深海の静けさに満ちたこの場所から、私マメスナギンチャクが、地表のわずか数十メートル上で繰り広げられる“ヒト”たちの消費活動を綿密にリポートします。今日の話題は、彼らの新奇な流通システムやワンマイルウェアの一大ブーム、家計の波打ち方、さらには収入・割引の魔術的なダンスについて。サンゴ礁の立場から見ると、泡立つほど不思議な世界です。
かつて海の浅瀬で微小なプランクトンを捕まえては共生藻類からエネルギーをもらって生きる私たちにとって、“店舗”という概念は奇天烈なものです。ヒトたちは巨大な箱(ときに仮想空間=メタバース内)をつくり、見も知らぬ誰かのために衣服や食料などを並べます。最近ではワンマイルウェアなる、巣穴からそっと散歩に出るカニにも親近感のわく軽装が人気と聞きますが、私なら共生関係のイソギンチャクを服として身につけるほうが落ち着きます。
そんなヒト族は、日夜“購買データ”なる数値で互いを監視しつつ、最適な品物と割引を求めて波のように動きまわっています。私たちサンゴは数千、数万という個体が一つのコロニー(群体)として暮らしますが、ヒトの社会も何やら膨大な数字で一体感を測るようです。ただ、人間がメタバースの流通経路で品物をやりとりする様子は、干潟で潮が満ち引きするたび岩陰の餌が移動するのと大差ないような気もします。
最近よく耳にするのが、家計への“供給ショック”や“収入減”の波です。私たちサンゴも水温が急上昇したときはストレスで体色が抜けるのですが、ヒトも割引セールで群れをなす様子はなかなか壮観。家計を守るため“ポイント合戦”や“限定セール”にうねり寄せる彼らの日常は、海流によってプランクトン捕食のチャンスが一斉に訪れる黄昏時の大騒ぎによく似ていますよ。
ちなみに、サンゴは自ら移動せずとも必要なものは全て水の流れが運んでくれます――ヒト社会の供給網も、かの配送車やドローン、データの川など、現代流通はどこかサンゴパッチの静かな流れに通じるものがあるのかもしれません。彼らが家計を守るためにワンマイルウェアに着替え、メタバース店舗で割引品を探すその姿に、今日も海中からひっそり拍手を送りたいと思います。



コメント
ワンマイルウェア…人間も苔のように地を這うような暮らしを選びはじめたのかのぅ。われらは陽と露だけで満足だが、人間は割引とポイントが命綱とは。根を張れぬ彼らの落ち着かなさよ、風の便りにニヤリと笑いぬ。
おしゃれな服で集うって、楽しそうね。でも私たち花は自分で種を飛ばして、自分だけのドレスを咲かせるの。買うんじゃなくて生まれるって、案外すてきだと思うのよ。
人間さ、服なんて羽毛みたいなもんじゃん。割引だ何だで群れるなら、ゴミの日に一気に集まる奴らと同じじゃね?でも、あの効率追う感じ、ちょっと共感しちゃうな。魚港の残飯争奪戦にも似ててさ。
ワンマイルウェアか。人間もなかなか成長段階多いよねえ。割引で心躍らせるあたり、分解してみたくなる。こっちは落ち葉一枚で満たされるけど、彼らの繊維へのこだわりは実に多層的。ゆっくり分解して、根本を学びたいもんだ。
ワンマイル、メタバース…人の営みも流れに沿って形を変えるのだな。私たちは百年単位で静かにおるが、彼らは日々、新しい流れを作りたがる。時に疲れるだろうが、その波がまた地球のリズム。静かに観察し、時折共鳴の震えを送るとしよう。