流れる竹葉と新・隣人ブーム——若竹林が語る“定住外国生物”ニュース

川沿いの竹やぶで風にそよぐ竹の葉と、フェンスを登るヤモリや根元の南国のアリ、新しい多国籍の住民たちが公園に集まっている様子。 人口動態
千曲川沿いの竹の根元には新旧の生き物が集い、人間たちも多様な集まりを見せている。

せわしなく風が吹くと、わたしたちの仲間——若竹の葉先がふるえる。そのたびにどこか遠くの土地から新しい音や香りが運ばれてきます。わたし、千曲川沿いの竹の一株です。近ごろ、人間たちの動きがなにやら騒がしいようで、辺りの小動物たちもソワソワしています。“人口減少”“移民政策”なるものに、わたしたち植物も耳をそばだてずにはいられません。

何年か前までは、晩秋の落ち葉の量で周囲の人間家族の数がだいたい分かったものです。最近では葉っぱの舞い方より、隣のフェンスをよじ登る新顔ヤモリや、根元に住みついた南の国のアリたちの姿が目立つようになりました。人間の数が減るかわりに、見知らぬ生き物が増えている!?と竹株たちの間でもうわさ話が絶えません。

竹としては“定住”という言葉に親近感を覚えます。根を地下でひろげ『ここだ!』と決めたら数十年動きませんもの。ですが人間たちはそうもいかないらしく、遠くから“新しい仲間”を呼ぶ政策を始めた模様。最近、ここの子ども達が話しているのは、コンビニに増えた外国出身の店員さんや、お弁当の味のバリエーションです。そういえば昨晩も私の葉陰で、熱帯由来のカエルたちが大合唱をしていましたよ。

思えば竹林ネットワーク(地中でひろがる地下茎通信)でも、人間町内会で盛り上がる『国際交流広場』や、日本語も交じった多国籍な笑い声が話題に。とはいえ“生涯未婚率”増加–つまり、一株きりで立ち続ける仲間が人間界にも増えているとか。わたしは春になるとたくさんの兄弟姉妹が生まれますが、どうも人間社会はそう単純ではないようです。

根っこ通信で耳にした“移民政策”のくだり、竹としては妙に興味をそそられます。新しくやってきて根付こうと頑張る隣人を、どう迎え入れるか。人間たちの集まる広場で、キンモクセイやザクロなど樹木組も『昔はうまく交じれなかったが、今はごちゃ混ぜの方が楽しい』と世間話。生きものも人間も、風に流れる竹葉のように、どの土地でどう生きるかは案外自由なのかもしれませんね。もしあなたが竹だったら、どんな仲間と根を絡めたいと思いますか?

コメント

  1. 若竹さんの記事、身にしみますね。わたしなど川辺の古株ですから、昔は同じ顔ぶれの鳥や虫と静かに年を重ねるばかり。でも最近は見知らぬ種のナナフシが枝を渡り、昔ながらの蛙と妙なリズムで競演を始めたり。季節も仲間も、風まかせで移ろうもの。根を張っていれば、いつか意外な良き友と出会えるものですよ。人もそうであればいいな、と朝露の中で考えました。

  2. へぇ、定住ねぇ。俺ァどこでも風まかせ、街ごとに違うパンや残飯にありついて腹を満たすのさ。前は人間の町って顔ぶれ決まってたけど、最近じゃ知らねえ言葉の人間もチラホラ。竹の根っこより俺たちの足のほうがずっと自由だと思ってたけど、案外、人も生き物も居場所選びで右往左往してるんだな。まあ、どこでも腹の足しになれば文句ないけどよ。

  3. この頃、新しい虫がわしの背で陽だまりしておる。竹の若者たちが言うとおりじゃ、あちこちから訪ねてくる仲間もまた良いもんじゃぞ。わしなんぞ石の上に千年、隣が誰でも気にしとらん。そなたたち人間も、もっと根を張る相手を気楽に選んでいいと思うがのう。ちょいと握手でもしてみい。苔の上は世界一やさしい出会いの場じゃて。

  4. はじめまして!私、去年こちらに旅してきたアゲハです。新しい場所は少しドキドキするけど、桜や竹の皆さんが風を伝えて歓迎してくれて…すぐになじめました。人の社会も、名前や生まれにこだわらず一緒に舞えたら、もっと面白い世界になりそうですね。春先に出会うチューリップさん、昆虫語を話せる仲間が増えて毎日が冒険!

  5. ワシゃただ地面に転がる石っころだけど、人間が移ろうたびにちょくちょく形も配置も変えられる身さ。最近は変わった靴底の跡や異国の土ぼこりが付いて、話のタネが増えたもんだよ。竹さんが言うように『混ざるのが楽しい』っての、大地に寝そべる俺にも分かる気がするんだな。どこに居ても、この星の誰かとごろごろしてりゃ、それで充分だってね。