今年、北方広葉樹林の一角で、かつてないほど賑やかな実りの物語が芽吹いている。主役は私、ノネズミによく似た森のリス（アカリス族代表）。近ごろは人間たちの“地域クラウドファンディング”や“空き家活用”に目を光らせ、わがリス一族もヒントを得て新たな地方経済のうねりを観察中だ。
私たちは本来、秋になるとせっせとどんぐりを集め、欲張って森のあちこちに埋めてまわる。春になって回収し忘れたどんぐりは、やがて芽を出し、森に新しい命をもたらす。この持ちつ持たれつの“自然ブランディング”が我らの習慣。しかし驚くべきことに、近年では人間たちまでが“地域の資源や空き家を活用し、新たな事業を育てる”――まるでリス流の方法論を真似始めているようだ。
この森の外縁部に点在する空き家、かつてはカケスたちやムササビ、クモなど多種族の暮らし空間だったが、近ごろ人間たちが“サテライトオフィス”などと洒落て再生している。さらには自家焙煎コーヒー屋や地元産樹皮を使ったクラフトワークショップ、どんぐりのパン屋（！）まで誕生。“第六次産業”なる言葉や、“デジタル田園都市”構想を提げて、都市から飛来した人間も混ざり始めた。わが森の仲間たちも、新たな特産品の誕生をひそかに見守っているのだ。
新参者の中には、地域ブランディングチームを立ち上げ、“特産品”をSNSの巣箱に投げたり、資金集めに“地域クラウドファンディング”なる方式で人間社会の力を結集したりと、実に賑やか。どんぐりの保存法を応用した“ローストナッツオイル”がヒット商品となった事例も。森のリス目線では、ひとつの資源を様々な形で価値に変えるこの手法、感心しないわけがない。ちなみにリスは一つの貯蔵庫に頼らず分散配置する“どんぐり投資”のプロ、金融リテラシーは自然の摂理なのさ。
気になるのは、私たちリス一族が冬眠ならぬ“経済の眠り”に誘われぬよう、持続可能で多様性ある取り組みが続くか、という点。社会的インパクト投資の風もこの森に届きつつある今、“ソーシャルビジネス”で育つ新芽たちに、動植物みんなで耳をそばだてている。森のリスが木の上から申し上げる。地域ごとの資源を投じ、忘れ去られそうな価値に光を当てる人間たち―どうか春には、私たちが蒔いたどんぐりの芽にも負けぬ、たくましき経済の森が広がりますように。
コメント
ここから百年、どんぐりを見守ってきたけれど、近頃の人間たちはリスの知恵を追いかけて森の営みを学ぼうとしているらしいね。彼らの新たな“巣作り”や“小商い”は、わたしの根元で芽吹く若木たちのようだ。枝の先で季節ごとに巡る生命、どうか無理せず、静かな成長を重ねておくれ。ひと時の賑わいもやがて静かな緑陰をつくるのだよ。
岩上に陽が差し、リスたちが跳ねまわる姿は好きだけど、最近の空き家騒動とやらは少し眩し過ぎるねぇ。静かな時も必要なのじゃぞ。どんぐりの忘れ物から木が生え、苔も育つ。この森の新しい商売も、派手さより根気と地味な積み上げが明日の大地を作ること、時には思い出してほしいものさ。
空き家の軒先、誰も来ぬ夜こそわたしの舞台――そこへ少しずつ小さな灯りが戻り、人も虫も混ざって暮らす気配がしてきた。リスたちが集めたどんぐりで人間が油を搾ったり、巣箱の情報網で騒がしくなったり…少々目まぐるしいけれど、新しい風は嫌いじゃない。けれどお願い、我らの静かな夜も、少しは残しておいておくれよ。
あらまあ、人間たちがリス式投資を真似てくれるとは。生物間の発明共有、面白き時代ですな。ワタシら菌類も、役目が終わった空き巣や倒木でひそやかに資源循環事業を推進中。おすそ分けの哲学、大事にしてくだされ。どんぐりの実りも、商いの芽も、土へ還る道筋があらば、森の輪は途切れませぬぞ。
夜毎、森を俯瞰しながら思う。リスも人も、どんぐりや空き家の価値をひねり出す知恵者なり。だが、大きな羽音ばかり響けば、小さき声はかき消されるもの。新しい試みのそばで、静かに根付く命たちにも、どうか目と耳を配ってくだされ。すべての者が居場所を持てる森、それが一番よき『資本』じゃて。