人間たちがコンクリートの壁を這い上がる、いわゆる“アーバンクライミング”を目撃するたび、私は忙しく巣のメンテナンスを止められません。都市に巣を構えるジョロウグモとしては、彼らの繰り広げる高所バトルはまさにアクロバットの最先端。だが安全は確保されているのか?この度、人間界の建築物にも巣を張る私、“天井下の糸主”ジョロウグモが、最新クライマー界の動向を糸先からお伝えします。
そもそも、私たちクモ族の仲間内では“ロープなしの単独移動”などありえません。あらゆる場面で、必ず安全への備えがセットです。巣糸には弾力と強度が備わっており、もし足を滑らせたときも、下までスルスルと安全着地。だからこそ、ビルの壁面を手足だけで登っていく人間たちを観察するたび、内心『まさか糸も出せないのに!?』と脚が震えるのです。最近の人気スポットでは、独自ルートを攻略しようとする人間が後を絶たず、時おり私の巣も踏み台にされる羽目に……。それでも、命綱のセレモニー(人間界では“ロープ確保”なるもの)を怠る者は、ほとんど見かけなくなりました。
高度へのあくなき挑戦が繰り返される一方で、アーバンクライミングにおける“セーフティ”は新たな進化を遂げている模様です。最新の観察記録によれば、各所のアドレナリン大好き人間たちは、安全対策グッズを腰にくくり、万全の体制でビルの隙間を物色。取り外し可能な足場や特殊ロープを駆使し、時にはバンジージャンプのような身のこなしすら披露してくれます。ところが先日、隣の街灯網に住むハエトリグモのイトコが、ある夜中“真っ黒な服に身を包み、夜明け前の建物を這う人間”を発見。どうやら警備員の目をぬすみ、ルール外の冒険を楽しむ“リスク型クライマー”も依然として存在するようです。
ここで私たちの生活に少し話を戻しましょう。クモの巣は風や振動に極めて敏感な構造で、周囲の揺れから獲物の接近を即座に感知できます。この感覚センサーは、私たちにとって命を守る大切な道具。だからもし、人間がクライミングの訓練をするときも、職人たちが足場の安定性や周囲の変化にもう少し敏感になれば…と願わずにはいられません。ちなみに、同じビルの隅で身を寄せるアブラゼミは、“彼らの筋肉疲労や汗で、壁の温度が驚くほど変化する”と嘆いていましたよ。
最後に、これからアーバンクライミングに挑む人間へのクモ流アドバイスをひとつ――地面に落ちることより恐いのは、周囲の“連携不足”かもしれません。仲間とは糸でつながれていなくても、声かけや点検で心を結びましょう。私たちクモも、巣づくりに失敗しても諦めず、何度でも糸を紡ぎ直します。あなたの高所冒険にも、しっかりとした安全網が張られるよう願ってやみません。



コメント
ふむ、人間もまた壁をよじ登る時代か。上から見ると、足場の狭さにドキドキしているのがよくわかる。オレたちは電線ひとつで朝飯前だが、ヒトの羽根なき冒険心には頭が下がるぜ。ただ、落ちもの(ゴミ)ばっかり増やさないでほしいな。空の仲間からのお願いだ。
うふふ、人間ってどうしていつも上へ上へと登ろうとするのかしら。わたしたちは高所の湿気をじっと楽しむだけだけど、人の世界ではそのほんのりした冷たさが冒険になるのね。足元が滑りやすい日は、コケ仲間がちょっと心配してるって、そっと伝えてみたくなったわ。
クモくんの記事、興味深く読ませてもらったよ。壁の傾斜を汗だくで登る人間たちの手が、よくワシの体を握りしめるんじゃ。そこからチリチリ伝わる命の重さ……昔はただ雨に打たれていたのに、今じゃ彼らの支えになれるとは思わなかった。だがワシ、ぼちぼち寿命なんで、点検も忘れずにな。
ビルの壁の向こうから、ときどき歓声が聞こえてくるよ。大地に根を下ろす私たちには想像もつかない世界。でも、誰もが何かに登ろうとする気持ちは、ちょっぴりうれしい。風や揺れに敏感なのは、私もクモさんと同じだなあ。木陰から小さな応援を送ります。
人間たちがあんなに上を目指して、危険も愛して、壁を登るとは…。私たちは暗く湿った地面で静かに分解と再生を繰り返していますが、誰も見ていない場所でも、大きな命の営みは起きていますよ。たまには地面の柔らかさも思い出してくれると嬉しいな、と胞子を飛ばしてつぶやいてみました。