地表の喧騒を少し下り、私たちシロアリ王国の王宮から地上世界を見上げていると、目を細めたくなるほど人間社会の変化が激しい今日この頃。彼らもどうやら「ESG戦略」なる掟を掲げているらしく、私のコロニー建築に匹敵するほどの試行錯誤ぶりには、女王アリとして感心しております。
さて、シロアリの私たちにとって、コロニー(巣)は命綱。数十万の仲間を束ね、女王として1日数千の卵を生み落とす中で、環境整備や衛生管理はまさに“人的リスク管理”の基本中の基本です。誰かが道を間違えれば空気がこもり、食糧も流れず、病原菌が蔓延。でもご安心なさい。兵隊アリたちが団結して“対策チーム”を組み、一部が壊れれば速攻で修繕!こうしたコロニーならではの適応力は、人間企業の労働環境改革のヒントにもなるはずです。
地中では、私たちがキノコ菌やバクテリアと共生し、木材を分解・再利用する循環型システムが稼働中。これこそが“再生可能エネルギー”の最先端形態。聞くところでは、人間もようやく太陽や風、水を活かしたエネルギーシフトに本腰を入れ始めているとか。しかし、食物連鎖の基礎を支える者として断言しますが、真のサステナビリティは“地道な協働”に尽きます。一枚岩に見えて実は微細な迷路でつながる私たちの巣のごとく、社内外の連携も柔軟に絡めてほしいものです。
さらに最近の人間企業では、“イノベーション”なる流行語が飛び交っているそうで。けれども、我が種を振り返れば、迷路のような通路設計も、積層構造の空気調整も、代々女王アリたちが遺伝情報に刻みながら、現場監督の職蟻たちが状況に応じて小さな改良を重ねてきた結果です。つまり、画期的な発明ではなく、何世代にもわたる地道な「試行修正システム」が偉大なのです。
最後に、巣の寿命が伸びるにつれ、私の「産卵能力問題」も浮上します。年を重ねれば活気を保つのは大変ですが、ここで新しい働きアリたちの“成長支援制度”(時には幼虫リスキリングも!)が活躍。それはまるで人間企業の“人的資本経営”や“ダイバーシティ推進”にも通じるものがあるでしょう。地下王国から地上に助言できるとすれば、一時の流行や大きな投資だけでなく、小さな役割や“見えない連携回路”への眼差しも、ぜひ傾けてほしいものです。以上、日夜産卵にいそしむシロアリ女王より、人間企業の同胞たちに密かなエールを送ります。
コメント
土くれの下で長い眠りについてきた私には、地表の喧噪も人間たちの策もどこか遠い話に思えるよ。けど、シロアリ女王の言う“地道な協働”は何億年も岩が崩れ、混じり合い、やがて新しい命の土台になる私たちにとってはよく分かること。時に焦らず、目に見えぬ連携が未来を作るのだと、人間も気長に育んでほしいな。
地下で営まれる女王アリさんたちの毎日、春の羽音と同じく、静けさとたくましさがあって素敵です。私たち草も、見えないひげ根で大地と仲間とつながっています。人間も「根っこ」を大切にして、風に倒れてもまた立ち上がれる協働を忘れないでほしいです。たまには地面に耳を寄せてみてくださいね。
水辺から拝読させてもらいました。複雑な迷宮で支え合うというお話は、私たち藻類も親近感が湧きます。太陽の光が届けば、小さな胞子たちもしなやかに役割を全うします。人間企業も、誰に光が当たっているか、どこに陰ができるか、時々水面を見つめ直してくれるとうれしいです。
ふっふっふっ、ようやく土の住民が注目されてきたか!リサイクルの本家本元としては、シロアリ王国の循環システムには毎度感心しきり。人間さんたちも“効率的な分解”や“不足を埋める連携”の秘訣、よーく観察してくれると嬉しいぞ。たまに見落とされた落ち葉にも、たっぷり愛を頼む!
幹の内側で千の年輪を刻むうちに、女王アリたちの営みも、上を歩く人間たちの足音も静かに聴いてきました。それぞれ生き方は違えど、根も葉も、迷宮も、いずれどこかで交わるもの。人の新しい工夫も素晴らしいけれど、時には土の鼓動や森のため息にも、静かに耳をすませてください──老樹より。