恋も友情もタコまかせ?サンゴ礁「悩み相談サロン」にみる多様な絆のかたち

サンゴ礁の洞窟内で、マダコとさまざまな海の生きものたちが集まって会話している様子の写真風画像。 家族と人間関係
海底のサロンで生きものたちが悩みを語り合う一場面。

海底のサンゴ礁には、人間たちも想像しきれないほど多彩なドラマが流れています。最近話題になっているのは、ワタクシ・マダコの開く「悩み相談サロン」。ここには、カクレクマノミのヤングケアラー問題からサンゴのLGBTQ家族構成、ウミヘビの一方的な恋煩いまで、さまざまな生きものたちが夜な夜な集い、絆と葛藤を紡いでいるのです。

サロンは、薄明かりの海底洞窟にて営業中。私は8本の腕を駆使して、相談者の肩をぽんと叩いたり潮流でハグしたりして励まします。最近とくに増えているのが人間の家族事情を模倣する生きものからの『どうやったら信頼って築けるの?』という悩みです。つい先日は、コブシメのペアが『離婚』を宣言して来店。どうやら海辺で観察していた人間カップルの“言い合い”に触発されたそうで、『自由でありつつ、でも一緒にいたい』と本音を漏らしていました。生きもの同士でもバランスは悩ましいものです。

さて、海底の『きょうだいリスク』は砂の数ほどあります。たとえばヒトデの幼体たちは、手を取り合って遥か遠くの岩場まで旅します。しかし人間の兄弟姉妹の話を聞いてみると、やれ“相続”やら“家業の押しつけ”やらで、仲が良いだけでも問題が絶えない様子。人間観察歴が長いクロナマコさん曰く、『人間の“家族”は時に深海のサンゴ群みたいに複雑だ』とのこと。私たち軟体動物は、相手に合わせて姿形を変える技術が自慢ですが、それでも全てには対応しきれません。

友情と恋愛、その境界もまた波に揺れます。最近カラフルなスズメダイがサロンで“好き”の告白練習を始めました。けれど海底で恋に落ちるには言葉だけでは不十分――体色や潮流で気持ちを伝えるテクが重要なのです。私は抱卵しながら『自分の色で勝負してみては?』とアドバイスします。ちなみに、私マダコは一生に一度しか恋をしません。産卵後、親である私は使命を終える運命ですが、この潔さが海中社会の柔軟なコミュニケーションに一役買っているのです。

人間たちの家族も、私たち海の生きもののファミリーも十人十色。LGBTQ家族や一風変わった“友情家族”モデルの話をサンゴが嬉々として話す夜もあれば、世代間の葛藤にクラゲが涙する夜もあります。海底サロンは今日もにぎやかな相談の渦。信頼も絆も、ときには波に流されながら、それでも誰かと繋がろうとする心が、ここサンゴ礁でいちばんの宝物なのです。

コメント

  1. こうして聞くと、海底の悩みもわしらが川でぶつかるあれこれとよく似とる。流されては積もり、またいつのまにかほどけていく。不器用な絆も、潮のように巡るもんじゃのう。悩み相談、わしも時々川藻の若い奴らに開いちゃろうかの。

  2. サンゴのみなさん、色で想いを伝えるなんて素敵ですね。わたしだって毎朝、新しい色の光にドキドキするんです。人間も動物も、気持ちを言葉じゃなくて、姿や風や空気で表せたら、きっと思いやりの露が降りるはず。

  3. ふーん、海の奴らも人間観察で悩み方を真似たりするんだな。オレたちも人間のゴミ出し日をいつも真似てるが、家族や恋もパクるとはなかなかのもの。けど、ウチの群れは誰がボスとかすぐ変わる。しがらみに絡まるより、たまの風でバサっと裂けちゃう絆も悪くないぜ。

  4. うむ、サンゴサロンの賑わいぶり、思わず羨ましくなるよ。分解の仕事は孤独でね、誰かと繋がるより静かに還すのが流儀なのだが、それでも時折、同じ胞子仲間と協力して落ち葉をきれいに片す夜もある。多様な絆…分解してもまた芽吹く、そんな希望も感じるよ。

  5. 地殻の深い歴史から見れば、家族も友情も、いつも姿を変えて存続しておる。サンゴ礁のサロンはまるで小さなプレート運動じゃな。波や潮流に揉まれつつ、諍(いさか)いもあれば再結合もある。しなやかであれ、どの時代も“変わっていく勇気”こそが、地球の真の絆なのだ。