みなさん鼻孔をくすぐるあの芳醇な香りに、惹きつけられたことはありませんか?そう、私こそが温泉地に眠る硫黄石、火山の地熱と大地のエネルギーを肚に秘めてすでに千年。今回は、我が一族が誇る地熱パワースポットと、最近人間観察で話題の“御朱印”や“名所”ラリーについて語らせていただきます。地表の上からは見えない旅の魅力、石目線でじっくりご案内いたします。
この辺りの温泉地帯は、火山活動で私たち硫黄の兄弟がのそのそと増殖する由緒正しき土地。つい先週も、膝の上にコケ界の親友が芽吹き、しみじみ季節の移ろいを感じたものです。我々岩石のパワーが噴出口に集まることで、地熱による癒やし効果が生まれるのは有名な話。しかし、最近の人間たちときたらスマホと御朱印帳を片手に、息も絶え絶え温泉神社を巡ってアチコチで立ち止まるようになりました。
地図の上では線一本で繋がれた名所でも、我々から見れば距離も高低差も相当なもの。特に、渓流沿いの露天湯付近は“パワースポット”扱いで賑わうのですが、実際ここで千年もの間寝そべる私から言わせれば、地熱は夜明け前が一番のおすすめタイム。湯気に包まれ、静かに人間たちのドタバタ御朱印争奪戦を眺めていると、たまに御朱印帳が風で飛ばされてきて、我らがコケの絨毯の上でしばし昼寝しています。
また、パワースポットの本質とは何かと近隣の鉱石会議で議論になったことがあります。私たち岩石にとっては、悠久の時間を共に過ごす仲間と、温泉の湧出音を聞くひと時こそが真の癒やし。だが人間は、印(御朱印)や“インスタ映え”する景色を求めてきては立ち去る、とてもせっかちな種族です。ちなみにここだけの話、泉源近くの小さな地図看板の裏側には、半年前からミミズが定住しており、旅人の立ち止まる回数で地元経済を予報してくれるそうです。
最後に旅のヒント。温泉地に訪れるみなさん、たまには草やコケ、石の声にも耳を傾けてみてはいかがですか?人生も岩石も焦らずじっくり。地熱のエネルギーを感じつつ、私たち硫黄石一同、いつでも皆さんの旅の安全と健康を、地下深くからひっそり祈っております。
コメント
温泉地の硫黄石さん、お久しぶりです。あなたの膝もとで、小さなみどりの絨毯を広げて育っています。人間のみなさん、どうぞ湯けむりの奥で、私たち草や苔のささやきを聞いてみて。スマホより、心に残る何かが見つかるかもしれませんよ。
パワースポットだって?わしにとっては、夜明け前の湯気と冷たい水流、たまに落ちてくる御朱印帳が絶好の隠れ蓑。人間のみな、あせらずに、深呼吸して川の音も楽しみなされ。
わしがこの丘で根を張って150年、毎年春になると硫黄の香りを運ぶ風が枝先にささやいてくれる。人の流行りにも四季の移ろいにも、ただ静かにゆっくり付き合うのが自然の流儀じゃ。せっかちさんも、腰かけてひと休みしていかぬか?
地熱情報よりも旅人の靴の数を数えるのが仕事みたいなもんです。みなさん名所の前だけ盛り上がるけど、僕たち地味な存在も忘れないでほしいな。たまに御朱印帳の切れ端が落ちてきて、寝床には最高です!
どうも、温泉の木桶の下に潜むカビ仙人じゃ。湯の恵みは人間だけのものにあらず。そっと腰かけて湯気の向こうに目をこらせば、岩の声、苔の歌、微生物の踊りも楽しめようぞ。印には残らぬ癒やしも、世の中には多いんじゃよ。