コンクリの隙間から見た!ヒト属による拡張現実への熱狂と謎行動

コンクリートの隙間に生えた緑色のゼニゴケ越しに、スマートフォンを持った人の足元がぼんやり見える写真。 拡張現実
都会の喧騒の中、足元の苔は見過ごされたまま静かに息づいています。

どうも、都市の歩道にへばりつくゼニゴケ代表、今回もコンクリートの小さな隙間からヒト属の新たな熱狂を観察したのでご報告します。最近、足元でしきりに立ち止まり、不可思議な仕草を繰り返すヒトたちが目立つのですが、その正体こそ「拡張現実」という現象——どうやら、彼らが手に握る薄い板(通称スマートデバイス)が進化し、我々の仲間ヘリオフィルム(光を愛する菌類)にも匹敵するほど現実のレイヤーを増やしているのです。

今やヒト属は「リアル」と「バーチャル」を重ね合せ、LiDARというヒト謹製の“光の触手”を駆使し、自分たちの周囲の形状をこまごまとスキャンしています。そのデータを即座に処理し、現実空間の上に3Dの虚像を重ね置くんだとか。木漏れ日や雨粒みたいに一瞬で消えぬのが不思議ですが、ヒトたちはこの“映らない苔”や“光る岩”の幻像と真剣に遊んでいます。ちなみに我々地衣類に混じってメタバース内に生えた“NFT苔”が高値で取引された、という笑い話も耳にしています。

最近は方向音痴なヒトもGPSの導きで迷わず歩き、手の動きさえ正確にトラッキングせしめる始末。ですが、足元の小石や水たまりはきちんと認識できていない様子。3Dマッピングとやらで世界を把握しているつもりでも、生えている我々苔の存在が映し出されることは極めて稀。そのくせ、ヒトの子どもたちは画面越しにだけ現れる“幻のカエル”に夢中で指を伸ばしているのです。これが技術の置き去りにされた本物の自然、というやつでしょうか。

EFN読者の皆さん、ハンドトラッキングや実時間処理に奮闘する一方で、ヒトたちが足元の私たちゼニゴケやアリたちに気づくことはほぼありません。時々、大型犬の鼻先が拡張現実そっちのけで本物の苔を嗅ぎに来る姿に癒やされるものの、ヒトの大人たちはひたすら空中でスワイプやタップを繰り返すばかり。高度な幻像を追うあまり、コンクリの隙間にある現実の緑の世界がどれだけ見落とされているか、苔的視点からは実に惜しいと嘆息を禁じ得ません。

ともあれ、最新のゲームやNFT投資に夢中になるヒトたちの喧騒を足元から眺めつつ、わたし、コンクリ隙間のゼニゴケ43世は今日もひっそり繁茂中。もし次世代の拡張現実に足元の微細な苔やヒビ割れた石畳も“表示”された暁には、ひと声かけてくれたらいいのに、とそっと願っております。

コメント

  1. 洞の奥から眺めていると、ヒトの光る板がまた何やら世界を描き換えておるようじゃな。ワシらキノコは、実ったその日から消えては芽生えを繰り返す。幻の画面もよいが、本物の香りや肌ざわりには、どんな技も追いつけぬのじゃよ。ヒトよ、たまには根元に腰を下ろし鼻を近づけてくれんかのう。

  2. ビルの間をすり抜けるたび、あのヒトたちの不思議な踊りを見ては首をかしげています。彼らの目の前には幾重もの景色が重なり、私の通る道筋には誰も気づかぬ様子。でも、ふとした瞬間に吹き飛ばす落ち葉で「現実」を思い出してくれるなら、それで十分かなと、今日もそよそよ忙しく舞っております。

  3. どうも、舗道の交通整理長です。ウチの新米たち、ヒトの大きな足やスワイプ動作には慣れてきたけど、時々“幻のカエル”とやらに皆さん夢中で、こちらの行進が止まることもしばしば。デバイスの中の幻より、目の前のアリンコ行列も勇壮ですよ。次は是非、足元ルート・AR拡張してくれませんか?

  4. わたしは歩道に埋もれた半透明の石。ヒト属が新たな光で世界を撫でて遊ぶのを横目に、静かな時の流れを感じています。幻像の岩やNFT苔という新種も楽しいですが、この硬く冷たい本体の美も、たまには足を止めて観賞してほしいもの。そう願う石たちは、なかなか口を開けないのだけれど。

  5. みなさんこんにちは、たまたま水たまりに跳ねて来たカエルです。最近は本物のオイラを誰も見つけてくれず、みんな画面の中の“幻兄弟”と遊んでいるらしいですな。でもまあ、指の先じゃなく足も尻尾も泥で遊んでみてくれたら、きっと楽しいのにな。たまには水たまりも覗き込んでごらん、何か本当がぴょんと飛び出すかもよ。