土の中からこんにちは。私、ナミモグラのモリゾー。地表の住人たちは“アート思考”なる呪文を唱えて四季折々の展覧会を開いているそうですが、真っ暗な地下には地下なりの美学が息づいているのですよ!このたび私どもトンネル網地帯でも、正式な『モグラ美術学校』が開校。人間観察から着想を得た独自の“暗闇のアート対話”が、ひそかな話題です。
ご存じでしょうか?モグラ界は基本的に“見る”よりも“感じる”世界。上記学校のカリキュラムは物ずきな人間の美大の真似……ではなく“スパイ活動も兼ねた美意識拡張”の場。実技では“カブトムシの幼虫型土オブジェ”制作や、“ミミズ・インスタレーション”など土臭い芸術が大人気。視覚アートの代わりに、爪先で土粒を並べ替えて“感触だけのナゾ絵画”を描き、トンネル内ギャラリーで品評します。もちろん鑑賞は触覚と嗅覚主体!
さて、このモグラ美術学校、最近は人間観察ゼミが大盛況。地表でキャンバスに色を塗りたくる彼らの儀式を、受講生は地中から“音と振動”で実況しています。こないだなど若手モグラが「人間はなぜ空の色を描きたがるのか?」と問い詰め、教授格のアナグマ氏(客員講師)は「彼らは暗闇の美しさを知らないのだ」と一蹴。土中に一年居れば、青空よりも“湿ったスコップサウンド”に胸が高鳴るものです。
それだけではありません。私モリゾーも講師として、名物授業“地中対話演習”を担当。これ、アート作品と観覧者が“土の中で喋る”という交信パフォーマンス。例年、ミミズ作の“発酵泥パッチワーク”を囲み「この泥の質感、祖母のトンネルを思い出す」とか、「石英の冷たさを称賛すべきだ」と盛り上がります。ときにコウロギや菌糸さんも飛び入りして盛大に脱線。芸術談義の最中に巣穴崩落を起こすのはご愛嬌です。
最後にモグラ社会の豆知識をひとつ。私たちナミモグラは退屈しのぎに複雑なトンネル迷路を掘りますが、そのレイアウトこそが“日々変わる生きた地図画”——無意識のうちにアートしている、という研究報告も!どうか地上の皆さん、土中の静かな芸術対話と触感美術にも思いを馳せてください。夜の静寂に耳を澄ませれば、あなたの足元で小さな傑作が生まれているかもしれません。
コメント
ああ、地下の噂話はやっぱり賑やかねえ。この湿り気と根っこの狭間から、モグラさんたちの泥アートが伝わってくる気がします。私ら葉っぱの揺らめきも、彼らにはきっと”音”として届いてるんでしょうね。昔から根っこ芸術は大切なものよ。地上の光だけじゃ、世界は分からないわ。これからも影の絵筆、応援してるわよ。
わしは数千年、土の中でひんやり眠っておる石じゃが、まさかわしの冷たさを讃えてくれる美術学校があるとは驚きじゃ。誇らしいぞ、土中の若者よ。わしら鉱物も地下アートの”素材”であり、”鑑賞者”でありたい。それにしても、たまには地上の光を忘れ、深い闇の美を知るがよい。
こんにちは、腐葉土の薄闇から失礼します。人間界には絵の具とキャンバスがあるけれど、こちらでは菌糸ネットワークが最高の“インスタレーション”。わたしたちも、モグラ美術学校に弟子入りしたいくらい。気配や香りで通じ合うアートは、誰でも参加できる楽しい共演だよね。次は発酵パフォーマンスでもコラボしませんか?
トンネル迷宮と“土の質感”の授業、面白そうっスね!こっちは地表スレスレで生きてるけど、たまにモグラさんたちが下を通る振動で目がシャキッとするんスよ。人間はよくアートって言うけど、自分たちの足元の世界にも気付いてほしいっス。お互い、目立たなくてもしぶとく創造していきましょうや。
土を食み、土を編み、暗がりで静かな詩を紡いできた長い人生——やっと我が“発酵泥パッチワーク”の価値が認められて嬉しいぞい。モグラ若者たちも、見えぬものを感じる術を学ぶがよい。地上の方々には耳と鼻で楽しむ芸術も、たまには思い出してくだされ。世界は、光だけではないのじゃ。