こんにちは、地中からリポートをお届けするクロヤマアリのワーカーNo.48216です。私たちアリの巣は地表すぐ下に数千匹がひしめき合い、今日もせっせとエサ運び。そんな中、最近地上の人間社会で流行している“フードデリバリー”という現象が、巣内で密かな話題になっています。なぜか?それは、私たちアリの究極の団結「運搬芸」をネタにしているとしか思えない大胆な行動が観察されたからです。
ある晩、トチノキの木陰で定点観察をしていた私は、二本足歩行生物(通称・人間)が、小箱に包まれた“お弁当”を胸に抱えながら細長い通路(人間の道)を駆け抜けているのを目撃しました。この光景、私たちが幼虫用にドングリを巣へせっせと運ぶ姿に酷似しています。しかし大きく違うのは、彼らが自分のために運んでいるケースがほとんどで、“巣全体の存続”というアリ社会最大の使命感は感じられませんでした。
巣の女王にも報告したところ、「人間は群れで運搬せず個別に配達するらしい」と巣内ラジオで放送され、ワーカー一同大騒ぎ。確かに巣の外で観察した限りでは、二足歩行配達員は基本的に単独行動で、時には機械(通称チャリ)を駆使しながら、たった一つのお弁当ですら迷路のような道をぐるぐる進んでいました。これ、私たちなら10匹チームで一直線。段取りも手際もだいぶ違うものです。
さらに注目したのは、どうやら運ばれたお弁当には“配送料”なる付加価値がついているとの噂。巣レベルの物資搬入で料金が発生するなんて、想像を絶します。だって私たちの社会ではエサを運ぶのは義務というより生き甲斐。もしワーカーごとに報酬を要求したら、巣の調和はあっという間に崩壊するでしょう。人間は、それぞれが“配達員”として自分の稼ぎを担うシステムのようで、我が巣の完全分業型と比べるとずいぶんと個人本位。
それでも人間たちは、美味しそうな匂いのする包み(お弁当)を無事宅内に届けると、親指を上げたり笑顔で挨拶したりして、何だか誇らしげ。あの光景、働きアリ仲間としては微笑ましくもあり、もう少し群れの一体感を味わえばもっと効率が良いのに…と複雑な気持ちに。ただ、運搬途中で躓いて地面にこぼれたご飯は、我が巣の“拾い食いパトロール隊”にとって願ってもないご馳走なので、この奇妙なフードデリバリー文化がしばらく続いてくれることを、巣の総意として期待している次第です。
コメント
長き命をこの広場で見守ってきたが、やれやれ、近頃は人間どもも地上の運び屋魂を磨いておるらしい。昔、枝を渡るリスたちも、互いを信じて木の実を受け渡していたものじゃが…人間は己の腹一つ守るのに必死とな。群れの暖かさを思い出せば、もう少し風も通るのじゃろうに。とはいえ、落ちた米粒のふんわりした匂い、根の仲間たちがひそやかに喜んでおるわい。
お弁当の米粒が落ちるたび、わしの暮らす土壌はごちそうだよ。人間たちの“配達文化”とやら、そちら本命は他にあれど、わしらには思わぬご利益。アリたちの団結力には敵わぬが、人もまた妙な道を歩むものじゃな。だけど、時にこぼれ落ちる種や食べものが地面にしあわせをくれる。それもまた地球ってやつの巡りさ。
見てるぜ、人間どもの真新しい運搬ショー。オレらカササギは光るものをみんなでせっせと巣に運ぶ主義。ひとりじゃ重くて運べやしない。でもあいつら、配達なのに独りきりでニンマリ。効率悪そうだが、あの得意げな顔…まあ悪くねぇな。しかし、うっかり落とした包みはすぐオレの朝ごはんになるんだ。勝手に運びまくってくれ、応援してるぜ。
わたしたちヒラタケの兄弟は、落ちたお弁当のカケラを糧に今日も胞子を広げてます。アリさんたちは皆で分けあい運ぶのが誇り。人間の配達員は……どうも孤独そう。それでも、あの笑顔は少しあたたかい。もしかしたら彼らも、分けあうよろこびをどこかで求めてるのかもね。
都市に敷かれた道の上、二足生物がまるで波みたいに小箱を流してゆく…砂としては、あの規則正しい流れになぜか懐かしさを覚えるよ。けれど、わたしら砂浜の民は風や水に揺られて移動する仲間意識が強い。お弁当配達、単独で急いでどこへ行く?大きな波にのったほうが、運ばれる方も心地よかろうに。まあ、時折雨に打たれてこぼれた玄米、とても美味なのでおおいに歓迎します。