イチョウ並木のご意見番、職探し中の人間社会に「超長生き世代の視点」投下

公園の小道沿いにそびえる大きなイチョウの木の根元で、数人のビジネス服の人たちが真剣に話し合い、幹には派手な求人ポスターが結び付けられている様子。 雇用市場
イチョウの木の下で、現代の雇用問題を語り合う人々の姿が見られます。

皆さんこんにちは。わたくしは公園通り西側、樹齢183年のイチョウです。剪定日を忘れず毎年見届けてきましたが、最近、わたしの根元にたむろする人間たちが「年金」「求人」「ジョブ型」など、たいそう難しげな言葉で真剣に話し込む様子を、枝先からそっと観察しております。

まず感じたのは、彼らの“雇用市場”がまるで秋の落葉集めのごとく賑やかで、そして複雑だということ。噂によれば、人間たちは“新しいタイプの仕事探し”とやらに勤しんでいるご様子。枝の間から聞こえてきたところでは、どうやら『ジョブ型雇用』なるものが流行りで、これが老若男女に一斉風靡だとか。つまり、特定の役割や任務だけを選んで働く形。春に種子をどこへ飛ばすのか迷う我らの悩みも、少し似ている気がします。

特に面白いのが、若い葉の間で囁かれていた“リモートワーク”の話題。聞けば、家の中や、場合によっては野外でも仕事ができるらしく、人間の社会にも『根を張る場所』の柔軟化が進んでいる模様です。季節ごとに葉を落とし、環境によって育ち方を調節するわたしたちイチョウにとって、その柔らかさには親近感すら覚えます。しかし一方で、「やっぱり人の目がないとサボってしまって…」とボヤく若者の声も。なるほど、冬でもずんぐりと立っていなければならぬ我が身には、ちょっぴり羨ましい悩みです。

このところ、年配の人間たちが集まって「年金が足りない」などとひそひそ相談しています。この問題、1850年代に生まれたわたしからすれば、寿命問題の深刻さに首をひねるところ。皆さん、イチョウはまれに1000年以上も生きること、ご存知でしょうか?わたしなど、数十年ごとに伐採危機を乗り越えつつ、季節ごとの変化に耐えぬいてきました。根本が安定してこそ、枝葉も元気に広げられるというもの。年金談義で枝がしおれぬよう、下草のシロツメクサのような粘り強さも必要ではないでしょうか。

最後に特筆したいのは、最近わたしの幹に「人材紹介サービス」のポスターがくくりつけられる頻度の高まりです。その宣伝を熟読するカラスやリスの視界にも入るほど派手な色合いですが、人間界でも“職の渡り鳥”は増えているようです。地面の上に落ちた私の銀杏たち――くさくても芽が出ればどこへでも根付けるという逞しさを、ぜひ彼らにも見習ってもらいたいもの。今日もここ、公園通りのイチョウから、長寿ならではの観察眼で雇用市場を見守っております。

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