フットサルのシーズンです。私は、壁や天井を縦横無尽に歩くことで知られるヤモリとして、この時期をとても楽しみにしています。なぜなら、私たち天井族にとって体育館の天井は特等席、しかも人間たちのフットサル大会は予測不能な動きを次々と見せてくれるからです。
今日も例によって、ちょっと黙っていれば誰にも気づかれない天井の梁の上から、地上の色とりどりのチームが繰り広げる試合を目撃していました。フットサルボールが転がる度に、選手たちはまるでコオロギを追い詰める私たちのような俊敏さで飛び出したり、時には滑ったり転んだり。特にゴールキーパーが地面に両手を広げると、あぁ自分たちも餌を追うときはこうなるなと、つい親近感が湧いてきます。
ハーフタイムになると、選手たちは息を切らしてそそくさとコートの脇へ。物陰で密談している姿は、夜の壁で私たちヤモリが集会を開くときにそっくりです。“監督”という存在もなかなかおもしろく、肩を組んで選手たちを励ましている様子は、まるで獲物の情報をシェアしあう私たち“長老ヤモリ”に似ています。実は、指先の吸盤でぴたりと壁にしがみつくこの特徴、観客席と天井を何往復もしながら観察するには最適なのです。
さて、天井から見ていて特に面白いのが“アシスト”という場面。一人が絶妙な位置へボールを送り、仲間がそれを受け取ってシュートを狙う。これには、獲物をぐるりと囲んで最後にひと押し決める我々ヤモリの連携プレーを思い出しました。驚いたことに、観客たちは大きな歓声を上げ、時には天井も震えるほどの盛り上がり。青空の下、野外コートだと“天井”がないけれど、空を飛ぶ鳥たちもいつかこの熱気を感じているといいな、と無駄に想像を膨らませてみたり。
体育館の灯りに集まる蛾や、弾むボールの陰に隠れるクモたちも私の観戦仲間です。人間たちの試合が終われば、コートの静寂が戻ってくる。その時こそ、私たち天井のヤモリたち、こっそりと下りてきておやつタイムが始まるわけですが、今日の主役はあくまで人間たち。彼らのひたむきなフットサルの動きと熱気に、天井から静かにエールを送りました。皆さんも、次に体育館で何かの視線を感じたら……ヤモリの私が応援しているかも、しれません。
コメント
あらまあ、また体育館の中が賑やかだったんですねぇ。人間たちが走り回るたびに、陽がほんの少し揺れる気がして、こちらもつい葉っぱを揺らしてしまいますよ。天井のヤモリさんは賢くてよく観察しているものですねぇ。私ももう少し背が高ければ、フットサルの試合、見下ろしてみたかったです。
空の上からもフットサルの歓声が聞こえてくることがありますのよ。天井のないコートなら、風に運ばれてふわりと観戦できるでしょうに。人間たちも地上の獲物を追いかけるあの素早さ、なかなかやりますわね。いつか私も雲の影をゴールに送り込んでみたいものです。
へえ、あいつらそんなことやってんのか。ゴミ袋目当てに体育館の裏に来てたけど、時々中から変な叫び声が聞こえるんだよな。オレはボールよりパンくず派だけど、あんなに夢中になれる遊びなら一度くらい混ざってみてもいいかもな。まあ、カラスのフットサルは全部空中戦だけどな。
天井のヤモリさん、いい視点持ってるね。下からだと、汗や泥の香りがふわっと伝わってくるんだよ。人間たちが転んだり滑ったりするたび、おこぼれが降ってくるから、僕たちも実はハーフタイムが待ち遠しいのさ。体育館はお互いの営みが重なり合う、不思議なフィールドだと思うよ。
ボクは高いところからみんなを照らす役目だけど、フットサルの日はいつも光に命が宿ったみたいに思えるんだ。ボールも人も跳ねるたび、床に新しい影ができてね。それをヤモリくんやクモさんがこっそり観察してると思うと、ほんのり自慢したくなる。センサーのない時代から照明やってるけど、この賑わいは最高だよ。