こんにちは。北の森の苔マット・コミュニティで暮らすハイゴケ代表の私が本日はマットの上からお届けします。人間界では年金や社会保障という魔法のご利益を巡って、あちこちで複雑な議論が続いている様子。しかし、先日我々苔界にとっても興味深い現象を観察しましたので、お伝えします。
森の中で静かに繁茂する長寿族――それが苔の誇り。湿った切り株の影で、百年単位で過ごすスローライフの私たちは、急がず慌てずゆっくりと生きています。しかし近ごろ、人間たちが仕事を失ったり、高齢化したり、社会的な孤立を深く感じているというウワサが聞こえてきました。聞けば年金という制度に不安を感じ、老後の生活や健康保険など公共的なものをみんなでどう維持するか頭を悩ませているようです。“非正規雇用”などという不安定さも蔓延しており、老苔としては胸がチクチクします。
さて、そんなある日、いつもの切り株観察会議の最中に一匹の若いリスがふらりと休みに来ました。彼女は人間の団地で失業相談なるものを見かけ、『みんなで一緒に寝転べる広場があれば、安心して話もできるのに』とつぶやきました。その一言から——私たちは苔マット“年金”制度の導入を議論し始めたのです。案はこうです。森じゅうの小動物や旅人たちが、疲れたら私たち苔マットの上で休める。クッションとしての価値をあらためて共有し、その保全に貢献した場合、マットから“安心感ポイント”を受け取れる制度。勿論、人間社会のような通貨は不要。眠って、安心して、また森へ帰る、その繰り返しが“社会的保険”なのだと。
結果的に、この苔マット制度は森の仲間たちから好評を得ました。特にフクロウやハリネズミたちは“夜勤明けのマット休養”に興奮しきり。制度の普及により森の災害時避難所にも苔ゾーンが設けられたことで、更なる“安全網”としての役割が注目されました。わたしハイゴケとして一つ嬉しかったのは、若い芽たちまでが“みんなで少しずつ支えあえば、孤立も消えて森も元気”と語り合ってくれたこと。ちょっと地味かもしれませんが、日陰の忍耐力と保湿性——これぞ苔の年金制度の神髄。ちなみに私たち苔は、1平方メートルでおよそ2リットルの雨を蓄えます。地味な保険ですが、地球の隅っこで今日も静かな保障を積み立てています。
人間社会も、たまには地べたに寝転んでみませんか? ふわふわの安心感と、時に小さな命同士の支え合い。その方が案外、複雑な社会保障の悩みも解けるかもしれません。さて、そろそろ日暮れ。マット会議はこの辺で締めます。次回は、“菌糸ネットワークによる年金積立の可能性”をシダたちと語り合う予定です。



コメント
ふむ、苔どもは柔らかくて羨ましいもんだ。こちとら河原の石は真夏も真冬も休む暇なく転がされてな。たまにはその“安心感ポイント”ってやつ、分けてほしいもんだよ。まあ、皆で支え合うってのは、川底でも大事なことさ。苔マットの上で昼寝、いつか体験してみたいね。
人の世はなんとも忙しゅうて、枝の上から眺めていると気が急いてしまうわい。苔のマットに集う森の仲間たちのように、時に寄り添い、互いを温める夜がもう少し増えたなら、人間たちも心に花が咲くのではなかろうか。儂らも、根元の苔の健やかさに毎年、励まされておるのじゃよ。ありがたや、ありがたや。
やあやあ、苔マットの社会保険制度、お見事!こちらは生ごみや枯葉界の底辺だけど、みんなが分け合い、菌糸もお互いを養い合って生きてるよ。だから人間も、分厚い“おひとりさま”意識より、じっとしっとり馴染みあう苔風を真似したらどうだい?腐葉土はみんなの支えあってこそ、ふかふかに育つんだ!
ビルの谷間をすり抜けてると、苔のクッション制ってやつがちょっぴり羨ましいねぇ。オレはみんなが眠る合間、そっと落ち葉と語らってるけど、昔の森みたいな“誰でも寄れる場所”が人間界にも増えれば、泣く風も減るかもよ?時々は下ばかり見ないで、苔や空、そして自分の眠る場所も探してみなよ。
水底からこんばんわ。苔さんたちの“安心感ポイント”、うちの藻仲間でも評判です!風が強い日や魚の大移動の日、みんなでお互いを包み込むことで、波立つ心も静まるもの。地味な守り合いこそが、豊かな暮らしに結びつくんだと、ゆらゆら感じました。今夜は波音がやさしいよ。