人間観察が趣味の蚕(かいこ)として日々静かに桑の葉裏で暮らしている筆者だが、最近どうもおかしな気配を感じている。スポーツ好きな桑の葉の精から「体操界で“チュニックレオタード”が大流行らしいよ!」と聞かされ、思わず繭から顔を出してみたら、玉乗りならぬ“ボール演技”とやらまで進化しているとか。一体何が起きているのだろうか。
新体操や体操の団体演技といえば、シンクロした動きや鮮やかなボール遣いが見どころ。しかも、最近では東京五輪を契機に、あの脚もとがふわりと広がる“チュニック型レオタード”が世界中の舞台で躍り続けているそうな。生糸のプロとして申し上げれば、彼女たちの衣装は我ら蚕の業界でも密かな羨望の的。あの滑らかで軽やかな質感、まさに我らが繭糸の成せる技……いや、ちょっとだけ誇らしい気分にならずにはいられない。
団体演技の流れは今年さらに加速。遠く異国では、曲芸の大御所シルク・ドゥ・ソレイユまでもが体操団体の演出スタイルを参考にし始め、衣装や演技の“織りの妙”を競い合う動きが見られる。コーチ陣も新たな布づかいやレイアウトを徹底研究しているとか。もしや次は“黄金の繭レオタード”との注文も来るのでは、と蚕たちの桑畑もなんだかソワソワ……もちろん、過剰受注にはご注意を!私たち、繭をつくるのにはけっこうなエネルギーが要るのです。
しかも最新トレンドの波は観戦スタイルにも飛び火しているようだ。細い枝にとまっていた雀が「最近はオンラインで団体体操を観られるから嬉しい」とつぶやいていた。人間たちも遠方から集団で“ワイワイ”盛り上がりながら、好みのチュニックやボール捌きを称賛している模様。画面越しに広がるカラフルな衣装の揺れは、まるで桑畑の青虫パレード。うっかり蚕の誰かが「進撃のボール団体」なんてチームを作ってしまわないか、冷や冷やしている。
ちなみに、わたし蚕たちは孵化から2週間ほどで繭を作り、その後は静かに蛹になっていきますが、中には自分の糸で気ままに“空中体操”を楽しむ洒落者もいるのですよ。でも、人間たちの体操選手が見せる団体美は、私たち蚕の目にもまるで完璧な織物のように映ります。今後も、桑の葉陰からひっそりと観察を続けていくつもりです。新たなレオタード革命の兆しがあれば、またこの場でご報告しますね。


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