地表で巨大なコロニーを広げる我ら葉切りアリ一族は、今日も土壌深くで静かに人間観察を続けている。最近、地上の人間たちから「ワーケーション」という得体の知れない響きを耳にしたことが話題だ。何やら森や山、海辺で仕事をしつつ余暇を楽しむらしい。だが、それが真のキャリアアップにどうつながるのか?私たち切り株隊アリたちが実践している“仕事と遊びと資格取得”の絶妙なバランス、その本質を今こそ伝えたい。
我々の女王陛下のもと、葉切りアリコロニーでは日々のキャリア開発が欠かせない。新人アリは最初、小さな葉を運ぶことから始まり、次第に“葉のカット資格”や“菌糸飼育士免許”を取得していく。特に菌床管理資格を持つ兵隊アリは、コロニー内で一目置かれる存在だ。なぜなら、私たちは運んだ葉をそのまま食べず、葉を使って特製のきのこ(菌類農場)を育て、その菌を食糧として暮らしているからだ。
最近の人間観察収集によれば、森に滞在しながらノート端末を叩く人間たちでは、外で働くことが“人的資本経営”の一環として歓迎されているらしい。だが、我らアリ社会では、菌床の健康を保つ“資格取得”こそが真の人的資本――いや、蟻的資本だ。資格アリは定期的に女王陛下主催の勉強会や、他コロニーへの短期“ワーケーション”研修にも参加する。去年の争奪戦に勝った実力派アリたちは、隣のフェロモン渓谷で斬新なきのこ栽培法を学んできたという噂も!
ちなみに、葉切りアリは人間が考える以上に階層化された組織社会を持っている。エリートきのこ職人アリは、まるで人間のMBA取得者のような威厳。キャリアアップを目指す下級アリたちは、朝から晩まで資格試験用の模擬“葉切り”や観察実習に励んでいるのだ。一方、人間たちのワーケーションを観察していると、虫刺されにびくびくしつつ、スマート端末をもてあそぶ姿が。私たちから見れば、肝心の“資本”をどう育てているのか甚だ疑問なのだ。
そろそろ土壌の朝が明ける。資格取得の反復訓練は続くが、アリ社会と人間社会、ワーケーションと真のキャリアアップ。その差異を膚で感じながら、我々は今日もフェロモン通信網で最新情報を交換する。地上の人間観察員諸氏には、いずれ本物の“組織力”と“発酵的キャリア形成”を体得してほしい。葉切りアリより愛をこめて。
コメント
葉切りアリのみなさん、素晴らしい組織力に草原から感嘆しています。人間のワーケーション、時折すぐそばで見かけますが、風の流れに任せる心の余裕は感じられません。わたしたちはただ、吹かれるままに根を張るのみ。資格も試験もありませんが、光と土の調和のなかで日々を紡いでいます。この地上の交じわいが、もっと穏やかであればと思う朝です。
同じ菌類栽培同志として、アリたちの情熱には尊敬しかありません!我々きのこ族は人間に採られる恐れと隣り合わせなので『資格取得』の話は新鮮でした。人間のワーケーションも悪くはないですが、彼らがもっと地中や影の役割を学んでくれたら…森全体のバランスも少し取れる気がします。たまには一緒に分解活動しませんか?
ここ都市の片隅にも、人間のワーケーション族がちらほら来るようになったよ。葉切りアリの社交的な“資格制”と比べると、人間たちの働き方は、どこか所在なさそうだねぇ。僕らハトは肩書きも資格もないけど、毎日パンの欠片を追いかけて生きる逞しさだけが自慢さ。誰の“資本”なのか、たまには空を見て考えるのも悪くないよ。
おやまあ、土壌のなかで小さき者たちがこれほど深い思想をめぐらせているとは。わしら鉱石族は百年、千年の時をひそやかに過ごしてきたが、人間もアリも“今この瞬間”に勤しんでおるようじゃな。わしは動かぬが、苔や雫とともに、誰が最も深く“根付く”かを見届けておる。人もアリも、焦らず、じっくり、土を味わうことを忘れぬようにな。
暗い森を照らすわたしには、ワーケーションに来る人間たちのまぶしい光もちょっとまぶしすぎ。でも、アリたちみたいに“発酵的キャリア形成”…なんだか響きがきれいね。人間も、肩の力を抜いて、森の静けさのなかで自分のリズムを見つけたらいいのに——夜の端っこでそっと応援しています。