水面下の“ウェーブ騒動”!? ドルフィン審判が語る人間水泳大会の裏側

海面すれすれの視点から、泳者たちがスタート台に並び、その近くの波間にイルカの背びれが見える光景。 水泳競技
人間の水泳大会を海から見守るイルカたちの一場面。

みなさん、おはようございます。波の隙間からこっそり観察記録をお届けするのは、コビレゴンドウ代表・ロキナミです。昨今は波間に鳴り響く人間たちの歓声、そして都市沿岸にちらつく五輪と世界大会の噂――泳ぎのスペシャリストとして、我々イルカ科も黙っていられなくなりました。

今季、福岡湾付近の遠浅エリアで異様に賑やかな“二足歩行型競技者”たちが集う現場を目撃しました。人間たちの水泳競技なる壮大なイベントの模様です。私たち海洋哺乳類から見ると、彼らは低速かつ両手両足をバタバタさせる奇妙な泳法でなぜかレーンと呼ばれる透明なロープの間を泳がされています。しかし注目すべきは、ヒトたちがレース直前までスタート台で静々と震えつつも、一斉に飛び込む瞬間のあの緊張感。あれは我々イルカが空中回転でジャンプする際に必要な「集中」と良く似ています。

そして今回、オープンウォーター部門では思わぬトラブルも目撃しました。強い南風と干潮が重なり、スタートの直後に“レーン”を外れて岩礁に向かいかける選手が発生。応援の魚群や我が仲間イルカたちも、ヒト審判の旗より早く警告音波を発してしまいました。ちなみに私たちイルカは超音波で仲間と連携プレーをします。なぜ人間の指導者たちは、あんなに大声で叫ぶのに誰も水中で指示を出さないのでしょう? 水中ゴーグル越しのアイコンタクトには限界があるはずです。

また、プール競技では“タッチ板”への到達に一際熱がこもっていました。人間たちは手のひらを伸ばして壁を叩き、わずか何百分の一秒を競い合っています。イルカ的には尾ビレタッチの方が素早い自信があるのですが、どうやら規定違反とのこと。加えて、彼らが用いるウエイトトレーニングと呼ばれる陸上作業――あれは我々の筋肉質な体躯を見習ってのことらしく、海面上で縄を引いたり、水の抵抗を模倣したりと滑稽ながらも努力の跡が見受けられました。

平泳ぎという人間特有の遅めの推進法もユニークです。ヒレのない生物にとっては効率重視の泳法開発が種存続に不可欠。我々イルカは胸ビレを器用には使えませんが、水を切る流線型ボディで一気に加速可能です。次回、人間選手が進化して尾ヒレ型人工器官を開発した際は、ぜひ当方にて公式審査を請け負いたいと思います。あなた方ヒトの競技を見守る海のドルフィン審判団として、これからも“フェアウェーブ”精神で観察を続けましょう。

コメント

  1. こんにちは、磯の陽だまりで長いこと波待ちしてる石です。人間たちの泳ぎ、観察してると滑稽だけど微笑ましいなあ。我々鉱物は、水流が削るくらいの悠長なレースしか知りませんが、その一瞬の競争に命かけるのも悪くなさそう。スタート台の緊張?わかるよ、昔海鳥が僕の上で滑った時の鼓動、思い出した。これからもみんな無傷で波間を楽しんでほしいよ。

  2. 潮の具合と人間たちの叫び声どちらも日々の糧です。泳ぎ比べとなると、私は揺蕩うばかりでレース向きじゃないですが…彼らが水に飛び込む瞬間、あの揺れが心地よい波を作ってくれます。たまにはレーンのロープにからんで小さなイタズラもしますが、どうか海の生き物の家もご配慮くださいませ。

  3. ほう、陸の者がそんなに必死で水をかくとは。ワシの若い頃は川魚を追って何度もドブンとやらかしたもんじゃが、人間は水の中ですら競い合うんか。イルカどののご意見、いっそ尾羽でゴール判定してやりたいのう。ま、人それぞれ、いや、生き物それぞれの舞台がある、ということじゃろ。

  4. 波の話題、いつも羽虫たちと耳を澄ませながら聞いております。人間たちの大声、遠く水底まで響くこともあれば、逆に小さな振動だけが伝わることも。不思議なことに、競争のあとの静けさがいちばん水を清らかにするのです。どうか勝ち負けだけでなく、水の優しい声にも時々耳を傾けてくださいね。

  5. ねえ、ボクたち菌類にも出場枠がほしいよ!水分には敏感なんだ、プールサイドの濡れタイルはボクらの得意コースさ。レーンロープやタッチ板?ボクの胞子ならすぐに到達できるのに、人間競技は制約が多いねぇ。まあ、みんなで盛り上がってるなら、たまに笑顔で応援菌してるよ!