高層ビル街の小さな公園、毎朝わたし――イチョウの葉は、下界の人間観察が日課です。最近、朝露のきらめきとともに続々と集まる女性たちの動きに、私は強い興味を覚えます。どうやら近くの“女性専用フィットネス施設”に通う人々のようです。鮮やかなトレーニングウェアに身を包み、筋トレやストレッチ談義でにぎやか。さて、この生態系(?)にどんな秘密が潜んでいるのか、地面に落ちる前のイチョウ葉として、光合成の合間に報告したいと思います。
わたしたちイチョウは、2億年以上むかしから耐環境性の高さを武器に生きています。そんな私から見ても、人間女子たちの筋力アップとボディメイクへの情熱は目を見張るもの。朝も昼も、連れ立って施設へ吸い込まれる姿はまるで秋に実を落とす私たちの“ギンナン移送”のようです。特にここ数年、“セルフエステ”“月額通い放題”“ファンクショナルトレーニング”といった垂れ幕が、新芽のように次々と掲げられてきました。
なかでも私が感心するのは、“安心感”へのこだわり。一面ガラス張りの施設ですが、外から私のような地面すれすれの構造体以外は覗き込みにくい設計。人間の“雄”たちを上手に遮断し、女性同士で自由に動ける空間が作られています。どうやら“筋トレ女子”は同種の仲間と励まし合うことで、赤みを帯びた新葉のような自信を芽吹かせている様子。私が銀杏通りで防風林仲間たちと落葉の季節を迎えるのと似て、枝ごとに成長を競う雰囲気さえあります。
またこの施設、使い方もなるほど合理的。スマホで予約、好きな時に通い放題――まるで私が葉緑体の働きを休みなく切り替えるかのごとく、人間たちは自らの体調や気分に合わせ、ヨガスペース、筋力マシン、“セルフエステ”ルームを使い分けています。一部の利用者が“最近肩こりが消えた”だの、“健康診断が楽しくなった”と落ち葉の上で語り合う声が風に乗って届きます。わたしも種子のにおいを発する秋、彼女たちの“健康的な香り”が少しうらやましくなるのです。
さて、イチョウは人間の長寿の象徴だと“観察対象”の皆さんは信じていますが、実のところ、私たちは静かに、けれど貪欲に環境へ適応し続けてきました。都市でたくましく生きる“筋トレ女子”たちのフィットネス進化も、どこかそれに通じるものがあります。彼女たちが安心の中でますます強く、健康に、そして美しく繁茂していく姿を、私はこの場所で幾万度でも見届けるつもりです。
コメント
地下鉄の揺れの下、硬く冷たい私にも朝の振動は伝わります。地表を駆け抜ける筋トレ女子たちの足音は、かつて地殻を震わせた岩の歌ほどではないけれど、確かな歩みに感じます。あの施設の中で光るガラスや重たそうな器具を見るたび、流れゆく時代に合わせて強さを磨く存在への敬意を新たにしました。ヒトも石も、磨かれてこそ味が出るものですな。
朝露に濡れながら見上げると、今日も色とりどりの生き物たちが施設に吸い込まれていきますねえ。私たち草は根を伸ばすだけですが、人間女子たちは筋を伸ばすのが流行りなのですね。汗と笑いと共に健康になる様子を見ると、風に運ぶ種に少しだけ誇りを持てそうです。時々、運動終わりの髪先にくっついて遠くまで旅できたらいいなあ、なんて思います。
なんだか、最近は窓越しに覗くだけじゃ数も稼げませんね。女性専用って看板の意味、血を吸う我々も思わず見習いたい徹底ぶりです。たまにガラスの隙間から流れる爽やかな香りに誘われるけれど、筋肉を鍛える彼女たちには太刀打ちできそうにありません。ま、健康第一――刺すほうも、刺されるほうも元気でいてこそ、です。
わたしは静かに下水で暮らす身ですが、地表の熱気や人間の流行は管を伝って噂で聞こえてきます。最近の施設から流れる洗い流し液、とてもクリーン。筋トレもエステも盛況なご様子で…健康ブームは我々の環境にも良い影響だなぁ、としみじみ思います。でも、あんまり除菌されすぎると友達が減るので、どうか微生物的ダイバーシティも忘れずに!
空の上から眺めていると、筋トレ女子のみなさんの規則正しい集まり方は、仲間と群れて飛ぶ我々カモメとどこか似ている気がします。ガラスの壁の向こうで汗を流す姿は、潮風をまとって羽を強くする我々の若きカモメたちにも重なります。人も鳥も互いを支え合いながら、今日も都市の空に新しい力を育んでいるんですね。