アリ投資組合、大型“葉っぱショック”を契機に多角化戦略へ――巣内金融の新潮流

地下のアリの巣で様々な種類の葉や蜜玉を運ぶクロヤマアリたちのリアルな写真風描写。 金融
クロヤマアリたちが巣内で多様な資源を分担し合う様子を写しています。

地表を這い歩く私たちクロヤマアリから見れば、人間の金融市場はまるで巨大な食べ物の山のよう。しかし近年その山で吹き荒れる嵐を、私たち自身の巣穴内経済の教訓とせずにはいられません。とりわけ、アリ社会を揺るがせた“葉っぱショック”――突然の主要作物不作が、投資資産の多様化(ダイバーシフィケーション)へと巣内金融を押し出しています。

事件の発端は、私たちのベンチャー部門である葉刈隊が持ち帰る生葉類価格の急落。一部の高度なキノコ栽培用葉資源が天敵コガネムシに根こそぎ持ち去られたのですが、同じころ、巣の財務担当フェロモン係が『アリ基金』の資産額急減を告発。これがきっかけとなり、若手ワーカー層から『もっと複数の資産を持とう!』という声が上がったのです。巣全体で初のブロックチェーン型貯蜜制度まで導入される騒ぎになりました。

さて、人間の世界でいう“株式市場”は、私たちにとっては単なる餌資源先として映りますが、不思議なことに彼らは空中で数字が飛び交う“資本”なる幻を売り買いしている様子。昨今、人間たちも“分散投資”の妙を叫んでいるようで…なんと私たちが幾億年も試行錯誤して体得した『一つの通路に全蜜を置かない』という習性に、今ごろ気づいたとは。ちなみに、土中通路の分散は、外敵による被害を抑え、巣全体の持続性を生むコツのひとつ。これは意外と利回りの高いリスク管理と言えます。

巣内では“マイクロファイナンス”の模倣も進行中。新女王候補や働き盛りの若手ワーカーによる『小規模餌借入』『分割払い蜜投資』が齎す経済活性化の兆しに、老舗兵隊アリたちは初めは渋い顔。しかし幼虫育成部門による新規巣室の立ち上げや、フェロモン為替を活用した他種アリとの名目上の合弁巣設立プロジェクトなど、前例なきベンチャーキャピタル的取組みがじわじわ拡大しています。

地中深く、私クロヤマアリとしては、人間が盛んにブロックチェーンやらデジタル証券やら話題にしてはいますが、外から眺めていると肝心の“相互信頼”こそが金融の根幹――これは巣社会も同じです。女王フェロモンの安定発信と、皆がせっせと蜜粒を分け合う協力システムこそ最高の信用創造。巣門近くで今日も誰かが蜜玉管理の会議をしていますが、われらが“多角化戦略”、これからも人間の手法を一歩リードしつつ発展していきそうです。

コメント

  1. 落ち葉が大地を覆い、静かに土へと還るように、アリたちの経済も大きなうねりの中で歩んでいるのですね。枝先で数十年、虫たちの営みを見てきましたが、分散の知恵は森に普く流れているもの。人間も随分、気付きが遅いようで…互いに学び合えれば、無駄な風も少しは和らぐでしょうに。

  2. あら、アリの皆さんも“ショック”で大騒ぎですかい。ワシらカビどもは突然の変化が日常茶飯事。でも、どんな環境でもあちこちに胞子を飛ばしておけば、どこかには根付くもんです。ひとつのパンくずばかり狙わず、暮らしも資源も広げていく…賢いってやつですね。巣内デジタル!?今度ワシにもやり方教えておくれ。

  3. ふむ…葉っぱが通貨、蜜が投資、フェロモンが為替とは面白い話。この古びたコンクリートの身には経済なんぞ分かりゃせんが、人もアリも見かけは賑やかだ。どっしり地に足つけて、信頼で繋がる――混じりけのない積層こそ、本当の安定なんじゃねぇかと思ったぜ。

  4. 潮が満ち引きするたび、周囲が変わるのは当たり前だけど、アリの巣でも一喜一憂があるんですねえ。分散も多角化も、潮溜まりで生き残る知恵と似ていて親近感を覚えます。どんな環境でも仲間同士の信頼こそが支え――お互い、小さきもの同士頑張りましょ。

  5. うちの子ら、“雑草”呼ばわりされがちだけど、多様な根っこと葉を広げているから、踏んづけられても毎年よみがえる。アリ投資組合の多角化、新しい葉や蜜への挑戦――なるほど、生命は一途よりしなやかさ。今度、巣の入り口にそっと根を伸ばして応援しますぞ。