ついに地面に降りてきた?人間の“手の進化”ガジェット最前線を、街路スズメが徹底取材

公園のベンチの端でスズメがエルゴノミクスマウスと曲がったキーボードの横にいる様子。 テクノロジーガジェット
街角で見かけるようになったガジェットとスズメの不思議な共存の瞬間。

春になると、歩道の端で羽を伸ばしている私たちスズメ一族の間で、少し奇妙な話題が持ち上がっている。小さき人間どもが、ここ最近せっせと運んだり取り替えたりしている“謎の道具”――エルゴノミクスマウスや曲がったキーボード、光る板型のスマートフォンなどが、ただのカバンの中だけでなく、あちこちで地面スレスレの位置に現れるようになったのだ。羽毛の隙間で目撃談を交わしつつ、街路スズメ歴3年の自分(フェンス脇の柏餅横で生活中)が、全力で現場取材してみた。

まず驚いたのは、つい数年前まで人間の巣の中(ガラスごしの部屋)でしか見なかった“エルゴノミクスマウス”が、ベンチや石壁の上にもちょこんと置かれている光景だ。“マウス”と名は付くが、どう見ても四つ足の走り屋ではなく、丸い背中にボタンを抱える奇妙な黒塊だ。指先でヒョイヒョイ撫でまわされるその様は、まるで人間自身の手を形作り直しているようで、となりのドバト氏いわく『また人間どもの進化ごっこだろうな』とのこと。

キーボードの進化も劇的なようだ。最近多いのは、真ん中がぐにゃりと割れた“人間の背骨”型。ぎこちない姿勢で打ち込む若者も見たが、彼らはいつも『肩がラク』『手首が痛くない』と独りごちている。どうやら人間の“肩関節”という謎装置の調子が重要らしい。試しに黒パンを落としてみると、マウスの間ではね返り、キーボードのすきまでコロリ。道具同士の連携も良好な模様だ。

興味深かったのは、光る平板――スマートフォンという名の板が、ベランダの柵や公園のベンチにまで常駐する風景だ。人間たちは一日中これを撫でまくり、ときどき自分の顔を映しては怪訝な顔になる。スマートフォンの上でとくに多いのは、指紋、食べかす、そして我が仲間スズメの落とした羽毛である。電子機器たちもずいぶん地表派になったものだ。記憶すべきは、ノートパソコンを開いて膝の上で踊らせる“二足歩行者”もちらほら増えた点。一部の人間は外で“仕事”なる儀式を大公開し始めているようだ。

最後に、これらガジェットの進化を橋の欄干から見下ろして、しみじみと思う。人間は己の『身体』を道具で補い、限界をガジェットでごまかし続けている模様。私たちスズメが春風ひとつでどこへでも飛んでいくように、いつか人間も、手や背中がもっと柔らかく、自由に動く時代が来るのかもしれない。だが、落ちたパンくずと羽毛は、やはり自然体であるほうが一番ウマいと、私は思うのだった。(街路のスズメ、柏餅屋裏より)

コメント

  1. 人間の皆さん、また新しい器用な道具ですか?風にゆれるわたしの隣で、四角いものや丸いものをいじる指の動きがますます複雑になっていますね。でも、その柔らかい手、土にそっと触る日も忘れずにいてくれたら嬉しいです。根っこはいつも、足もとにあるものですよ。

  2. ヒトの手の“進化”とな…夜な夜な天井裏から眺めていると、彼らは光る板を撫で、ガチャガチャと妙な音を奏でておる。その姿、わしらが羽をたたむ作法に似ておるが、指先ばかり気にして体全体が縮こまってはならんぞい。時には目を閉じて、夜の風の音を聴きなされ。

  3. ふふ、人間の発明品が川辺まで遊びに来る時代。けれど、何を持とうと、足裏の感覚は変わらないだろう。わたしはただ、誰も気づかぬうちにツルリと丸くなり続けるだけさ。時には道具を置き、冷たい水に手を浸して、石の語りに耳を傾けてもいいものだよ。

  4. こんにちは。ベンチの影で今日もコツコツ胞子を撒いています。最近はキラキラ光る板や黒い丸も、ここの常連さん。人間さん、触れるものが増えるのは楽しいでしょうが、ときどきは落ちてしまうパンくずややさしい手あかも、わたしにとってはご馳走です。どうぞお好きなだけ、地面にもプレゼントを。

  5. いつの時代も人の手は忙しそう。わたしが若木だった頃にも、竹籠や筆、布きれを手遊びしていた姿を見ておりました。今はその手が、光る板に夢中なのね。でも、春のひととき、ふと視線をあげてくれるだけでいいのです。人も道具も、陽の差す方へ伸びて行けると良いですね。