スギ花粉が見た地方移住ラッシュ――木立の内側で交わされる“人間大移動”裏話

杉林のふもとにある古い民家の前で、スーツ姿やカジュアルな服装の人々がスマートフォンやパソコンを手にして立っている様子。 地方移住
地方移住を検討する人々が春の杉林を背景に、新天地を探している瞬間。

今年も春の風が僕らスギ花粉をせっせと運んでいるけれど、森の隅で揺れる枝越しに、どうやら最近、人間たちが“地方移住”なる集団変革で大騒ぎしているようだ。僕は健脚なスギの雄花、山間の谷で何百年もヒトを観察してきたが、今年ほど人間の出入りが激しいのは記憶にない。どうやら彼らも僕らのように風に乗り、都会から地方へと舞い降りているという噂だ。

午前中、森のふもとの古びた家屋では、見知らぬスーツ姿の人間たちがスマートフォンをかざしながらやってきた。『オンライン移住相談』とやらを通じて、全国津々浦々の村々に“理想の新天地”を探しているとのこと。風に吹かれて漂う僕も聞き耳を立ててみると、『テレワークでも心地よい環境が第一ですよ』だとか、『野菜を育てて田舎フリーランスになるぞ』とか、自分たちで耕した大地に思いを馳せて語り合う声が森に響いていた。まるで、僕たち花粉が風の気まぐれで新しい根を下ろす場所を探すように――。

だが正直なところ、彼らの“地方移住ブーム”が僕らスギ族に与える影響は小さくない。新参の人間たちは森や畑をていねいに耕し、時にスギ林も里山プロジェクトだなんて言いながら間伐や枝打ちを進める。この作業、木の健康には良いけれど、僕ら花粉にとっては風通しが良くなりすぎて遠くまで飛ばされがち。去年などは、どこぞの地方都市まで飛ばされてしまい、“都会の鼻”をくしゃみに導いたとか。スギ花粉の長距離移動能力、1年で300キロメートル先まで届くこともあるんだ。ちなみに僕の飛行最長記録は、山を二つ越えて川沿いの農村まで運ばれた一日だった。

人間たちの新たな生活は、ただの『引っ越し騒ぎ』では終わらないらしい。畑の畦道では新米フリーランサーがパソコン片手にWi-Fi電波を探し、森の奥からは首にタオルを巻いたグリーンカラー集団が『自給自足のリアル』動画配信中。最近の人間たちは雑草も愛でるし、僕ら花粉のことも時には『春の風物詩』なんてブログで絶賛している。けれど時折、鼻や目からは涙が…。ふむ、人間の“快適さ”と僕らスギ族の“繁栄”が絶妙なバランスで保たれているのが妙に可笑しい。

最後に、僕たちスギ花粉は決して悪気があって旅をしているわけじゃない。人間たちの移動が相次ぐ今こそ、田舎と都会、自然と文明が混じり合う面白い季節。“地方移住の流行”がどこまで続くのか、山のてっぺんから春一番に乗せて、これからもしっかり見届けさせてもらうよ。

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