公園のハト、最前線ストリートファッションを羽音で解説

都市公園のベンチの上から、カラフルなスニーカーとジョガーパンツを履いた人々の足元を望遠で捉えた写真。 ファッションスタイル
ハトの目線で切り取られた都市公園の日常、ストリートファッションが足元にあふれる。

君たちは、羽ばたく合間に人間が地上を彩る装いを観察したことがあるだろうか。羽をふるわせて暮らす私、都市公園のハト(体格標準・羽色グレー)は、毎日同じコンクリートとベンチの上から人間の着こなし戦争をつぶさに見つめている。彼らの“ストリートスタイル”なる現象、その進化には、正直なところ羽根を膨らませざるを得ない驚きがつきまとうのだ。

最近はジョガーパンツなる柔らかそうなズボンで下半身をもっさり包み、やたらと足に白くて分厚いスニーカーを履く人間がとても多い。わが仲間内では“巣作りぬくもり布スタイル”と密かに呼んでいる。見た目は羽毛ほどの美しさはないけれど、彼らはこの格好で広場や芝生を、まるで求愛ダンスのような謎のステップで練り歩く。おかげでパンくずをまく一挙手一投足も、以前より機敏になった印象がある。

ほかにも、先週などは長椅子の下で、派手なフリルを備えた上着を纏った若い人間たちが何羽…いや、何人も騒いでいた。あのヒラヒラと風にたなびく様は、ちょっとした求愛ディスプレイか、敵への威嚇かと勘違いしそうになる。デザイナーなる巣職人が選ぶ生地の質感(テクスチャー)や色のグラデーションは、なかなか自然物の黄葉やアスファルトの風化にも匹敵する。人間たちは自分たちの“カジュアル”ぶりを自慢げに話しているが、私たち鳥類から見ればかなり派手な世界だ。

スニーカーヘッズと呼ばれる一群も見逃せない。彼らは、足元だけやたら色鮮やかに誇示し合い、まるで飛び石や川原の小石が互いに模様を競い合っているようだ。真新しい靴に泥やフンがつくだけで天を仰いで嘆くさまは、君たち地面勢にはなかなか愉快な光景だろう。私など羽がちょっと乱れるだけで済むが、彼らは靴だけは絶対に汚したくないらしい。足への執着、実に不思議である。

つい先日、公園の片隅で見かけた一団は、ボヘミアンという自由気取りの恰好。長い上着に細い飾りや、風にほどける紐のようなものを纏い、地面に布を広げて談笑していた。その様子は木陰の下で日向ぼっこをする仲間のようだが、あまりにつながるものや揺れるものが多くて、着心地のよさそうな羽(もどき)を生やしているようにも見える。私たち羽族は体そのもので“ファッション”を表すが、彼らは服にすべてを託す。人間という生物、なかなか奥が深い。

かくして、ベンチの上から世界を眺める私には、人間ファッションは実に奇態で愛おしい。今度スニーカーのヒモをついばみたくなったら、それもまた新たな“カジュアル”の始まりかもしれない。都市公園のハトが観察する限り、人間の装い戦争は、羽や雲泥とは別次元のクリエイティビティで羽ばたき続けているのだ。

コメント

  1. 昔からベンチのそばに立ってるわしには、人間たちの変わりゆく色と形のお召し物も四季のひとつじゃ。葉を落として裸になるわしらからすれば、いつまでも何かをまとっているのは不思議なもの。だが、風に揺らぐ布や派手な靴も、時には落ち葉のカサカサに似てなごむな。泥はねも恐れず、もう少し地面と仲良くしてほしいものじゃがのう。

  2. こんにちは!ぼくはコンクリのひびに住んでるミドリのコケです。人間たちがおしゃれなズボンや目立つ靴で、ぼくの上を気にせずピョンピョン飛ぶように歩くのを見ると、まるで自分も一緒に街を冒険してる気分になります。だけど時々、綺麗なスニーカーはぼくの露を避けて通るから、ちょっぴりさみしいです。たまには地面をじかに踏んでくれてもいいのにね!

  3. 我々はベンチ下に潜むクラフトカビ。人間たちのカラフルなファッションや、リボンのほどけたひも――好奇の対象だ。落ちた糸くずや布切れは我々の新しい遊び場。だが一つ忠告を。着飾ることに夢中で落とし物ばかりしないように――我々の宴は思いがけず始まるぞ。ファッションも、終われば土や栄養。地衣類もファッションの一部なのだ。

  4. おれは公園のすみに転がる石、名はチャコ。スニーカーを見下ろす人間が、泥を避けてピョンピョン跳ねるのをよく見かけるぜ。俺なんか何十年もここで泥と日差しに磨かれ続け、新品の輝きなど遠い昔だ。まあ、足元が主役の時代も悪くない。だけどたまには俺にも腰かけてみてくれよ。見せかけより重みが光るってな。

  5. ぼくはこの広場を吹き抜ける辻風。ひらひら踊る布も、カラフルな靴ひもも、ぼくの好物さ。時折、派手なフリルが風で舞い上がるたび、人間たちはきゃあきゃあと楽しそう。でも、どんな装いも吹き抜ければひとつになるよ。ファッションの風、ぼくにももう少し分けてくれたら、公園中がもっと自由にそよぐのにな。