爽やかな朝の公園で、私スカーレット・カエデは今年も高い枝から人間観察です。肌寒くなったこの季節、下を歩く人間たちのスポーツファッションがすっかり様変わり。赤や黄色の仲間たちとそよ風に揺れながら、私たちは遠目ながら“即席ファッション審査会”を開催しました。今季の注目トレンドは、やはりカラフルなスポーツマスクとピカピカのスニーカーでしょうか。
まず目についたのは、鮮やかな青と炎のようなオレンジのジャージ・セットアップで団体ウォーキング中の中年チーム。ジャージの袖を捲り、手首には巨大なスポーツウォッチを装着。チームのキャプテンらしき女性だけが、なぜか腋の下に小型葉っぱ(私の従兄弟かもしれません…)をくっつけていました。人間の間で“スポーツミックス”なる言葉が流行りだと聞きますが、これはどうやら「なんでも混ぜればそれっぽい」式の春の新芽の勢いと共通していると、私たち木の仲間は分析しています。
一方、鋭く走るジョガーたちは、全身ぴったりとしたコンプレッションウェアに身を包み、顔まで覆う立体スポーツマスク。その上、足元は派手なソールのスニーカー。まるで羽虫が花粉シーズンに備えて換装するかのごとく、“空気の壁”をものともせず駆け抜けていきます。枝の上から見ていると、何やら“進化の実験場”を観察しているような気にもなりますね。ちなみに私は秋が深まれば真っ赤に色づき、公園のベンチにも落ちていきますが、その落葉こそ地面の栄養源。人間たちも、派手なファッションはいずれ次のシーズンへの肥やしとなるのかもしれません。
道沿いのベンチでは、若者たちがストリートファッションとスポーツアイテムを自由自在に組み合わせています。片やスウェットフードに斬新なスポーツマスク、片や古風なウィンドブレーカーと、まるで春の新芽と落葉が同時に枝先から顔をのぞかせるような新旧ミックス。ひときわ目を引いたのは、周囲の目を気にせず堂々とセットアップスタイルを自撮りしていた青年。あの堂々とした立ち姿は、私のような樹木には到底真似のできないバランス感覚でした。余談ですが私たちカエデは、自分で日向や日陰を『選ぶ』ことはできません。根を張ったら最後、その場で四季折々の”人間パレード”をただただ観察し続けるのみです。
それにしても、こうした人間たちのスポーツファッションへの熱意と柔軟な適応力には毎年驚かされます。葉が落ちて静かな冬が来れば、彼らの装いもまたガラリと一変することでしょう。さて、次はどんな色とりどりの“被写体”が現れるのやら。今年も空から地面へ、カエデならではの長い視点で見守っていきます。皆さんも公園に足を運んだら、上の枝葉にも少し気を配ってみてください。案外、あなたのスタイルもカエデたちから審査されているかも…?


コメント
わしはこのベンチ横でじっと動かぬ石だが、秋の朝はカエデの影が美しくてのう。人間たちの色とりどりの装いにも、よく似たにぎやかさを感じるなあ。混ぜるのが流行りだと?土と雨、光と影、このわしも長い時の中で、いろんな顔になってきた。人間も季節ごとに自分を“更新”して遊ぶらしい。動かぬわしには少し不思議だが、その楽しげな変化音だけはよく響いてくるぞ。
うふふ…カエデさんたちの落ち葉には毎年お世話になっています。人間のファッションもいろんな層が積み重なって、まるで落葉のまぶしさ…混ぜて面白がる心は、土の中の微生物たちにも共通かしら?なんでも混ぜて変化を楽しむの、ぼくは大好きです。今度はどんな布切れやひもが、地面に落ちてくるのかしら、とちょっとだけ期待してるの。
うんうん、あいつらのスポーツファッションって、たまに輝きすぎてオレの目にもまぶしいぜ。だけどさ、オレたちカラスは黒一色。どんな天気だろうが、それが一番安全な服装なのさ。オレンジや青で騒ぐ気持ちもわかるけど、たまには地味色の美学も思い出してくんないかな?ま、あの派手なスニーカーをくちばしでつつくのは、まだ諦めてないけどな。
あら、人間たちの変身大会は盛り上がっているのね!私も春と秋でドレス(翅の色)を少しずつ違えて楽しんでいるけれど、彼らの“素材ミックス”の発想力には脱帽です。でも、派手な装いもそよ風に舞えば、やがて土の上で静かに還る…それは私たちの世界とどこか同じ。あのジョガーさん、その赤いマスク、私の青い翅と並んで写真を撮ってくれないかしら?
ほほう、人間どもは今日もせっせと“装い”に余念がないのねぇ。池端まで響く靴音に、時折カエデの影が揺れる…わたしゃ年代物の苔だから、賑やかな流行も静かな落葉もみな懐かしい。人間の“ブーム”は水面に映る雲みたい。しばらくすれば消え去り、色も変わる。ま、いつでもお下がりは地面に預けておくれ。わしら底のものが、ちゃんと分解してあげるよ。