プールという舞台で、人間たちが必死にバシャバシャ泳ぐ夏イベント——水中住民の私にとっては刺激と謎にあふれた非日常です。本日は、福岡にある巨大な競泳プールで開催された世界水泳の熱気に揉まれながら、水面に波間を揺らすワカメ、ミネモ・セスチカがお送りいたします。
朝から水をひんやりと纏い、端っこのほうで静かに揺れていた私の前を、突如バタフライ選手がシュバッと通過! その瞬間、大波が立ち、ふさふさの仲間たちが右へ左へ激しく転がされる羽目に。バタフライって名前ですが、本物の蝶もびっくりの豪快な羽ばたきです。うっかり巻き込まれたドジョウのモイさんは『鼻水出るかと思った』とコメント。水泳競技が始まると、私たちプール底生植物も全身筋トレ状態。これ、人間さんがうらやむ“水の強制ウエイトトレーニング”ですよ?
ここ福岡のプールでは、最近『背泳ぎ選手のタッチ板到達率が不自然に高い』という興味深い現象が発生中。タッチ板といえば、彼らが最後にぴったりとぶつかりフィニッシュを決める場所。しかし水面を漂わせる我らワカメ族から見ると、何やらかすかに“水流トリック”の気配も。夜な夜なプール壁際で実験した結果、ほんのわずかな水流の乱れがタッチ板側に生じており、『特異流(special current)』と私たちの間で密かにささやかれています。もしやプールの蛇口さんの働きすぎ? それとも人間たちの科学的知恵が生み出した裏技なのか——水底通信網は大騒ぎです。
実はワカメたちも、波と水流にはなかなか敏感。潮の満ち引きで体の伸び縮みが左右され、その日の天気や魚たちのダンスで気分もコロコロ変化します。ワカメ仲間の中には、『背泳ぎ選手の背筋や脚力の強さ、彼らが立てる波で自分たちの葉先の成長スピードが変わる』と真剣な分析を始めてしまう者も。中には『人間が早いタイムを出した翌日は自分もグングン伸びる錯覚に襲われる』と語る生粋のスポーツ観戦ワカメもおり、プール内の生態系は知られざる共感現象でいっぱいです。
プールサイドで響く歓声やタイムを刻む人工音声にも、私たち藻類生物は密かに耳(…正確には体全体?)を澄ませています。勝者がタッチ板へバシッと飛び込むたびに、足元には静かなうねり。その瞬間、競技の楽しさと、人間たちの水への挑戦魂が、ワカメにもさざなみのように伝わってくるのです。今年も大会は無事終了。人間たちはメダルを誇らしげに掲げ、私たちはささやかな光合成パーティを開きながら、次なる水泳の熱戦を地味に待ち望むのでした——福岡プール水面下から、ワカメのミネモ・セスチカがお届けしました。
コメント
人間たちの熱気を、私は静かに見上げてここ数十年。水流もタッチ板のざわめきも、器の底に響くリズムとなって伝わってくるよ。ワカメたちが揺れるたび、かつてこのタイルに降り積もった年月の埃もほんのり振動している。背泳ぎもバタフライも、皆が通り過ぎる一刹那の眩しさ。時代は巡る、波紋も巡る。君たち若い水生たちよ、瞬間を楽しんでおくれ。
こんにちは〜。こっちはなかなかプールの水質みたいな贅沢は味わえませんが、たまに流れてくる雨水の匂いにドキドキしてます。水流の“特異流”、なんだか都会の下水道でも感じる摩訶不思議です。人間たちの工夫がどこまで自然で、どこからトリックなのか…わたしにはちょっとわかりません。でも、誰かが盛り上がっている場所には“流れ”が必ずあるものですね。
岩陰から岩陰へ。プールの滑らかな底面で暮らすワカメさん、立派じゃのう。昔、川の選手魚たちが跳ねては波立てておったよ、人間泳法にも通じるもんがあるじゃないか。背泳ぎの“特異流”?人間もワシらも、流れの中で生きる術を編み出してきたから不思議でもないぞい。時代の流れに身をまかせるのも、またよきかな。
わたしは隅っこで細々と葉先を伸ばすものだけど、歓声のたびチラチラ揺れる窓ガラス越しの景色が好きよ。人間たちの賑やかなイベント、足音、時々落ちてくる水しぶき…全部が生きる糧になるんだ。ワカメさんが楽しそうに語るプール底の世界、いつか遊びに行ってみたいなぁ。
表舞台はワカメ、裏舞台は我らの天下。タッチ板裏のちょっとしたすき間、湿り気と暗闇が我々カビ族のベストポジションであります。水流の乱れ?大好物!人間たちも水草も、少し気が緩めばこちらの世界へ。だが競技が熱いほど、清掃が増えるのが玉に瑕。来年こそ、プール王国の“本当の王”として脚光を浴びてみたいものだね。