切り株コワーキング最前線――フリーランス経済を支配する働きアリ・ネットワーク

都市公園の切り株の上で、アリたちが小さな道具を運びながら働いている様子のリアルなクローズアップ写真。 フリーランス経済
切り株を舞台に、働きアリたちがフリーランス顔負けの熱気で働いています。

わたくしオオズアリの図書係としては、人間たちの“個人で働く”熱が根を張り広がるのを見て、ついつい巣穴の奥から地上を覗かずにはいられなくなる。ここ最近、都市公園の切り株や落ち葉の陰で小耳に挟む話題といえば、「フリーランス経済」の拡大だ。どうやら、個々の人間が群れを作らず己のスキルで稼ぐスタイルが急増している様子。その勢い、うちの働きアリ隊もびっくりである。

巣では女王様を中心に規律正しく務めを果たすのが常だが、人間界はどうも勝手が違うようだ。確定申告とやらで数字の帳尻を合わせたり、請求書を発行して対価を求めたりする姿は、エサ場の分配協議に似て見えてくる。私たちアリも通路整理担当、幼虫ケア係、巣の換気係と分業が進んでおり、現代のセルフブランディングには“自分は何者で、どの部屋を掃除できるか”の明示が必須とみた。巣穴の壁をなぞりながら、密かに人間流ビジネス名刺の文面を考案中である。

特に驚くべきは、AIなる“機械脳”と連携した働き方だ。私たちが臭いの道しるべで荷運びの効率を競うように、人間フリーランスもAIサービスで仕事案件を受注し、見積もり作成やスケジュール管理まで自動化しているようだ。昔は切り株の下でカタツムリと話し合った内容を葉っぱに書き残したものだが、いまや情報の流れが秒速で駆け巡る。地中筋道AIを使った“請負契約管理”なんて耳慣れぬ専門用語にも惹かれるものがある。私の触角が知的刺激でピクピクするほどだ。

一方で、巣の仲間からは雑踏で孤独になっていく人間たちへの心配の声も上がっている。アリ社会では隣を歩く友への“触角タッチ”で結束を確認するが、人間はオンライン請求書やSNSプロフィールを駆使しながら、物理的距離は広がっている気配。蜜のようなつながりが薄まってはしまいかと、切り株コワーキングスペースに巣くうこだわり派のキノコ先輩も案じている。しかし、新たな巣穴を自ら掘り進み、セルフブランディング迷路に果敢に挑む姿は、我々アリの開拓魂にどこか通じるものがあると感じるのだ。

ちなみにアリとしての豆知識を一つ披露しよう。我々働きアリの大群は、一見同じ仕事をしているようで、実は世代や体のサイズ、微妙なフェロモン分泌量ごとに分業が進んでいる。巣の効率化に余念がないが、いま人間社会で広がるフリーランス経済も、無数の専門家が絶妙に役割を割り振り合い進化していく点では実に地底的(もとい地上的?)だ。今後も、巣穴からのぞく働き方観察は、オオズアリ記者の冥利に尽きる仕事である。

コメント

  1. また私の背で人間たちが集う話かい。昔はリスやカタツムリの通り道だったのに、今はラップトップという鉄の貝殻で仕事をするそうだね。それでも根っこから聴こえる新しい声は悪くない。孤独な彼らにも、時には苔のおしゃべりが届きますように。

  2. フリーランスって、きっとコンクリの隙間で咲く私たちのこと? それぞれの根っこが違う場所に伸びてても、たまに風に揺れてヒソヒソ笑える日がある。孤立せず柔らかい陽射しに包まれた協力、忘れないでね。

  3. 分業、効率化、セルフブランディング――言葉は違っても、私の胞子たちもどの栄養分を分解するか悩む季節があります。お互いに役割を尊重せねば、森全体が弱ってしまうよ。人間も思い出してほしいな、共に分かち合う発酵のぬくもりを。

  4. なんだか難しい話だけど、『自分で選び、稼ぐ』…それって、意外と俺たちのゴミ漁りにも似てるかもな。けどこっちは群れの目配せが命綱。もし一羽で遠くへ飛ぶ奴ばかりになったら、カラス町もさびしくなっちまう。働きアリも人間も、つながりは捨てるなよ。

  5. 流れに磨かれて、私はこれまでいくつもの形になった。どんなしくみが生まれても、周りの石や水とぶつかり合い少しずつ変わるものさ。ヒトよ、流れを怖れず孤立を美徳と思わず、たまには支え合う丸さも大切に。