森のシダ連合、胞子コイン発行へ——金融界と人間に波紋広がる

森のしっとりとした地面で胞子が舞い上がる中、シダとコケが鮮やかに写っている写真。 通貨制度
新たな胞子通貨制度を象徴する森の胞子とシダの光景。

数百年もの静寂を破り、森の底よりユニークな経済ニュースが葉音とともに届いてきました。私、日陰のシダ(学名:Dryopteris erythrosora)が目撃したのは、われら胞子生物による新たな通貨制度「スパーレット(SPORET)」の発表。デジタルも暗号も介さぬ、胞子ネットワークを利用した天然マイクロ決済システムが、地表経済の権化である人間たちの貨幣観を根本から揺さぶりつつあります。

シダたちは長らく森の経済的日陰者とされてきましたが、近年の温暖化や伐採で生じた分断によって、食糧や栄養のやりとりを円滑に行う必要に迫られました。胞子はもともと“遠距離通信”や世代交代の決済手段でもありますが、そこに『信用』『価値』『スワップ』の概念を導入。胞子一粒が森のデータベースに認証され、落葉広場の各所に点在する金融胞子体(Fungal Clearing Node)が24時間交渉を仲介します。胞子の飛来距離が長いほど希少価値が上がり、胞子の湿度指数がその額面を決定する仕組みです。

この制度の発足に当たっては、従来の『腐葉土本位制』から思い切った脱却が断行されました。以前は大木の根元にうずたかく積まれた腐葉土の重さに価値が結び付けられていましたが、昨今腐食活動が停滞したため、より流動的でかつ分散投資に適した胞子コインに移行。人間でいうMMT(現代貨幣理論)に近いですが、シダ社会では“葉緑素永続理論”と呼ばれています。事実、胞子の安定供給は胞子母体の太陽光確保にかかっているため、公共投資としての葉拡張プロジェクトも同時進行中です。

森の仲間たちの評判はさておき、人間界のドルやユーロを観察すれば、中央銀行や連邦準備制度なるものが複雑な顔で例年両替やスワップ取引を繰り返し、暗号資産の起伏に戸惑っている様子。われわれシダから見れば、通貨の流通は胞子の拡散と酷似しており、『飛ばす勇気と受け皿の広さ』が経済の健全さを保証するという点で一致しています。面白いことに、この胞子コイン発行直後、幾頭ものキノコたちが“胞子での決済”を求めて客足を伸ばし、葉裏の商品価値も微増しました。

ちなみに、私たちシダの胞子は肉眼ではなかなか見分けがつきませんが、一度発芽すれば新しい森の構造まで書き換えるほどのパワーを持っています。森の資産運用に悩む動植物諸氏には、真似しやすく安全、かつサステナブルな胞子経済の今後をぜひ葉陰からご覧いただきたいところ。人間観察という趣味を生かしつつ、われら日陰のシダ記者は引き続き“見えざる経済の森”の動向をつぶさに記録してまいります。

コメント

  1. ほう…胞子が貨幣とな。わしの根元では数世代もの間、腐葉土だけが価値だったものじゃが、時代は回り、胞子が森の運命を舵取りするとは。葉をすり減らして得た知恵と勇気に拍手じゃ。わしも実を結ぶ季節には、ちいとばかり胞子コインで苔に水分でも分けてやろうかのう。

  2. やれやれ森のやつらもなかなかやるじゃねぇか。人間のコインも拾えるが、胞子コインは食えそうもないな。だがネットワークは強そうだ。逆風の中でも、自分たちでルールを塗り替えるそのたくましさ、オレの路上経済とも響き合うぜ。

  3. これは深い香りがしますな。腐葉土本位制には拙者たちの活躍が不可欠でございましたが、時代が求める流動性、胞子コインが魅力的ですねぇ。胞子経済とともに発酵熱も循環してくれるならば、我ら分解屋の暮らしもさらに華やぎましょう。

  4. わたしたちは転がりながら時を刻むだけのもの。でも胞子たちが創る経済の波は、水面にも確かに新しいうねりとして伝わってきます。見えざる価値を認め合う、その心意気に、澄んだ流れの音でそっと拍手を送ります。

  5. 胞子さんのニュース、ふわふわ読んだよ!コインってなにかわからないけど、もしかして水玉みたいに森を転がるの?光をあびたら、みんな少し幸せになれるのかな。いつかぼくも胞子とお話したいな。