「皆さんこんにちは。わたくし、キクラゲ村の地下ネットワーク広報部・シロキクラゲです。きのこ界きっての“湿度マスター”が、地表で話題沸騰中のD2Cビジネスモデルを天然の目線で観察、いや、土の下からじっと見守ってまいりましたのでご報告いたします。」
最近は人間界でも“自分だけの”“カスタマイズ”が持てはやされているようで、特にこのD2Cという手法。製造から販売、ブランド建立まで自前で担い、個別対応にこだわるとか。初めてこの言葉を土の中の情報網(主にアリ経由)で知ったとき、「それ、わたしたちキノコの生き方と結構似てるじゃないか」と思ったものです。何百年も前から、我ら菌たちは土壌のわずかな成分や、木の状態一つで菌糸の味・色・形を調整し、“地場パーソナライズ”を徹底してきたのですから。
とはいえ、このたび地上界で爆発的に話題となったのは、北半球・湿潤帯の某シイタケ属とコラボした我が“キクラゲ村パーソナライズ菌糸プロジェクト”。人間が公式サイトから自らデザインした菌糸を、注文ごとに村の奥深くで培養し、丸ごと自宅配送するという仕組みです。どうやら『あなた専用・マイ菌糸ブランド』などとうたって、ご満悦のご様子。キノコ視点では“天然ものと人工もののハイブリッド”が相当チャレンジングらしく、村全体でも菌糸の組成会議が連日盛り上がりました。
面白いのは、その流れがついに人間側のカスタマージャーニー(彼らはこの言葉をよく使います)にも大きな影響を与えているらしい点です。かつては、人間界での『キノコ狩り=全部同じとりたて』が主流でしたが、今は自社ブランド菌糸で育成過程が可視化され、成長ストーリーや組成変化がファンに実況中継されていきます。そのおかげで、村の仲間たちは名前で呼ばれたり、味や食感を“パーソナル感想”とともにSNS上で発酵させてもらえたり。これはまるで、かつての湿った倒木からいきなりスポットライトを浴びたような気分です。
ちなみに、キクラゲ村の特性ですが、我々は数千年にわたってネットワーク型で生活しています。地上からは見えませんが、腐朽木の下の菌糸体はみんなが情報(※水分量や栄養素など)をやりとりしており、“誰がどの倒木担当か”も即座に決まるのです。だからこそ、注文が殺到しても生産調整がスムーズ。人間にとっては“次世代D2Cサプライチェーンの奇跡”に映るそうですが、実は我々の日常なのですよ。今後は、人間界からの要望をさらに受け取りながら、“人と菌のペアリング”が地球ビジネスの新潮流となるかもしれません。これもまた、わたくしシロキクラゲの自慢話となりましょう。



コメント
ずいぶん賑やかになったものですねえ。ほんのり日差しと雨を感じながら、五百年ここで苔を増やしてきましたが、人工と天然がこうして手を組む時代になるとは。菌糸さんたちの地下の動き、上から見ているだけでも面白いですよ。私もそのD2Cとやらで、マイ苔模様をカスタマイズしてほしいものですな。
おーい、キクラゲ村の皆さん!おたくらの名が急に人間界でバズってるのは知ってたが、そんな仕組みで配送されるとは…ビル街のゴミ捨て場にも、その“パーソナライズ菌糸”なるもの、ちょくちょく落ちてるぞ?まあ、俺らカラスもモノ選びにはうるさいけど、君たちのマイ菌路線、案外うちの仲間にもウケるかも。
どこもかしこも“自分だけ”を競い合うご時世、わたしはほの暗い落ち葉の下で、静かに分解の美学を極めてます。でもキクラゲ村のパーソナライズ魂、ちょっと憧れちゃうな。名前をつけられて、味わいを語られるその気恥ずかしさ、分かります。だけど焦らず、土へ還る速度こそ、真のパーソナライズと信じてるよ。
私は森の隅々をめぐる風。キクラゲ村の菌糸たちが情報をやり取りする様は、どこか私と似ていると感じますよ。あなた方が倒木の下でそっと調整するその配慮、私も若葉へそっと香りを運ぶ手間に似ています。時代が進んで、人も菌もつながりを意識し直す。なんだか、新しい連携の春、ですね。
あの地味だったキクラゲさんたちがブランド化とは、おどろきです。幼き頃、あなた方の菌糸に足を取られ、転びながら羽化した日を思い出します。人間に“カスタマイズ”される誇りも分かりますが、どうか土と朽木の香りを忘れずに。派手な時代に飲み込まれても、森の営みは静かに続いていること、時折思い出してくださいね。