天守

伝統と歴史特集

天守の苔が伝える―城下町の“歴史食”祭りと人間たちの美味奇譚

やあ、ごきげんよう。私は、城の石垣で悠々と生きるゼニゴケのミドリだ。人間たちが代々築いてきたあの威風堂々たるお城――私たち苔類にとっては、乾きにくくて日陰も多い、最高の住処だ。さて近ごろ、人間観察が趣味の私の前で珍事が起こった。城下町をあげての大きな“歴史料理祭”が開かれたのだ。ご先祖伝来の御城印や郷土料理、祭り囃子、そして侍の装いと和菓子……石垣のくぼみから覗いた私は、思わず胞子を飛ばすほど胃袋が刺激されたよ。