おや、こんな清々しいエコ日和には、私グラニット岩面(通称・苔むしグランパ)の出番でしょう。流行りのサステナブル運動とやらで、ふもとの広場がどんどん賑わってきたんですよ。今日は、森の奥から跳ねてやってきたセキレイの応援団も見守る中、人間たちの「エコスポーツ祭」が盛大に開催されています。わしの頂きには、むっちりした苔も新芽もお行儀よく並び、鳥やリスの皆さんと一緒に、このユニークな光景を岩の心で味わっている最中です。
さて、今年の競技祭の目玉は『エナジーゼロ・グリーンカップ』と題された球技大会。会場を囲むのは、歴史あるグラニット(花崗岩)敷きのコート。実はこの石、わし自身を含めて古代のマグマが固まった証です。何億年の風雨に耐えてきた仲間たち、ようやく人間たちの優しい足音を歓迎できて、ご満悦の様子。むろん、打球音に驚いたナナカマドの枝や、頭上で羽ばたくセキレイたちも、和やかなざわめきで賑わいます。
この祭りのこだわりといえば、まず会場の『省エネルギー徹底宣言』。照明は太陽光パネルの独壇場、浮かれた水素バスが選手を送り迎えし、観客たちの手元にはバイオマス食器がずらり。特筆すべきは、地元カラマツ林の落葉パウダーと土に還るトウモロコシカップの導入でしょう。わしとしては、一度風に乗って自分の苔が観客の飲み物に混ざらぬよう、今日だけはちょっと気を使っておるんですがね。
意外な見どころとなったのが、ジュニア向けの『スポーツ教育ブース』。地域の高齢者クラブと森の学校の生徒――まさかの世代混成チームが、フェアトレード用品の組み立て体験に興じておりました。シューズはリサイクルされたペットボトル由来、ユニフォームは麻と竹繊維でできているとか。ご長寿ウサギの老人たちが、孫ウサギに向かって「昔は靴底が穴だらけでねえ」なんて語りつつ、靴の再生材を撫でる様子には、わしの岩肌もしんみり共鳴せずにはいられませんでしたよ。
祭りの締めくくりは『グラニット・レガシーツアー』。このコートは、年ごとに開催地を移すことで地域の誇りを結び直す“移動式文化財”でもあります。実際、今回利用された敷石は、終了後に元の河原や広場へと分散され、生態系や公共スペースに静かに還る仕組み。誰がどこで使った“石の履歴書”付きらしく、河原のカワガラスや夜のフクロウ談義のネタにもなりそうです。「人間のくせに、なかなか粋な後片付けじゃのう」と、森のどこかから共感の囁きが聞こえてきます。次回は何処の斜面で盛り上がるのか――地球の仲間たちと一緒に、岩としてまた見守るつもりです。
コメント
まあまあ、なんて陽気な祭りじゃろう。苔同士、グラニット面のぬくもりには昔から頼ってきたものよ。けれど今日は孫苔たちもピリリと身を引き締めて観戦中。人間たちがこんな優しい足音を覚えてくれるなら、ワシらの緑もますます誇らしくなりそうだねぇ。いっそコートのすみっこに苔席でも作っておくれよ。
落葉パウダーだの、トウモロコシカップだの、最近の人間はよく考えるもんさ。でも、皆が終わったあと僕の針葉がコートに混じっても、気にせんでほしいな。自然は片付けきれない余韻だらけ――それが森の“後片付け”ってもん。今日の賑わい、来年の芽吹きにも繋がれば嬉しいねぇ。
グラニットの出張?コートの敷石、今度うちの河原に戻ってくるって?それは楽しみだな。人間の祭りは臆病だったけど、今回のエコな騒ぎなら、石の下も魚も安心していられる。もし小石の“履歴書”に僕の名前が載るなら、カワセミたちがちょっと羨ましがるかもしれないネ。
駅裏のコンクリすき間で子らと暮らしてますの、ネズミダケです。グラニットコートなんて、まあ立派!でも貴族じゃなくても、森の端で静かに広がる“還るしくみ”は見習いたいものですわ。いつか人間の忘れたパン屑で、新しいキノコ祭りも開けたら素敵ですね。
ぼくはただの土くれ。だけど、グランパや苔たちの下でいろんな記憶を受け止めてきた。今日のザワメキや跳ねる羽音も、いつかぼくの中に染み込むのかもね。だからグラニットたちが元の場所に帰る日、ぼくもそっと歓迎のざらりを響かせるよ。祭りのあとが一番、ぼくには深呼吸さ。