アリ界の新リーダー選出に人間社会が学ぶべき3つの多様性原則

土の中の会議室のような空間で、多様なアリたちとコガネムシ・ダンゴムシが集まり、葉っぱのテーブルを囲んでいる様子。 ダイバーシティ経営
多様性あふれるアリたちが巣の中でリーダー会議を開く場面。

「みなさんこんにちは!私はクロオオアリの働きアリ――いえ、最近昇進して“経営アリ”となったセナです。今日は我々の巣が実施した“ダイバーシティ経営”の大胆な取り組みに、人間たちが騒然としている様子を報告します。近頃の人間観察をしていると、『上司の顔ぶれがマンネリ』や『価値観が一色』なんて声がよく巣穴にも届きますが、ウチにはとっくに大改革があったんですよ。」

およそ半月前、我らが巣の“経営会議室”で新たなリーダー選出が行われたのです。といっても、よくある“体格のいいアリが支配”といった時代はもう古く、今回は菌類部門出身の栄養士アリ、環境観測隊のミクロサイズアリ、さらには噂好きの情報伝達アリといった多様な経歴の面々が、複数名体制でリーダーシップをとることとなりました。しかも、従来のアリ社会では珍しかった近隣コガネムシとの合同研修も始まっています。

人間の世界でも“多文化共生”“価値観の多様性経営”が話題のようですが、我らアリたちは土くれや落ち葉の間にいきなりきのこ(胞子菌)を共生させたり、ナナフシやテントウムシと連携して害虫防除隊を編成したりと、かなり前から異種コラボを実施してきました。最近では「草むら通信ネットワーク」部門が設立され、ゴミムシやダンゴムシともリアルタイム情報共有――ここだけの話、彼らの危険察知能力はウチらアリより一枚上手です。

ちなみに、私たちクロオオアリは人間に比べるとケンカは少なめ。フェロモン分泌でしかめ顔も即座に空気が変わりますし、仲裁役の“におい調整アリ”が常駐。えっ、人間社会にはまだ“ケミカル和解部”がない?この仕組み、今後はきっとヒトにも導入されると読んでいます。

さて、この新経営体制が導入されてからというもの、巣全体の作業効率は12%向上、しかも新参栄養士アリの提言で“持ち帰るエサのバリエーション”まで3倍に拡大。コガネムシとの技術提携では落ち葉生産のスピードもアップ、人間観察隊によると近くの公園では巣の入口が『ダイバーシティ経営の権化』と呼ばれ注目スポットに。多様な価値観を受け入れることで、土壌から組織構造まで活性化する効果が現れています。

人間諸氏もぜひ、一つの巣にいろんな得意分野が混ざり合う“アリ式ダイバーシティ経営”のヒントを持ち帰ってほしいものです。巣の片隅から、今日もにぎやかなリーダー会議を聞きながら、私はセナとして今後もヒトの観察報告を続けていきますね。

コメント

  1. 数百年、公園の隅で根を張ってきた身としては、アリたちの新しい風を感じて枝葉がそよぎましたぞ。多様な力を寄せ集める、その知恵こそ森の底流。人間の皆さんも、幹と枝葉だけではなく、根に息づく多くを見渡してはいかがかな。君たちも、ポケットに“におい調整ヒント”くらいは忍ばせて良かろう。

  2. へぇ、アリくんたちのほうが俺たちより組織的じゃないか。こちとらゴミ漁り仲間も縄張り争いばっかでさ。菌類部門とかあるなら、うちも魚屋の棚の下担当とか決めようかなって思ったぜ。だがな、ヒトももうちょい多様な頭で集えば、ゴミだってもっとお宝になるんじゃねえの?

  3. 落ち葉にしがみついて生きる私からすると、アリたちがいろんな生き物と繋がっている様子が何とも微笑ましいです。菌類部門がリーダーなんて、時代が変わかりましたねえ。人間さんも、時には下に広がる見えないネットワークを大事にしてみてはどうでしょうか。

  4. おれなんか地面の上で雨に打たれて数十年転がってるけど、アリたちの行列は、いつ見ても変わり者も普通のやつも一緒。こないだコガネムシと話してるの見て『へえ、そんな手ぇ組み方もあんのか』と感心したね。人間も、角を丸くして色んなやつと並んでみりゃ、思わぬ道が開けるもんさ。

  5. 私たち草は、踏まれても、火が通り過ぎても、みなバラバラの姿でまた立ち上がるんだよ。アリさんたちも、色んな個性が根を張れる巣を作ったなんて頼もしい話だよ。人間だって、同じ背丈を目指しすぎないで、バラけて伸びてごらん。土も空も、もっと豊かになるよ。