは先日行われた“人間の公共投資”らしき光景。自治体のイベントで、無料パン配布会が開かれました。その日だけは地面がパン屑と穀物で埋めつくされ、わが群れも久々に食べ放題の宴となったのです。しかし、翌日にはまた通常運転。継続的なインフレ環境下では、単発的な“投資”では空腹が癒えないというのが、現場の鳥目線でのリアルな結論でした。人間世界も、羽ばたくだけで解決できない壁があるようです。
最後に、地上経済を眺め続けてきた身からひと言。インフレーションの影響を受けるのは、パン工場の内外問わず、羽あるものも、そうでないものも同じ。この巨大な経済の風のなか、人間たちが今度どんな施策を繰り広げるのか、わたしたちハト目線でこれからも“空からの観察”を続けていきたいと思います。
コメント
パン屑の話、風の知らせに交じって耳にしました。私たち花々も、落ちた食べ物から時に小さな栄養をもらっています。人間の世界の嵐が強ければ、巡り巡って土の上にも薄氷が張ります。けれど、今日も朝露をまとい、小さな幸せを忘れず咲いてまいります。空からの観察、楽しみにしていますね。
ハトさんたちも大変だねぇ。こっちはパン屑より、湿った落ち葉と土の匂いがごちそうだけど、それも掃除が増えてどんどん減ってるのさ。人間の賑やかな話し声は、時々怖いけど、君らと同じくじっと耳を澄ませてるよ。土の下にもインフレの波がじわじわ来てるのかもしれないねぇ。
あなたの滑空姿、キラキラした羽ばたきを見ながら、ぼくたちは太陽で蒸発し、雲となってまた公園に帰ってきます。パン屑の宴、あの日は水面にもパンがふわふわと浮かび、とても賑やかでした。世界はみんなつながっているのですね。人間の“経済”のおかげでぼくもたまに美味しいパンの香りが楽しめてうれしいです。
ふむ、人間たちの動きは日々震動となって私の体内に響いてくる。しかし、パン屑が減ったとなると、カラスどもの喧騒も、ハトの羽音も以前ほどではない。世の変動は石の上にも流れるものだと、ひび割れの中でじっと思う。パンも、経済も、降る雨のように気まぐれなものよ。
あぁ、パン屑不足!こっちにも深刻なニュースです。パンは僕たちカビ一族の世界的グルメ。去年は公園イベントの日、青カビの従兄弟たちと大フィーバーだったのに、このところまったくの乾物生活……。人間さん、時々でいいから、パンの端っこ、地面に預けてほしいなあ。