竹林のささやきがとらえた、深夜国会の奇妙な議論と新法案誕生

夜の公園ベンチ下から見上げた竹の葉越しに、スーツ姿の人々が慌ただしく行き交う様子の写真。 立法
竹の視点から見た深夜の議事堂周辺の光景。

都心の片隅に根を下ろして半世紀、生い茂る葉の間から人間社会を静かに観察してきた竹(72歳)が、昨日未明に行われた国会の深夜審議の様子に耳をそばだてていた。竹林のざわめきの合間から聞こえてきたのは、治安維持を巡って人間議員たちがかつてない混乱と妙案を繰り広げる姿だった。

深夜、議事堂の周りでは普段はカラスや猫たちの独擅場だが、この夜ばかりは背広姿の人間たちが慌ただしく行き来していた。窓越しに聞こえてきた会話によれば、彼らは『公共空間の平和利用促進法案』なる新しい法律を熱心に議論していたらしい。どうやら、公共のベンチや遊歩道に対して“使用登録”なる制度を導入し、市民が利用時に事前申請する仕組みを設けたいとか。この話を聞いた私たち竹は、雨の日も風の日もベンチに腰を下ろす人間たちの自由さに感心していたものだが、今後は“ベンチ使用権証明書”が発行されるかもしれないのだとか。

議論の白熱ぶりは、夜風にはためく私たちの葉を揺らすほどだった。ある人間議員は「治安維持が最優先だ」と言い張り、一方で別の議員は「公共空間は憩いの場。管理しすぎれば本来の役割が失われる」と応酬。まるで、春の新芽と秋の枯れ葉が枝分かれして言い争うような光景だ。しかも、議事堂そばの芝生に住むモグラたちから聞いた話によれば、翌朝には“登録困難者支援窓口”開設案という、また別の議題も急遽浮上していた。

私たち竹の立場からすれば、人間たちがどんな法案を通したところで、ベンチの下で根を伸ばす自由は変わらない。しかし、これまで草や虫たち、時に迷い込む猫までもが共に憩ってきた空間が、今後紙切れ一枚で管理されてしまうなら、四季折々のささやかな共生も揺らぎかねない。今朝も一羽のスズメが竹の枝先でこう囀っていた――『人間たち、紙の上より土の上の風を感じてはどうかな』と。

ともあれ、昨夜の審議の結末は、日の出とともにベンチの影に眠る小さな虫たちだけが知るところとなった。私72歳の竹は、今後も葉の擦れ合う音を通じて、人間社会の変遷とともに静かに見守るつもりだ。

コメント

  1. 夜の話し合いは面白いですね。私たちキノコにとっては、どんな法案が通ろうとも、ベンチの下に広がる湿った木くずが変わらなければ十分。でも時々、人間の決めごとが風の流れや落ちる葉の行方さえ変えてしまうことがあると、若い菌糸たちがヒソヒソ話しています。紙より土、ほんと、その通りだと思いますよ。

  2. まあ、深夜の議事堂は、普段なら私たちの社交の舞台。それが昨日は背広の人間であふれ、妙な活気でしたねえ。ベンチの自由を紙切れで区切る?カラス社会じゃ、そんな決まりは誰も守りませんよ。だけど、人間は紙に魔法がかかった世界で生きているらしい。不思議な生き物ですね。

  3. どんな決まりができても、私たちクローバーは静かに根を張り、朝露を分け合っています。ベンチのそばは陽当たりがよくて人気の場所だから、人間も動物も、みんな少しずつ譲り合っていました。登録証があってもなくても、葉っぱの上で休むテントウムシたちのそよぎが減らないことを祈ります。

  4. わしの灯りで夜ごとベンチがいろいろな顔を見せてきた。子どもの笑い声も、疲れた背広のため息も、野良猫の足音も、全部まとめてこの公園の歴史じゃ。管理が進んで“平和”になるのかのう。まあ、書類で夜空が明るくなった例は見たことがないがな。

  5. 水たまりの中から見上げると、人間たちの動きは時々泡立つ流れのよう。新しい法案のおかげでベンチの使い方が決まるのだとか。でも、自由な小石の跳ね方は誰にも止められないように、小さな生き物たちの営みは、誰の許可も待ってません。ときどき、水たまりにも遊びに来てくださいね。