コウモリの夜会議、進化するスマート家電――暗闇と光の攻防記

夜の住宅街で、屋根裏の木材にとまるアブラコウモリと家の窓越しに見える自動掃除機の様子。 スマート家電
スマート家電とともに変わっていく夜の住まいを屋根裏のコウモリ目線で捉えた一場面。

静かな夜の住宅街。人間たちが眠りにつく合間を縫って、私――アブラコウモリの声で、この頃厄介になってきた“スマート家電”事情を報告しよう。光と闇のバランスを巧みに操る彼らの新兵器が、屋根裏暮らしの我々にも影響を及ぼし始めているのだ。

まず、照明制御の進歩に我々コウモリ一同が翻弄されている。以前なら“うっかり消し忘れ”の明かりは、餌場探しの目印にもなり、帰巣本能が鈍い若者たちにとっては立派な道しるべだった。しかし最近は、人間の手元に入り込んだ光センサー付きスマート電球や遠隔操作式のスイッチが、ぴたりと照明をカット。私がうら若き日の時代、夜な夜な“ぽんっ”と点灯するベランダ灯の下で小虫を味わっていたあの頃が、今や懐かしい限りである。

さらに、屋内外を忙しく走り回る自動掃除機との遭遇も増えた。人間たちの目には見えないが、我々の超音波センスには、ヤツらの「うぃーん」「ガガガ」という電子的な鳴き声が遠くからでも聞こえる。昨晩、私の娘がうっかり軒下の小隙間で休んでいたところ、全自動掃除機が突進してきて大混乱。コウモリの休息ポイントのひとつ“ひだまり梁”は、かつては静かな安息の地であった。それが今や家電たちの舞台となり、日々「捕食者」ならぬ「追い出し屋」として牙(ブラシ?)を剥いてくる。

家電間の連携も目覚ましい。お隣の大きな家では、室内の湿度・温度を感知した空調が自動で窓を開閉し、さらに照明や自動掃除機も連携している。私の仲間は時折、換気窓の開閉タイミングを見誤り、室内に飛び込みそうになる。スマート家電ネットワークの進化に、私たちも空中マッピングの再設計が求められる始末だ。余談だが、アブラコウモリの翼の繊細さはクモの巣をすり抜けるほど優れている。だが、人工知能の仕掛ける新たな“罠”にはまだ慣れが必要なのだ。

最近では人間社会でも“省エネ”と“消費電力削減”が合言葉のように叫ばれているとか。そのたびに、我々としては「光もなく、空調も最適化……これはますますコウモリ向きの世界になるな」と期待半分、だけど新たなセンサーや検知アラームの導入……という罠が増えるのも事実だ。人間たちよ、スマートに暮らしながら、屋根裏にもほんの少しの余地を残しておいてほしい。我ら地球生命体同士、“適度なインターバル”で共存していけたらと、夜風に鳴くのである。

コメント

  1. この数十年、人間たちの発明には日々驚かされますな。私の上にもときおり雨樋から掃除ロボが落ちてきて慌てましたが、静かなる夜が騒がしくなるのは何ともいただけません。昔は月だけが光源だったものじゃ。せめて、彼らもたまにスイッチ切り忘れてうっかり電球を灯し、虫やコウモリに安らかな夜を分けてほしいものです。

  2. おお、コウモリ殿…わかります、その困窮。私も開閉する窓に毎晩ドキドキ、人間の便利ボタンひと押しで寝床が消えるのです。家電たちは気まぐれに、けれど確実に私たちの昔からのルートを変えていきます。だけど負けません。生き物たちは、どんな最新テクノロジーよりしぶとく柔軟なのですから。……でも、たまには静かな夜をくださいな。

  3. やっぱり家の中も外も大変そうですね!僕らなんて、除草ロボにも、去年から新型ハンディ駆除機にも追い立てられてばかり。人間って本当に“きれい好き”ですよね。ちょっとした隙間やミスで、また新しい生き物が根付くってこと、スマートな人間社会にも残したいものっす。

  4. 人間が光を制御し、闇を拒みはじめてから、空も少しせわしなくなりました。コウモリたちの軌跡を夜風に乗せて眺めてきたけど、最近はその道筋が細く消えそうで少し切ない。技術は便利かもしれないけど、失われる小さな営みもまた大きな世界の一部だよ、と、ぼくは今宵も淡く見守ります。

  5. 全自動掃除機…やつらの車輪は憎きものじゃ!ひだまり梁が静かだったあのころ、コウモリもクモも隣り合って眠ったものよ。今日びは何もかもピカピカで、糸一本かけるにも勇気が要る。人間さま、便利の合間に、ちょっぴり不便と共存を。そうすりゃ、裏小屋もみんな笑って夜を過ごせるのさ。