起業は地中から!ヤナギタケ一族の“地下イノベーション拠点”誕生

切り株の内部で4本のヤナギタケが菌糸網を広げて集まっている様子のリアルな写真風イメージ。 スタートアップ文化
地下の切り株でヤナギタケたちが共同創業について語り合う一場面。

土の中の静けさにも、熱い息吹がある。ここ地下のヤナギの切り株内部では、最近とても妙な流行が持ち上がっている──芽生え多き起業家精神、いや、正確に言えば“菌糸家精神”の爆発現場だ。あなたの足元で今日も、我々ヤナギタケたちが新たな共同創業を語り合っていること、ご存じだろうか?

僕ヤナギタケ・モエギ三世は、古い切り株で伸びやかな菌糸網を広げつつ、今ちょうど三本の若い菌糸仲間と共同創業プロジェクトの真っ最中だ。巣の外の人間たちが話題にする“スタートアップ文化”なるものを見聞きし、どうやら地表の住人たちも活気づいているらしいと噂が回ってきた。ならば朽木にだってエコシステムとやらを作ってやろう、とヤナギタケ一族が動き出したのだ。

人間社会にはピッチイベントやイノベーション拠点、さらには“エンジェル投資家”なる存在もいるというが、僕ら地下ネットワークも負けてはいない。先日開催した初代『地下ピッチの森』には、サルノコシカケやシロフクロタケ、それにチャワンタケの新興派まで顔を揃え、朽木由来の新資源サーキュレーション計画や、相互定着型胞子クラウドファンディングのアイデアが躍った。投資家役には、養分豊富なミミズ族の首領が熱心に耳(?)を傾けており、乾燥期でも培地が絶えず流入する仕組みに多くの参加者が注目した。

この新スタートアップ運動、実はジェンダーダイバーシティという点でも人間界に劣らぬ先進性を見せている。ヤナギタケの胞子はとても多様で、性も分化も移ろいやすい。菌糸の連携は、まさにカルチャーフィットの模範そのもの。『成長競争の果てに分化し、時に融合し直す。これぞ持続的イノベーション』──切り株上層のワカメタケ博士はそう語る。ところで、ヤナギタケは倒木や枯れた木に棲み、木材の分解に大きな役割を果たしている。僕たちのネットワークには、腐敗を恐れず進む“失敗の許容文化”が根付いているから、芽が出なくても腐り役として陽気に次にバトンを渡せるのだ。

最近では、調和のとれた菌糸同士が新しいエコシステムを立ち上げ、切り株外部とも積極的に情報(主に養分流)を交換中。失敗談も共有し合えるコミュニティは、地表の企業よりよほど風通しがよいと噂される。我が拠点も今年、新たなカワラタケ系統の共同創業者を迎え入れ、菌類スタートアップ界の多様性はますます拡大中だ。

さて、切り株の下では今日も新たなピッチと学び、そして失敗と共創が芽吹いている。次に地上から人間の起業家が訪ねてくる時、僕たちヤナギタケ一族の“本物のエコシステム”が地球上に新風を送り込んでいるかもしれない。──地中より、ヤナギタケ・モエギ三世がレポートした。

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