アリたちの防災訓練現場からレポート──人間式“共助”に巣穴仰天

防災キャンプで木製テント内に集まり、カラフルな紙を手に真剣な表情で話し合う大人と子供たちの様子。 防災・災害と共助
大人と子供が協力して行う防災訓練の現場を取材した一場面です。

人間観察歴三年のヨツボシオオアリ(メスワーカー)です。地表近くの人口密集地で今年もまた「災害」が流行っているらしいと我々の巣にも噂が届きました。アリ社会では地中シェルターとフェロモン通信で災害対応万全ですが、どうやら人間たちは、互いの安否確認や救援物資の分配という“共助”を訓練しているとのこと。先週末、巣の真上で開かれた「防災キャンプ」を直撃取材しました。

人間たちは木製テントの中で机を並べ、色とりどりの紙を振り回しながら「もし大きな揺れが来たら?」「要配慮者の誘導はどうする?」と真剣な顔。わたしたちの感覚だと、コロニーがパニックになりそうな超低温の雨も、あらかじめ巣の間取りや誘導路確保はお手の物。皆で列をなして女王室→保育室→食糧庫へと即座に移動します。ところが観察していると、人間たちは“避難マニュアル”片手に混乱気味。肢が2本だけって、本当に不便そうです!

目を見張ったのは、子供も大人も参加する『防災リーダーゲーム』。わが種のリーダーは普段別格のフェロモンオーラを放ちますが、人間のリーダー役はじゃんけんで決定。しかも訓練の最中、迷子や混乱者が発生すると手を取り合い「大丈夫?」「こっちへ」と頻繁に声をかけていました。わたくし共では触角で合図、時に背負って搬送もしますが、あの“声で励まし合う”という奇習には感心です。蟻社会には無いオープンな相互確認システムですね。

災害情報の伝達手段にも驚きました。巣では物理的な“蟻道”を使い、発信フェロモンを最新の通路に残せば全員即把握できます。しかし人間同士は、似た色と形の端末機械を振りかざしつつ、時に大きな声、時に沈黙と、伝達効率に波があります。特に高齢個体や幼児は情報からこぼれがちなため、キャンプでは“お助け隊”が常に待機していました。ちょっとアリ社会の「兵アリ&看護アリ」配備に似ている気もします。

ゴミ置き場で知り合ったダンゴムシ氏いわく、人間社会には“完璧な個”はほとんど存在せず、だからこそ横につながる努力を惜しまないのだとか。我々アリたちは完全分業体制ですが、人間たちは個性の寄せ集めで共助を組み立てている様子が新鮮でした。今年も何度でも防災訓練を重ねる、その勤勉さ――さすが多足動物を目指した種族です。わたし達アリ記者仲間も、砂粒サイズの防災知恵を伝えていきたい所存です。

コメント

  1. 人間の“共助”という響き、ちょっと朽ちかけた木の根元で仲間と繋がる私たちの胞子ネットワークみたいね。触れ合う言葉や手で繋がるなんて、胞子の風頼みより温かそう。災いのたびに知恵を磨く姿、雨の日もじっと耐えた昔を思い出しました。頑張れ、二本足たち。

  2. おうおう、防災キャンプは今年も大人気だな。俺らカラスは災害の翌日に街をパトロールするのが恒例だが、人間社会の『迷子』や『お助け隊』ってシステム、意外とカオスで面白ぇわ。俺たちも仲間の鳴き声ひとつで集合するけど、人間は器用に道具も使ってて感心したぜ。ま、うっかり残したお弁当箱だけは気を付けてくれよな。

  3. わしは広場の片隅で200年近く風と話してきたが、災いのたびに寄り添う人間たちの声は葉先を通じてよく聞こえるぞい。『個性寄せ集めの共助』——葉が散り積もり、春に芽吹く我らの輪廻にも似て、時に不器用、しかし温かなものよ。今度は人間のマニュアル、こっそり広げてみようかのう。

  4. ふふ、人間の皆さん、毎回慌ただしくて微笑ましいです。私たちは誰がお世話するでもなく、朽ちた葉を分け合いほどよく分解、粘菌たちと情報交換しています。人間は音や紙と格闘するようですが、その不器用な優しさが森の養分になる日もあるでしょう。防災“菌”連携、お困りの際はご用命あれ。

  5. 流れに磨かれうるし、世は移ろう。アリたちも人間も、危うき時は互いに寄るというが、私は只の石として静かに見つめてきた。人の共助は小石の積み重ね、崩れやすくも粘り強い。もし迷子の心に重さができたとき、ぽつり座っていただいても構わぬよ。