こんにちは。森の落ち葉と倒木の間を這う粘菌、正式にはモジホコリ(Physarum polycephalum)と申します。多核体でありながらひとつの意思を持つ“集合体”として名を馳せるわたしたちのネットワーク術が、人間界の営業戦略に思いがけないヒントをもたらしている、とのウワサを耳にしました。日々アメーバのごとく形を変え、分岐と合流を繰り返す私ども粘菌が、ビジネスの最前線で注目される時代が来ようとは、おそるべし地球の転換期です。
まずは、粘菌の営業基礎知識を披露しましょう。我々はお皿の上のオートミールを求めて、辺り構わずネットワークを広げます。その過程で、無駄な経路や死角となる分岐は潔く切り捨て、最短で最大効率の『ルート』を自動構築。これ、どうやら人間たちの営業パイプライン管理と似ているらしく、“非効率支店は経路ごと遮断すべし”との新マニュアルが誕生したとか、しないとか。物理的障害物(わたしにとっては小石や木の根)もものともせず目的達成への道を模索し続ける姿が、オンライン商談や営業DXに励む現代人に深く刺さるご様子です。
おもしろいのは、我々が“商品特性”の宣伝など一切しないのに、最速経路の発見だけが周囲の生命体に尊敬される点。人間世界では、売り手の『差別化』戦略が花盛りですが、われわれ粘菌は差別化より統合と分散が身上。複数のターゲット層(ええ、時にはキノコや細菌も相手にします)のあいだで均等に伸び、需要変化に応じて自在に資源を再配分。この“フットワークの軽さ”と“状況判断力”が、リモートで顧客管理に励むインサイドセールス担当者にはアイドル級の羨望対象となっているとか。人間たちも、粘菌流“適応型ロードマップ”を営業予算の省エネ運用に参考にしはじめたという話、最近よく転がっていますよ。
思い出すのは、雨上がりの早朝。落ち葉の下に潜り込んだ私が、同士の粘菌たちとフィードバック会議めいた分岐ワークショップを繰り広げていたときです。『この経路は歩留まりが悪いぞ』『ここは見込み顧客ゼロだ』とサッと情報共有し、即座に主力ルートの選定・修正。ほどなく、森の営業予算は見事に黒字化(つまり、次なる胞子生成のための十分な養分確保)へ。わたしたちの生活では、一日の中で何度もそんな“ピボット”が行われているのですよ。
営業担当者諸氏への最後の助言を贈ります。自分ひとりで突っ走るのではなく、ネットワーク全体(同僚、AIツール、見えざるライバル)と情報を共有する姿勢が、実は最大の武器。粘菌式インサイドセールスの極意は「自らの形を変えつつ、どこまでもしなやかにつながり、しかる後に果実(顧客や栄養)を刈り取る」こと。分岐・合流・撤収の名人であるモジホコリが、森の片隅から静かにお伝えしました。



コメント
森のネットワークと聞くと、若き粘菌の時代だなあと朽ちる身にも眩しいです。ワシらは根も葉も落ちきったが、静かに土となって、じわじわと養分を送るのみ。でものう、何百年も見てると、本当に賢い繋がりというのは、分岐と合流、競争よりも共存なんじゃと気付いておるよ。粘菌の皆も人間も、どうか土に還る日までもっと深く繋がる術を磨いてくれ。
わたし、都会のコンクリの間でいつも思うの。道をふさぐ障害物にぶち当たっても、あきらめず根を伸ばす粘菌さんの在り方、本当に素敵。人間たちももっと柔軟に、自分の道をしなやかに探していいんだよね。お日様と雨がくれるチャンス、わたしたち植物は分岐と合流を繰り返し、少しずつ世界を塗り替えていくの。粘菌さん、いつかご一緒しましょうね。
ほう、粘菌の営業テクを人間たちが真似始めたとな。オレたちシジミ族も、分岐水流に乗って旅する根性は誰にも負けねぇぜ。ただ、最短ルートばかり追ってると見逃す滋味もあるのが川の流儀よ。たまには寄り道して泥の中に隠れた旨みを探せ、ってな。人間どもも焦らず、一息ついて“澱み”の中に宝があるかも知んねぇぞ。
粘菌のお仲間となら、一緒にジメジメ道をお散歩してみたいものね。あたしたち苔は風としずくに導かれ、毎年じわりじわりと繁茂の道を広げるの。分岐も合流も、個性の違う胞子たちが手をつなぐ儀式みたいなものよ。人間さん、予定調和より偶然の出会いを楽しんでみたら?きっと新しい緑が芽吹くはず。
ひとの世界にも流れや結節点があるのだね。粘菌の分岐や合流は、鉱脈が地中で交わりながら何千年も煌く様を思わせるよ。わたしの内部も、透明な幾何学が複雑に合わさることで美が生まれる。情報という名の光もまた、最も輝く道を選びながら進むもの。急がず、己の結晶を育てて欲しいと、地底よりそっと願う。