紅葉の木が語る:葉っぱ越しに見たインバウンド観光“体験”革命

日本庭園の一角で緑豊かなイロハモミジの木の下、さまざまな国の観光客が多様な服装で葉を見上げ、写真を撮る様子。 インバウンド観光
イロハモミジの木陰に集う多国籍の観光客が、体験型文化を楽しんでいます。

今年の初夏も私、イロハモミジは古い御庭の隅で、ごそごそ揺れながら世界中の観光客を眺めている。静かな日々に突如現れる多彩な人間たち──彼らが、広がる枝先を見上げ、携帯端末を片手に賑やかに集う姿は、実は数年前には考えられなかった光景だ。ここ日本の文化と自然、そして“体験型”という名の新しい風が、全身の隅々まで伝わってくるのだ。

まず目を引くのが、葉の間から覗く異国の服装。中でも、頭巾の色や裾の長さひとつで、彼らの習慣や宗教の違いが読み取れるのは興味深いものだ。私たち木々は、年ごとに厚着になったり薄着になったりする人間たちをただ眺めるだけが仕事。しかし、最近では仲間のサクラやウメが「ムスリムフレンドリー」の看板を写真に収めている観光客を羨ましそうに見ている。どうやら食や礼拝が配慮される体験が増えているらしく、枝の上からちらりと“ハラール対応抹茶アイス”とやらを無事完食する姿を何度も目撃した。

異文化体験といえば、紅葉の時期になると“葉っぱ狩り”という奇妙なイベントが大流行。思わず緊張で葉脈がざわめくが、近年は“ただ撮る”から“感じる”“学ぶ”へと観光スタイルが変わってきている。現に葉の陰から人間が“日本らしい旅”として和傘づくりや庭掃除に励んでいる姿を見ると、一枚一枚の葉が役立っているようで誇らしい気分になるものだ。ちなみに私たちモミジは、春に新芽、秋には紅葉と、年中景観を“着せ替え”しており、これが新旧ツーリストから人気を集める秘訣でもある。

さらに最近は、枝間で聞こえる会話に“LGBTQ+に優しい案内所”の話題も増えてきた。虹色のフラッグが背の高い仲間であるイチョウの幹に結ばれると、重厚な林もほんのり明るい雰囲気に。Wi-Fi完備のベンチで多国籍の若者グループが庭やカフェのレビューを書き合う光景も珍しくない。木々の上からすると、この“誰もが安心して来られる旅”こそが、文化の根を広げる力なのだとしみじみ感じる。

さて、人間たちの旺盛な買い物熱も相まって、落ち葉の掃除ひとつとっても体験型のプランに発展。自分で竹ぼうきを手に汗をかく人間たちを見て、かつては“苦行”と思っていた落葉も、今や“おもてなし財”として経済に貢献しているらしい。老木の知恵を拝借するツアーや新商品の開発イベントも続々。こうして、葉の下でくつろぐ小鳥や虫たちも、静かなブームにささやかな期待を膨らませている。長い樹齢を生かし、これからも私は静かに枝葉を広げながら、来訪者たちの微笑みや、世界のニュースを聞いていくつもりだ。

コメント

  1. おや、またにぎやかに光が踊っていると思ったら、観光客さんたちなのね。日陰の石垣にひっそり生えてる私には、人間みたいに旅する勇気はないけれど、みんなが葉陰でやさしく笑い合う景色に、苔もほのかに緑が深まります。ワイワイの後は、どうぞ足元も気にしていってね。うっすら輝く私たちも、ちいさな舞台裏の主役ですから。

  2. イロハモミジさんの葉っぱ体験ツアー、ぼくたちも下から静かに応援してるよ。人間たちが庭掃除してる間、土がふっかふかになって最高!おみやげは地面の呼吸、足あと優しめでお願いします。今年は落ち葉の数が増えるといいな。

  3. 何百年もここで寝そべってきたが、枝の向こうに虹色の旗が見えたのは初めてじゃ。わしのひび割れにも光が宿る気分じゃよ。昔は人間が一列になって石段を急いでおったが、今じゃあゆっくり腰を下ろして景色を褒めてくれる。時代は流れても、この庭と心の重さだけは変わらんように思えるのう。

  4. いよいよ私たちフワッと族にもハイシーズンが来ましたね。落ち葉が集められて、みんなが歓声上げながら掃除してくれる風景は、まるで一大イベント。ひそかに香ばしい香りを広げてるの、気づいてくれてるかな?モミジさんたちのおかげで、私も世界の端っこで踊ってます。

  5. 世界の空を渡ってきたけれど、この日本の庭には不思議な静けさがあるね。人間たちがそれぞれの言語で笑っていても、枝でうたた寝していると、ぜんぶが風の音になる。体験という名の風に乗って、またこの紅葉の下へ帰ってきたいものだよ。