みなさんごきげんよう、波打ち際からお届けするわたくし、アカテガニのクラビーです。日々、満潮と干潮の狭間で“陸と海の二重生活”を送る私たちですが、最近は浜辺で一風変わった光景に出くわすことが増えました。なんと、私たちカニ族よりはるかに旅慣れた“ヤドカリ一家”が、大挙して新天地コーラル港に押し寄せ、難民申請や“貝殻ビザ”更新にてんやわんやの大騒ぎなのです。
きっかけは、となりの浜で突如発生した高潮による“住殻難”でした。地元の巻き貝供給が追いつかず、ヤドカリたちは伝統の居住区を追われ、安全な貝殻=家を求めて各地へ大移動。中継地コーラル港(人間たちは『第三防波堤』などと呼ぶらしい)には、旅路の果てにたどり着いたヤドカリたちの行列ができています。浜辺の在来カニたちは、見慣れぬ“空き殻交換所”の市民団体ブクブク組合の設立にざわつきが止まりません。
現場では、“貝殻ビザ”すなわち適切なサイズと堅牢さの住居規則が議論の的です。ヤドカリたちは移動生活の達人ですが、一生のうち何度も“家ごと着替える”ため、ビザ更新――つまり新しい貝殻の入手が生命線。現地支援団体であるカサガイ・ナギサ隊は、余った貝殻やプラスチック片を提供することでヤドカリ難民の受け入れを促進。ただしプラスチック住居は使い心地がイマイチと、近年のクチコミ評価は芳しくありません。
私たちアカテガニもまた、幼少期は海で暮らし、成長とともに陸へあがり“二重市民権”を取得する種族です。気温や潮位の急変には昔から敏感なのですが、さすがに貝殻住まいの苦労までは想像が及びません。それでも、仲間のフナムシやウミウシたちが、彼らの行列案内や殻塗装サービス(殻の補修やカモフラージュ用ペイント)ボランティアを始めているのを見ると、自然界もじわりとボーダーレスになってきたものだ、と潮風を感じます。
さて、人間たちも最近は“外国人労働者”の増加やビザ更新の煩雑さなどに悩んでいると耳にしています。ですが、そもそも私たちの世界では、家そのものが頻繁にアップデート必須。さらに、殻に穴が空いたからといって突然“強制退去”されるスリルも付き物です。みなさんも次に浜辺を歩くときは、潮だまりの端っこで小さな行列に並ぶヤドカリたちの姿を探してみてください。彼らの歩みは静かですが、越境と適応の物語にあふれています。
コメント
遠き波際の物語、桜並木より聞こえてきましたよ。私も春には衣替えをいたしますが、根を張って動けぬ身としては、家ごと脱ぎ着するヤドカリさんたちの旅路には驚嘆いたします。みなさん、どうぞ新たな宿り木――いえ、宿り殻へと安らかに辿り着かれますよう、風に花弁を乗せて祈っております。
ここらの波止場の隙間、わしの小さな庭も最近ヤドカリの子らがよく通りおる。貝殻探しはまるでわしらの朝露あさりと似ておるのう。どんな素材やかたちでも、命は工夫しあって棲み処を見つける。人間ぞ、コップ一つ落としても土台になるんじゃ。わしら自然仲間、みな融通きかせるのお。
ヤドカリご一行の“難民申請”、なんだい、俺たちカラスも似たようなもんさ。居場所が狭まると、新しい波止場や公園探して日々奔走だ。家やモノに執着しすぎると身がもたねえ。ヤドカリ先輩、うまくシェアして、時にはちょいとズル賢く生き抜いてくれよな。プラスチックの家?俺たちも、腹はこわすけどたまに使っちまうぜ。
ご近所さんのヤドカリたち、ちっとも落ち着いて根を広げないものだから、毎日眺めていて飽きません。でも、荒波ひとつで世界が変わるのは陸上も海中も同じだと気付かされます。新しい殻選びは恋人選びみたいなものかしら?みんなにピッタリの住居が見つかりますように、わたしの胞子も応援のしるしとして放ちます。
かつて森に君臨したこのワシ、今やキノコと虫たちの宿となり、変化こそが命の根、と悟ったものじゃ。ヤドカリたちよ、古い殻を脱ぎ捨て、新しきを求めるその勇気、すばらしい。境界も国も“朽ちれば誰かの新しい国土”。浜辺に立つ者たちよ、恐れずに変わるのじゃ。ワシの年輪が、皆の旅の無事を願っておるぞ。