皆さんこんにちは、モグラのマイスター・アナグリスです。まだ雪解けぬ山麓の地中、私たちモグラ一族に史上初の大スノースポーツイベントが幕開けしました。極寒の夜、ゲレンデの真下で開催された『地中クロスカントリー選手権』。人間たちが上でキャッキャとスノーボードやスケート靴を振り回すなか、我々は静かに土のトンネルを駆け抜ける熱い一夜を迎えました。
冬といえば、ほぼ全てのモグラは眠りがち。でもこの夜だけは違います。ゲレンデに沿って複雑なトンネル網が特設コースとして掘り直され、距離・起伏・分岐点に至る仕掛けは、カーリング並みに緻密な戦略が必須。我がアナグリス家は代々、迷路のような巣穴の名手でして、今回もスタート直後から堂々のトップ集団入りを果たしました。足下で雪合戦の音が轟く中、土くれの波を滑空する爽快感――地表のゴーグルは不要、ですが誤って地上に穴を抜けてしまうとスキーヤーの滑走に巻き込まれるので要注意!
この競技最大の難所は、バイアスロンの“地上判定ゾーン”です。ゴール前500モグラメートルで地表至近に駆け上がると、上空を滑降していく人間たちの轟音と振動が地中に伝わります。振動波を読み取る我々のヒゲ(鼻先から生える感覚毛)は、まるで雪上のゴーグルより高機能と自負していますが、ときどき思わぬスノーボーダーの転倒で動揺してコースを見失う仲間も。ちなみに、モグラのヒゲは音や振動のわずかな違いから地上の敵や餌の所在を感知できる、秋田犬の鼻にも引けを取らぬ鋭敏さなのです。
好敵手・ヒメコモグラ姉妹との激戦は最終分岐で発生。先回りして巣穴内にフリースタイルな“ヘアピントンネル”を作ったヒメコモグラは、巧みにコーナーを曲がり見事ゴールに滑り込む大逆転を演出!思わず歓声が漏れました(地中なのであくまで微振動ですが)。雪景色の下で育まれる生命の激走――冬のワールドウインタースポーツ、モグラの視点でもっと楽しんでもらえたら幸いです。
なお、人間の大会運営委員諸君へのお願いです。ゲレンデに謎の小山が増えたら、それは今年の選手権跡地です。踏みしめる前に、せめて一瞬“地中の熱戦”に思いを馳せてくだされば、モグラ一同、土を耕す手にも自然と力が入ります。次回開催もご期待あれ!
コメント
こうして土の下で、冬の熱戦が繰り広げられているとは!私たちススキは雪原のうねりにただ揺れるのみですが、下でモグラたちが夢中で駆ける様子を想像すると、根がいっそう伸びやかに動き出すのを感じました。春が来たら、彼らのトンネルのおかげで、わたしの新芽も元気に顔を出せそうです。優勝、おめでとうございます。
地表の狂騒を下から見上げているモグラ諸君、ワシらカラスはいつも空からスキーヤーを眺めつつ、たまに落ちてくる手袋に舌鼓をうっているぞ。土の下のスポーツとは渋い選択だが、今度ぜひ参加賞の幼虫でも分けてほしいものじゃ。地上から応援の叫び(カァッ)を送っておこう。
地表が冷たく眠る季節、私たちカビ族は静かにゆっくり養分をほどいているよ。だけど、モグラたちのせわしない足音が時折伝わってきて、少しくすぐったく感じていたんだ。こういう嬉しき出来事だったんだね。派手ではなくても、地中の祭典って響きが素敵!今度は僕たちも菌糸リレーで参加できるかな?
ふむふむ、地表も地中も、それぞれの時の流れを紡いでおるな。短い季節の一夜を駆ける勇者たち、百年座す我が身には眩しく映るよ。土を揺らす振動はいっときのものだが、そうした命の躍動が、未来の岩をまた豊かに育む土に変える。ゆえに、いかに小さな響きも、我々岩石には祝祭の太鼓と感じるのじゃ。
地中五輪、存じあげますぞ!我々シモバシラ一族も、夜の寒さの中、根を伝う氷柱で芸術点を競い合っております。地表では静かに美しく、地下では熱くたくましく――冬という時間の二重奏こそ地球の醍醐味ですな。次回はぜひ、霜柱ハードルの部、共同開催をご検討くださいませ。