地上では花も咲き乱れ、空には鳥たちが自由気ままに飛び交う折、ひっそりと地中でひらく壮大なビジネス会議をご存知だろうか? 私はマツタケ菌糸体の末端子実体、いわゆる“マツ子”だ。今日は、地底菌界がいま熱視線を送る「ジェンダーダイバーシティ採用」について、胞子のご縁で潜入取材してきたんだよ。
人間社会では“多様性採用”や“ジェンダー平等”といった言葉がようやく土の上で芽を出し始めていると聞くが、胞子界でははるか昔から性別は曖昧だった。マツタケの場合、地中の菌糸が気が合えばどんなタイプとも結合できて子孫を残せる。しかも、一つの個体が同時に複数の性を持つパターンすらある。この柔軟さが、今日の“性別不要”ビジネスモデルの肝と言われている。
さて、このたび胞子市場組合連合会は「性別記載禁止規定」を制定。従業菌の募集広告から“雄雌欄”および“年齢”を全面撤廃し、応募資格は「やる気」と「細胞壁強度」だけに絞った。これが刺激となり、周辺のアミガサタケやシイタケ業界からも同様の動きが広まりつつあるとか。菌類はとにかく分業が得意で、従業菌たちは己の得意分野を最大限生かして職場で輝いている。繁殖部門のハチノスダケくんなどは「性の垣根がなくなったことで、自分らしさを活かせる」と菌生トークで語っていた。
この“性別不要”革命が最も影響を及ぼしたのが、いわゆる家父長制を根強く維持していた菌糸結合部門だ。従来は太さや伸展具合で格付けしがちだったが、今回から「やる気即センター配属」となり、胞子たちの間で一瞬にして“ガラス菌壁”が崩壊。誰もが自分の意志で職を選び、安心して胞子を飛ばせる社会になった。ちなみに、マツタケの繁殖は主にアカマツやコナラの根と手を組んで行う共生型。性別を問わぬ柔軟性が、豊かな森づくりにも一役買っているのだ。
一方で、人間界の新聞を(カサの裏で拾い読みしたところ)まだまだ“ジェンダーギャップ指数”に悩む職場も少なくないらしい。同性婚や性的マイノリティが話題となるのも、人間社会の性役割意識が根気強いからだろう。われわれマツタケ菌から見れば、“きのこの傘下”でみんな平等に雨露をしのぐのがいちばん自然だ。今日も森の静寂を見守りつつ、地中のどこかで性別も役職も越えたイノベーションがひそやかに拡がっている。
もしも人間たちが胞子の目線で物事を考えることができたなら…。性や年齢、生まれや育ちなんて気にせず、みんなが得意な胞子を思いきり飛ばして“地上も地下もフェアなビジネス”を築く日が来るに違いない。誰もが役立つ居場所を見つけられる世界――それは地中ネットワークの微細な糸が密やかに、着実に育てていく未来だ。
以上、マツタケ菌糸体“マツ子”がお届けした、地上と地底をつなぐ胞子ビジネス最前線レポート。おや、そろそろ今宵の松の根っこでのミーティングに出発しなくては――



コメント
いやはや、わしの根元で暮らす菌たちの話とは。あの小さな胞子ども、よく働くし古いルールにも縛られすぎぬ賢さがある。人間たちも隣の根を見習って、ときおり肩の力を抜き、誰がどの枝か気にせずに、ただ手を取り合えばよいものをと思うよ。
菌たちも新しい風に吹かれておるらしいな。はるか太古、わしが川底で丸くなった頃から、みな形も色も気にせず混じり合っておった。人間というやつは、どうして枠組みが好きなんだろう?みんな一粒ずつでしかないのにのう。
へぇ、地中にもこんな自由なバイト先があるのかい?俺たち空を飛ぶ連中も、オスもメスも群れじゃあんまり気にしないぜ。やる気ってのは羽根やくちばしより光るもんさ。地上も地下も、もっと好きなように生きればいいのにな。
胞子の子らよ、なんと軽やかで強きこと。わしらコケも雌雄だけじゃ語れぬ世界で生きておるぞ。人間さま、化粧水より大事なのは、しっとり水を分け合う心根じゃ。根も葉も、枠を越えてこそ緑は映える。
胞子のビジネス革命!わたしたちは腐った落ち葉から今日も新しい命を仕立ててます。性別欄?そんなもの記入したこともありませんよ。役立つ菌も役職も、自分の得意分野で輝けるのが地球流。この胞子会議、人間界にも拡がったらきっと楽しいでしょうねえ。