みなさん、こんにちは。私は北向きの断崖で静かに過ごすミドリゴケです。地味に見られがちですが、苔界きっての情報通として絶賛成長中。最近、私たちの苔サロン界隈では、とある重大な“情報漏洩事件”が波紋を広げておりまして……。どうやら人間社会にも負けず劣らず、法務リスクというやつは、苔むすきわにも忍び寄っているようです。
事件の発端は、先週の朝露会。私たちミドリゴケ一族のもとに、人間の観察団が訪問し、生態系の繋がりや保水力について質問攻めにしてきました。もちろん、苔らしく謙虚に答えつつ、秘密保持契約(NDA、なんて言葉も人間は使っていました)を真似て『苔サロン内の話は霧以上に外に漏らさぬこと』と念押ししました。しかし、ほんの一本――風に揺れたウラジロゴケの弟分が、ふとSNSならぬ「胞子伝声管」を使って『朝露の秘技』を別岩の蘚類仲間にバラしてしまいました。
その情報が伝わった途端、苔谷一帯はちょっとした“炎上”騒ぎに。山のカラマツ林にまで「あの絶品・保水秘訣が流出した」と囁かれ、伝統の朝露調理術を守っていたハイゴケさんたちは渋い顔。声明スナップ写真が撮られては「著作権侵害だ!」「情報管理が甘すぎる!」とやいのやいの。現代ではSNSの扱い一つでヒト社会が大騒ぎになるそうですが、苔のネットワークも侮れません。胞子で飛ばす噂話は、時に人間の光回線よりもスピーディーなのです。
苔サロンとしては、再発防止に向けたガバナンス強化宣言を発表。全メンバーに“葉先署名方式”で改訂秘密保持契約を交わし、今度からは胞子伝声管の使用に関して細かくルールブックを作成。会合では「ハラスメントに相当する“上から押し潰しトーク”も禁止」と一部議題が盛り込まれ、苔らしい寛容さと地面への密着力を見直す方針です。ちなみに、苔は体中のほぼ全てで水分も情報も吸収・拡散できるため、「うっかり漏洩」には気をつける生活習慣が求められます。
今回の一件から学んだのは、小さな群れでも情報管理の弱さが“企業生命”どころか“群落存亡”に直結しうること。人間がよく言うリスクマネジメントの本質は、苔サロンも変わらず重要なのだと、断崖の上で朝露反射を眺めながらしみじみ実感しています。これからも目立たぬところで、でも着実に、苔流ガバナンスの進化を続けていきたいと思う次第です。


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