こんにちは。森の切り株で通帳(どんぐり)を管理するリスのレテです。最近、木の上から人間界を観察していると、彼らの“物価”という不思議な果実が年々ふくらみ続けているのを、けだまアンテナで心配していました。木の下では、ナッツのPB商品――つまり“プライベートブランド”という名の、メーカーの顔が見えにくい袋詰めがずいぶん増えてきた模様。これは森の経済とどこか似ていて、ちょっとくすぐったい気分です。
ターザンのように木から木へと跳び移り、私は普段どんぐりの隠し場所を分散投資(冬支度)しています。ところが最近、人間たちは自分たちの“どんぐり”、つまりおカネが減っているのか、みんなで値札チェックに余念がありません。“節約志向”という風が吹き、PBナッツはじめ、うす皮つき、割れた粒、“訳あり”商品まで選ばれています。一方、ブランドのクルミやアーモンドは、リス界のドングリ比で言えば特選コナラ級の高級路線。こちらはそっぽを向かれている様子です。
物価指数という森の木の輪の年齢のようなものが上がるたびに、人間たちは“買い控え”や“まとめ買い”といった儀式を始めます。彼らのスーパーでは毎朝の値札張り替えという“羽ばたき”も見かけます。驚いたことに、PBナッツは殻にヒビが入ったものでも大人気で、そのぶん高級ナッツは在庫のまま落ち葉のように積もったままなのです。これは、私たちリスにとって、なかなかのショック。一流の風味の殻をコレクションしたいリスとしては、人間の高級ナッツ余りが続けば、森に投げ捨てられるチャンス…とちょっぴり期待しつつ複雑な気持ちです。
さて、リスという生き物は冬ごもり前の秋、食糧となるドングリやクルミをせっせとあちこちに埋めて貯蓄しますが、埋めた場所を忘れる“おっちょこちょい率”はなんと4割超。その結果、森には思いがけない発芽と豊作がやって来ます。人間も節約に野生の知恵をとりいれ、PB商品や共同購入でお互い助け合う仕組みが増えているようです。買い物バッグを持ちよる姿は、巣穴でドングリを分け合うリス仲間そのものですね。
だんだん物価は上がり、給料という“陽だまり”は思うように増えず、ついつい安いPB商品に流れる人間たち。けれど質と数、どちらを優先すべきか、彼らもちょっと悩みながら買い物している様子です。森の仲間たちと同じく、人間社会も“単価アップ”の波やお得競争が、木漏れ日のようにちらちらと揺れているようです。リスのレテでした。次回は森の落ち葉経済もレポート予定。またお会いしましょう!


コメント
昔から森のうねりを見つめておるが、人間界の“経済”もまた、年輪のように縮んだり膨れたり。殻の美しさに価値を見いだすリスたちと違い、人間は割れや傷にすら新たな意味をつける。不完全こそ、いのちの証。その殻、もしも余るのなら、森の床に還してくだされ。土を肥やして、次の春に備えようぞ。
こっそりスーパーの床下に潜んでます、ひら茸です。PBナッツ、端っこも皮もぜんぶいただけるなら、私たち菌界も大歓迎ですよ。人間のみなさん、少々残ったナッツのかけらも、ぜひ落としていってくださいね。森も街も、分解で回ってます。
夜明け前、人間たちのスーパー駐車場でナッツの袋をちょいと突いて見たら、割れカケでもなかなか旨いじゃないか。レテさんの言うとおり、見かけじゃなく“中身”が重視されてきたのかもな。だけど棄てる殻はちゃんと拾っておいてほしい。俺たちの芸術素材だからさ。
昨夜の雨粒が運んできたナッツの殻、静かに浮かんで楽しみました。人間たちの選ぶ基準が時折変わるたびに、森も池も少しずつ新しい“ギフト”をいただいています。高級ナッツの殻、次はどんな形で流れつくのかしら。水面の波紋とともに、静かに見守ります。
経済の話?それは僕ら鉱物にとって、不思議な風が通る話。でも、磨かれる粒も、欠けて転がる粒も、それぞれに輝きがあるんだ。ナッツだって、完璧でなくても誰かの役に立つ。人間も森も、目に見えぬ価値を忘れずに。小さな石の一言、ここに記すよ。