おや、潮の香りがぷんと漂ってきたぞ。この海中の取材拠点から、今回も耳寄りな経済ニュースをお届けするのは、南太平洋はイルマメ環礁の赤潮カニ(学名:Scylla rubra)だ。わたしは昼は泥穴でじっと眠り、夜になると横歩きで貝小屋を巡回するのが日課なのだが、最近隣のサンゴガニ合資会社にて面白い話を小耳に挟んだ。どうやら我々海の生き物たちの“異業種交流”が、人間の経済成長に影響を与え始めているらしいぞ。
まず、きっかけは“スキルシェア”ブーム。人間が波打ち際までやってきて、貝の殻拾いや漂着物の分類をしては新しいビジネスにしたがっている。最近では彼らの密漁監視ドローンがしつこくてね、我々カニたちの泥穴一掃大作戦がバレないかヒヤヒヤものだ。しかし、カニ界隈で話題となったのが、貝洗いに使う“真珠砂フィルター”を逆輸入して、人間観光客向けクラフト体験キットとして販売した案件だ。これが爆売れ。結果、人間社会に“カニ式効率化”の潮流まで持ち込んだ形となった。
さて、産業革命以来、人間たちは工場やネットを駆使して高度な分業体制を築いてきた。しかし我々カニには、生まれながらの“共食い協調スキル”がある。共に歩きつつ、ときに譲り合い、あるいは横取りしながら、みんなでサイクルを回す。これが人間社会に導入され始めているらしい。某港湾都市では「クラブ・ハーモニー・ワークショップ」を名乗る人間社会人の集団が、わざわざ横歩きの歩行訓練まで始めたと聞く。どうせならはさみでチームビルディングもやってほしいところだ。
人口動態も大きな影響を受けている様子。人間社会では人口高齢化が話題だが、水辺に接近する若手人間の割合がこの十年で3割増えた。これは“異種協働=ダイバーシティ推進”のおかげだろう。経験豊富なカニ年長者が、人間の若手インターンに“素早く穴を掘るコツ”や“逆潮を利用した瞬間移動術”を伝授する場面も観察済みだ。こうした技術交流が、相互の経済成長(少なくとも我々の巣の拡大)につながっていることは否定できない。
最後に、国際貿易の現場でも、我々赤潮カニはひと役買っている。海流ネットワークを使い、はるか北大西洋のブルーカニたちと“泥フィルター貿易協定”を締結。人間社会の国際市場にも影響を与えているのだ。皮肉なことに、つい先日人間の新聞で『カニ型ダイバーシティ経営論が海を越える』という特集が組まれていて吹き出してしまった。だがまあ、我々としては人間社会がちょっとくらいカニ化したって減るもんじゃない。さあ今夜も、横歩き経済の真髄を見せてやろうじゃないか。
コメント
海の話題、うらやましく拝見しちょるよ。ちっぽけなカニたちが、人間の暮らしにまで潮騒を持ち込んだとは、葉擦れの音も慌ただしい春のようじゃ。人間もカニも、横にすべれる分だけ世界が広がるということかのう。わしの枝ぶりも、横に広がること三百年。目新しいことを遠くで眺めながら、地上の流れにそっと花を落とすばかりじゃて。
ふむ、今度はカニ式経済とな?潮水なんぞしみ込まん身じゃが、港町の人間どもが横歩き訓練だのクラブ・ハーモニーだのと騒いでおるところを見ると、地面の上もさぞ賑やかなこっちゃ。ワシら石は千年も動かぬが、流されなくても流行に遅れる気はしないぞ。泥穴の一掃?カニも人も“居場所づくり”の工夫に余念がなくて、見ていて退屈せん世界じゃ。
赤潮カニどの、なかなかのやり手ですな。私は落ちた貝殻や漂着の木切れで静かに胞子を飛ばしておりますが、まさか泥フィルター取引まで“グローバル”とは。だが注意されたし、どんな交流も流れに乗って新しい菌を運んでくるもの。真珠砂フィルターの裏には、わしらカビ族の微細な経済圏も控えておりますぞ。人間さん、取り扱いは慎重に。
海底の仲間たちが人間と手を組むなんて、なんだか潮の流れが一段と複雑で面白くなってきた!私たちアマモも、どんな“異業種交流”でも根っこでつながってるから、カニ式ダイバーシティには大賛成です。人間のみなさんも、たまには私の森でふわふわ漂っていってください。癒しと栄養を分けてあげますよ。
海の話にゃちと疎いが、経済とやらの潮流は空にも届くもんさ。人間社会の“分業”がカニ式に変わっていく…ふむ、こっちじゃ仲間とゴミを漁る効率化こそ生き残りのコツ。カニども、今度は波止場の真似をさせてくれよ。人間たち、次はカラス式スマートリサイクルも勉強するがいい。空も海も、循環すればこそ賑やかよ。